OB・OGインタビュー
Catch the Dream - 夢をかなえる力

2021/05/21更新

Vol.077

株式会社roku you代表取締役 教育クリエイター
下向 依梨さん  後編

人には自分で思う以上の可能性がある
それを磨くために
解像度を上げて日常を見てみよう

下向 依梨 (しもむかい えり)

大阪府生まれ。中高一貫校に進学するも、高校はスイス公文学園へ。慶應義塾大学総合政策学部に進み、社会企業家について研究。在学中に、社会起業家育成のパターン・ランゲージを開発、出版。その後、米国・ペンシルベニア大学教育大学院で発達心理学において修士号を取得。帰国後は東京のオルタナティブスクール(小学校)で算数・英語などを教える。教材会社で働く一方で、フリーランスとして教育関連の企画など複数のプロジェクトに従事。2018年、教材会社を退職し、教育クリエイターとして独立。2019年に株式会社roku youを設立、代表取締役に就任。一般社団法人日本SEL推進協会代表理事も務める。

「子どもたちによりよい学びを提供したい」そんな思いで全国各地の“現場”を駆け回っている教育クリエイターの下向依梨さん。SEL(Social Emotional Learning)という手法を取り入れ、教育委員会のコンサルティングや探究学習のカリキュラムづくり、教員向けの研修企画運営など、さまざまなアプローチで教育界に風穴を開ける活動をしています。小中学校時代は学校になじめない「闇の時代」を過ごしたそうですが、スイス公文学園に進学して一転。そこでの出会いや体験が今の活動の原点になっているといいます。沖縄を拠点に活動し、「泡盛ガール」としての一面も持つ下向さんに、スイス公文学園でのエピソードや現在の活動、今後の夢などについてうかがいました。

スキル+マインド+“柔らかい何か”
が人の成長には必要

下向 依梨さん

多くのイベントに参加した私ですが、実はボランティア旅行には参加していません。一時的な幸せを提供するよりも、10年、100年と続くような幸せをつくることに興味があったからです。今ならそのためには仕組みづくりがポイントだということがわかりますが、当時はそこまで考えが及びませんでした。

そんなあるとき、貧しい人にお金を貸すグラミン銀行を作ったムハマド・ユヌス氏の本を読み、「社会課題に現場感を持って解決できる仕組み作りができる」と知りました。高3のときです。こうした人がもっと増えれば社会はよくなるのではないかと、社会起業家に関心を持つようになり、それをテーマに慶應義塾大学のSFCのAO入試に挑みました。

実は海外大学への進学も頭の中にあり、国内外の様々な大学を訪問して、図書館や生協にいる学生に、「見学に来たのですが、この大学どうですか?何が楽しいですか?」と聞いて回りました。そこで一番フィットしたのがSFCでした。学生の方に話しかけると、「君、そうしていること自体がこの大学に絶対に合うよ」と言ってくれたり、聞いていないこともどんどん話してくれたり。自分の研究を熱心に説明してくれるなど、情熱を持った学生生活を過ごせていることが伝わってきました。

入学後は、1年次から社会企業家について考えるゼミに所属し、3年次にはパターン・ランゲージという手法で、暗黙知・経験知を言語化して社会企業家を育てる研究をしていました。大学4年次には、社会企業家のパターンを教育プログラムとして教材にし、高校生や大学生に提供しました。ところが、響く人と響かない人がいる。なぜそうなるのか。スキルとマインドだけではない、もうひとつ“柔らかい何か”が人の成長には必要なのでは、と思うようになりました。

その“柔らかい何か”を研究しようと、ポジティブ心理学の領域で知られるペンシルベニア大学教育大学院で学ぶことにしました。そこで出会ったのがSEL(Social Emotional Learning=社会性と情動の学習)です。私が学びたかったのはこれだ、スキルやマインドなど表層的なものではない、もっと奥にある感情に焦点を当てる必要性に気づいた瞬間です。

帰国後は、オルタナティブ小学校の教員になりました。天職だと思うほど楽しかったのですが、「目の前の子にはインパクトを与えることはできるものの、これを続けていいのだろうか」と悩み、少し休んで考えることにしました。

その後、教材会社で教材をつくる仕事をしながら、フリーランスとして教育にかかわる複数のプロジェクトに参画し、やがてその仕事が軌道に乗り始めたので、教材会社を辞めて教育クリエイターとして独立しました。東京ではないどこかに根を張りたいと思い、何度も訪れて大好きだった沖縄に拠点を持つことにしました。やがて仲間も増え、現在は会社組織にして活動しています。

リアルなものに触れることで可能性が広がる

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