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Vol.068 2020.03.13

バレエダンサー
ニコライ・ヴィユウジャーニンさん

<後編>

「石の上にも三年」の気持ちで
一歩一歩進んでいけば
も登れる

バレエダンサー

ニコライ・ヴィユウジャーニン (ニコライ・ヴィユウジャーニン)

ロシア・ペルミ州生まれ。6歳よりバレエを始める。ロシア国立ペルミ・コレオグラフィー・バレエスクールで学んだ後、1998年ロシア国立ペルミ・オペラ・バレエ劇場に入団。2000年にソリスト昇格。ペルミ国際バレエ・コンクールで金賞/ミハイル・バリシニコフ賞などを受賞。ヴァルナ国際バレエ・コンクール ファイナリスト、審査員特別賞受賞。2005年、ペルミにてディアギレフ賞を受賞。同年リムスキー・コルサコフ記念劇場にプリンシパルとして移籍。2007年1月、Kバレエ カンパニーに入団。同年9月ソリスト、2011年9月ファースト・ソリストに昇格。2015年7月よりフリーダンサーとして活動を始める。

6歳からバレエをはじめたバレエダンサーのニコライさん。生まれ育ったロシアでダンサーとして数々の賞を受賞するなどして活躍後、2007年に来日し、熊川哲也氏率いるKバレエ カンパニーに入団されました。現在、フリーのバレエダンサーとして、またバレエ教師として各地を飛び回っています。来日当初は「こんにちは」くらいしか話せなかったそうですが、公文式教室に通うなどして日本語力を高め、今ではインタビュー中にことわざが飛び出すほどです。バレエダンサーを目指した理由や日本に来たきっかけ、ロシアと日本とでの違いなどについて、ユーモアも交えながら日本語でお答えいただきました。

目次

    公文式で日本語を勉強
    1日30枚やったことも!

    妻は日本人でしたが、家での会話はロシア語だったので、私は「こんにちは」「お腹すいている」くらいしか日本語が言えませんでした。日本へ来ても、「こんにちは」というのも恥ずかしくて、半年間、日本語の勉強はまったくしませんでした。でも、やはり日本で生活しているのですから、日本語は必要だと痛感し、まずは当時住んでいた横浜市鶴見区のボランティアの日本語教室で、週2回日本語を学ぶようになりました。

    ニコライ・ヴィユウジャーニンさん在籍中日本語教室のポスターの
    モデルにもなった

    それでは足りないなと思っていたとき、たまたま迎えに行った息子の保育園の近くに公文式の教室があったのです。中にいた先生に手招きされて、診断テストを受けたら全然できなかったのですが、ここで勉強しようと決めました。

    でも、日本語教材は、英語版、ポルトガル語版、中国語版だけ。ロシア語版はありません。私は英語版教材で始めることになりました。英語もわからないので大変でしたが、英語→日本語の辞書と日本語→ロシア語の辞書の2種類の辞書を使いながら頑張りました。最初は簡単だったので1日30枚くらいできたのですが、難しくなると、1日半ページしかできないときもありました。ロシア語の説明があったらもっと早くできたと思いますよ(笑)。

    その後転居しましたが、公文の学習は続け、最終的に5年4か月学習しました。
    公文式の良いところは、「宿題」とCDがあったことです。ボランティアの教室に行っていたときはその日に教室を休んだら勉強できませんが、公文式では毎日の宿題があるので毎日勉強できます。1日の宿題の量を自分で決められるのもいいですね。「やらされる」とやりたくなくなりますが、自分で決めたことであれば、そこから逃げられませんからね。あと、教材を見ているだけではどう発音するかわかりませんが、CDが用意されていたので、それを聞きながら学習できたのもよかったです。(※現在はスマホやパソコンでも教材の音声を聞くことができます。)

    ニコライ・ヴィユウジャーニンさん意味を一つひとつ調べながら学習した教材は
    今でも大切に保管している

    日本語を勉強して好きになったのは「いろはがるた」です。文章として長くはないのですが、意味は強い。一番好きなのは「猿も木から落ちる」です(笑)。

    来日13年、ニコライさんの感じるロシアと日本の違いとは

    年末年始の過ごし方の違いにびっくり
    今では年越しそばも食べるように

    ニコライ・ヴィユウジャーニンさん

    来日してからもう13年が経ちます。その間、“人生を変更”して、今の奥さんとの間に2015年に娘が生まれました。それを機に、Kバレエ カンパニーを辞めてフリーのダンサーになりました。カンパニーに所属していると、どうしても家を空けなくてはならないことが多く、そうなると、これから子どもが生まれてくる妻を手伝うことができないからです。

    もちろんカンパニーだと経済的に安定していますが、所属していてもダンサー人生はそれほど長くありません。お客さまは美しい舞台を見るために、公演に来てくださいます。そのとき、きっとおじさんよりも若い子の踊りを見たいと思うものでしょう?現役ダンサーとして踊れるのはだいたい30歳くらいまでですから、そのためにも次のキャリアを考えなくてはなりません。ただ、フリーになった後も、Kバレエ カンパニーで「キャラクターアーティスト」(個性の強い役を演じるダンサー)として、出演することもあります。

    日本での生活はどうかと聞かれれば、「いろんな国があり、いろんなルールがあります。私は今、日本に住んでいるのですから、日本のルールで暮らしています」と答えます。
    ロシアとの違いで一番驚いたのはお正月です。日本では、大みそかの12時までにお蕎麦を食べて寝ますよね。ロシアでは12時になったら花火を打ち上げて盛大にお祝いをします。朝まで大騒ぎですが、日本は静かですよね。最初に日本に来て「え?もう寝るの?」とびっくりしました。でも今ではそれにも慣れ、去年の年末もちゃんと12時までにお蕎麦を食べて寝ましたよ。

    子育てにも少し違いがあると感じます。ロシアでは親は子どもを助けますが、日本の親は少し子どもに冷たい気がします。たとえば日本の親はよく、「なんでわからないの?」と、子どもを叱ることがありますが、それは私に言わせれば「親がちゃんと教えないから」。そういうときは鏡を見て言うといいですよ。自分に向かって「なんで?」と言うと、「あ、自分が教えてないんだった」と気づきますから。

    今後の目標、学び続ける皆さんへのメッセージ

    「いい先生」になるため、
    一歩一歩歩み続けていきたい

    ニコライ・ヴィユウジャーニンさん

    私の目標は、「いい先生になる」ことです。でも簡単ではなく、いろいろな勉強も必要です。例えばバレエの先生であれば、解剖学の知識も必要です。関節の動きを理解せずに変な運動をさせてしまうと、生徒にケガをさせてしまいますから。また、説明の仕方も大事です。人によって強く説明したほうがよいのか、やさしく説明したほうがよいのか、その人その人にあった教え方でないと、その人はやる気を失ってしまうからです。

    自分も先生から教わってきたので、その姿を思い出していい先生になるためにかんばります。もちろん、踊ることも続けていきたいと思います。実は、4歳になる娘がバレエを始めました。僕は教えませんが、家で彼女を持ち上げたりして遊びながら鍛えています。

    私は6歳からバレエを続けてきて今に至りますが、それは自分の努力だけではありません。いろいろな先生方が私にいろいろなことを教えてくれたから、今の私があるのです。ここでやめてしまったら今まで教えられてきたことを捨てることになります。教えられてきたことを簡単に捨てることはできせん。私も人に教えて今まで学んできたことを伝えていきたい。それが私の役割だと思います。まだまだ自分も知らないことはいっぱいありますが、がんばって学んでいかなくてはならないと思います。

    日本には「点滴石を穿(うが)つ」「石の上にも三年」ということわざがありますよね。ロシア語でも似たような意味のことわざがあります。
    “Терпение и труд всё перетрут.”
    と言います。

    がまん強くコツコツとやっていれば必ず成し遂げられる、という意味です。できないと思うこともあるかもしれませんが、コツコツやっていれば、必ず山は登れます。ですから、勉強をしている皆さん、一歩一歩でいいのでがんばってください。そして、子どもが自分の夢に向かってがんばるだけでなく、親もがんばりましょう。子も親を助け、親も子を助ける。そうした関係も大切にしていければよいなと思っています。

    前編を読む

    関連リンク 日本語学習者の現在(いま)・夢・目標―動画レポート|KUMON now!公文式日本語


    ニコライ・ヴィユウジャーニンさん  

    前編のインタビューから

    -現在の活動~バレエダンサー、教師として
    -森に囲まれたロシア・ペルミでの思い出
    -国立のバレエ学校に合格、バレエダンサーの道へ

    前編を読む

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