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Vol.029 2016.02.05

WWFジャパン 橋本 務太さん

<前編>

「きっとできる」と思うこと
トライ&エラーを繰り返すことで
量は質に変わり、道が拓ける

WWFジャパン

橋本 務太 (はしもと むたい)

WWFジャパン森林グループ長。2000年英国ノッティンガム大学環境管理専攻修士課程修了。2004年WWFジャパン入局。海外プロジェクトのマネジメントを行うほか、企業による木材・紙の調達における森林生態系への配慮を目指し、企業コンサルティングも多数実施。

世界100ヵ国以上で活動している、パンダのロゴマークで馴染み深い環境保全団体、WWF(=世界自然保護基金)。日本でも40年あまり前にWWFジャパンが発足されました。同団体で働く橋本務太さんは、おもに森林資源の保全問題に取り組む森林グループ長。一筋縄ではいかない利害関係も絡み合うという、現在の自然環境保護をとりまく課題に、橋本さんは日々どのように向き合っているのか、うかがいました。

目次

自分で体験しなければ、問題の本質は見えない

橋本務太さん

私が所属しているWWFという組織は、「人と自然が調和して生きられる未来を目指す」を使命として活動している環境保全団体です。パンダのロゴから動物保護団体と思われている方も多いのですが、私たちは野生動物に限らず、すべての生き物たちが多様性を守りながら暮らしていける環境づくりに取り組んでいます。

人間だけが幸せでもダメ、かといって経済活動を否定するものではありません。「人が自然と調和して生きる」ためには、環境保全と経済活動のバランスが大切です。「野生生物を守る」「森や海を守る」「地球温暖化を防ぐ」「持続可能な社会を創る」というのがWWFの4つテーマ。

その中で森林グループ長という私の仕事は大きく分けてふたつあります。ひとつがインドネシアのスマトラ、ボルネオ、さらに極東ロシアなど、貴重な自然が残る場所を保全すること。当団体のサポーターからいただいた資金を元に、現地WWFと共同プロジェクトを発足させ、たとえば山火事を防いだり野生動物の調査をしたりしています。

そしてもうひとつは、日本人の消費によって現地の森林資源や人の暮らしが脅かされないよう、企業への働きかけを行っています。環境に配慮した紙や木材などを使ってもらえるように、消費財の購買方針へのアドバイスなども行います。

現地調査のときは自分の足で森に入り、自分の目で現状を確かめます。そうすることで、サポーターの方々に臨場感を持ってプロジェクト内容を報告することができるからです。何事も自分で体験しなければ、問題の本質は見えてこないし、人の心を動かすこともできない、というのはこの仕事で学んだことかもしれません。

今にも通じる、公文で学んだこととは?

基本を何度もくり返す大切さ

橋本務太さん

今では自然に鍛えられてずいぶんたくましくなりましたが、小さい頃の私は体が弱くて家で遊ぶことのほうが多い子どもでした。東京の出身ですので、周囲に森や川があったわけでもなく、せいぜい虫採りくらい。本当に普通の子どもでした。勉強はそんなに得意なほうではなかったと思いますが、算数は好きでしたね。それは小学1年生から通っていた公文のおかげかもしれません。公文の算数は、教材のアルファベットがひとつずつ上がってレベルアップするのがうれしくてがんばりました。

基本をたくさんくり返すって本当に大事なことで、今の仕事でもそれを痛感しています。たとえば現地のプロジェクトで人を一人増やしたいという要望をフィールドで受けたとします。ざっとコストを暗算して、OKか難しいかの判断をしなければいけない。数字に抵抗がなくなったのは、確実にあのころ公文で計算問題をくり返していたからだと思います。

小学校の頃、私は将棋が好きだったので、「棋士になりたいな」と思っていましたが、中学・高校で物理に出会い、宇宙物理学に興味を持つようになりました。高校では物理学者の本を読んだりしていましたね。でも、今振り返って心に残っている本は、中学のときに読んだ、フランスの作家ジャン・ジオノの作品『木を植えた男』。これは荒地に毎日一本ずつ木を植え続けて、森を再生させた人の物語。コンスタントに何かを続けていく大切さを知った気がします。当時まったく意識はしていませんでしたが、この本が今の自分の原点だったのかもしれませんね。ただ今の私の仕事はむしろ「木を植えてもらう男」ですが(笑)。

橋本さんが環境に目を向けることになったきっかけとは?

海外に目を向け始めた学生時代

橋本務太さん

私が進学した国際基督教大学(以下、ICU)は、文系・理系の区別なく学ぶリベラルアーツの教育をとり入れた大学だったので、理系だった私も、国際関係の授業をとっていました。そこで初めて「国際問題」に触れる機会がありました。世界の人口爆発の問題、難民の問題……その授業を担当した先生のお話にすごくリアリティがあって、感銘を受けたのを覚えています。

元々ICUを志望したのも、ICUが世界に目を向けていた大学だったから。当時、ゆくゆくは物理の道で海外の大学院に行きたいと思っていたんですよ。じつはまだその頃、飛行機にすら乗ったことはなかったのですけどね。結果、環境専攻の大学院で学ぶため、1年半イギリスへ留学。卒業後は環境コンサルタントとして働くようになりました。それからバイオマスエネルギーを普及するNGOに入り、WWFにたどり着いたのは30歳のときでした。

だから私は最初からこの道一本でやってきたわけではないのです。ただ、ひとつひとつ積み重ねたものは決して無駄にはならなかったな、と今あらためて感じています。サイエンスはWWFの活動の基礎。大学3年のときに文系へ転向しましたが、理系的なものの考え方を学んできたことは自分にとってプラスだったと思います。

身を置いた環境は変わっても、国際問題に関心を持ってからは、「社会に良いことをしたい」「その良いことをなるべく自分が良いと思うやり方で実行したい」という思いはずっと変わることはありませんでした。それはつねに両親から、「何をすべきかは自分で決めなさい」と言われて育ってきたのも大きいでしょう。探求心が強いといえば聞こえがいいですが、実際はこだわりが強くあきらめが悪い人間なのかもしれませんね。

WWFジャパンは今年で創設45年。活動領域も広がり、組織として目指すところも明確になってきたと思います。しかし、いわゆる新興国が経済発展を果たすにつれて、新たな資源問題も起こりつつあります。グローバル化による問題の複雑化に、WWFとしてどう対処するのか。“バランスよく持続可能な”消費活動を我々は促していかねばなりません。

関連リンク
WWFジャパン


橋本務太さん 

後編のインタビューから

-橋本さんが仕事で大切にしていることとは?
-橋本さんが「この自然を残したい」と心から感動した場所とは?
-子育て中の親御さんへのメッセージ

後編を読む

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