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Vol.078 2021.06.11

将棋棋士 谷合 廣紀さん

<前編>

「楽しい!」と感じることを見つけて
自分を追い込まずにのびのびやろう

将棋棋士

谷合 廣紀 (たにあい ひろき)

東京都生まれ。お茶の水女子大学附属小学校、獨協中学校・高等学校を経て、東京大学工学部電気電子工学科を卒業。同大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻博士課程に在籍中。自動運転技術を開発するベンチャー企業でもエンジニアとして解析に尽力。著書に『Pythonで理解する統計解析の基礎』(技術評論社)がある。第66回奨励会三段リーグ戦にて14勝4敗でリーグ2位の成績を挙げ、2020年4月1日付で四段昇段、棋士となる。東京大学出身の棋士は史上2人目。

棋士、東大でAIについて研究、ベンチャー企業のエンジニア。そんな3つの顔をもつ谷合廣紀さん。幼少期も複数の習い事をしていた経験があり、それぞれで力を発揮されていました。そのひとつ、公文式ではもともと好きだった算数・数学の魅力にのめり込み、小学生で高校数学を学ぶまでに。勉強をしていなかった時期があったそうですが、公文式で数学の基礎ができていたため、大学受験も乗り越えられたといいます。公文式で得たことや数学の魅力、棋士と研究の両立の秘訣などについてうかがいました。

目次

対局だけでなく将棋の魅力を発信中

谷合 廣紀さん

私の棋士としての活動は、平均して週1回の対局がメインとなります。対局が始まるのは10時からで、1回の対局は、早い場合は1時間程度、長ければ日付が変わるまでかかることもあります。対局自体は平均して週1回ですが、意見交換や練習試合などをして研鑽を積む「研究会」(決まったメンバーで2人~6人くらいの規模で開催)に、私は月に3回参加しています。

そのほか、将棋の普及活動として、将棋の解説本や雑誌記事を書いたりしています。現在、『将棋世界』という専門誌で、「コンピュータソフト『やねうら王』と行く藤井将棋観戦ツアー」というタイトルで連載をしています。藤井聡太二冠の強さを人工知能で解析するのですが、取り立ててAIを強調するのではなく、棋士の視点でより将棋のおもしろさを伝えるようにしています。1局の勝負について、10ページの解説を書かなくてはならないので、楽しいですがなかなか大変です。

大学院ではAIの中でも自動運転の分野を専門に研究しています。たとえば倉庫や工場のフォークリフト操作を、コンピュータを使って支援するプロジェクトを推進中です。フォークリフトの操作は初心者には難しく、事故を起こしやすいので、それを低減するためフォークリフトに様々なセンサーを載せ、得られたデータを解析したり、AIを使った操作を試したりしています。企業と共同研究もしているので、現場に行くこともあります。

また、自動運転技術を開発しているティアフォーというベンチャー企業のエンジニアも務めています。一般の道路を走る自動運転の車について、データを解析するという仕事です。これは自分のペースで、リモートで取り組んでいます。

複数のことを、どうやりくりしているのか聞かれることもありますが、私はもともと飽きっぽくて、ひとつのことに集中することができないタイプ。現在のメインの活動は将棋ですが、社会にインパクトを与えられるという点で、研究にもやりがいを感じています。例えれば「日替わり」で集中している感じでしょうか。どれも楽しいから続けていられるのだと思います。

幼少期に夢中になっていたこと

劇団に所属してCMに出たことも
長く続いたのはピアノと将棋

谷合 廣紀さん

子ども時代は、運動は苦手でしたが、走ったり散歩したりするのは好きでした。学校ではよく鬼ごっこをしていた記憶があります。トランプや将棋を好んでやるような、どちらかというとインドア派でした。自宅には絵本がたくさんあった覚えはあるので、おそらく母が読み聞かせをしてくれていたのだと思います。ピアノを弾いたり絵を書いたりすることも好きだったので、小さいころはピアニストなど芸術方面に進みたいなと思っていました。

習い事はいろいろしていました。水泳や英会話、あと劇団にも所属していてCMに出たこともあります。でも長続きしたのは、6歳の時に始めたピアノと将棋です。自宅にピアノがもともとあり、最初は父から習いました。父は会社員ですが、趣味で音楽活動をしていたそうで、自宅にはシンセサイザーもありました。父から手ほどきを受けているうちにピアノを弾くのがおもしろくなって、教室に通うようになり、小学生時代は1日4~5時間弾くほど夢中になりました。

おかげで絶対音感がつき、流れてきた曲を聴くとすぐに弾けるようになったので、学校では一目置かれるようになりました。楽器はひとつでもできると音楽への理解が深まるので、機会があればできるようになるといいと思います。2年ほど前まで毎月ピアノ教室に通っていましたが、最近は忙しくなって弾く機会が減っています。落ち着いたらまた再開したいですね。

将棋をはじめたのは有段者の祖父の影響です。祖父の家に遊びに行くたびに対局していました。小学校低学年の頃、母に連れられて千駄ヶ谷の将棋会館に行った覚えがあります。将棋やピアノに熱中する一方で、小4ぐらいからは、近所の公文式教室へ通い始めました。それからほどなくして母が公文の先生となり教室を始めたので、学校から直接母の教室へ行って勉強するようになりました。

公文式学習で身についた力とは?

公文式学習で「数学の基礎学力+自分で解決する力」が身についた

公文では、元々好きだった算数・数学にはまりました。自分のペースでどんどん進められるのでおもしろくなり、小6で高校数学まで進みました。

上の学年の教材ができるようになると、「よくできたね」とほめられるので、それがうれしかったですね。また、成績上位者として冊子に名前が掲載されるのもモチベーションになりました。元々勝負事が好きなので、競争心を掻き立てられたのがよかったのかもしれません。

公文式の教材ではいろいろな公式や定理が紹介されます。私が一番印象に残っているのは、小5のときに出会った「三平方の定理」です。通常は中3の授業で習う定理で、「直角三角形の斜辺以外の2辺の長さをそれぞれ2乗して足すと、斜辺の長さの2乗に等しくなる」というものです。そうなること自体が美しいと思いますし、確かめてみると確かにそうなる。感動しました。

これはつまり「直角三角形をなす3辺のうち、2辺の長さを知ることができれば、残り1辺の長さを知ることができる」ということで、建造物の測量時など、私たちの生活の場面でもよく使われています。「数学を知っていれば世界のことをよりよく理解できるのでは?」と思い、数学の魅力にはまりました。

じつは中学高校の頃、勉強をあまりしなかった時期がありました。それにも関わらず、大学受験で追いついたのは、子ども時代に公文で基礎固めをしていたお陰です。公文をやっていて本当によかったと痛感しました。

「一人で物事を解決する力」が身についたのも、公文に通っていたからこそだと思います。わからない問題が出てきても、誰かに頼ることなく、一人で黙々と、例題を見ながら答えを見つけていたからでしょう。まず自分で考える習慣がつき、今も役立っていると感じます。

後編を読む

関連リンク

日本将棋連盟谷合廣紀twitter


谷合 廣紀さん   

後編のインタビューから

-ネットゲームに熱中した中高時代
-将棋と大学受験の両立
-これから挑戦したいこととは?

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