「もうひとつの学校」で出会った、異なる世界の人たち

大学時代にはダブルスクールでCGの専門スクール、デジタルハリウッドにも通っていました。そこでは今まで自分が触れ合ってきた友だちや先生方とはまるで異なったタイプの人たちと出会うことができました。たとえば水道管工事の仕事をしながらCGクリエイターを目指している人がいたんです。人生で初めて水道管工事の仕事をしている人に出会い、その人がCGを学んでいる。とても新鮮な気持ちでした。自分のまったく知らない世界を知っている人たちといっしょにCGを学んで、世の中にはさまざまな考え方の人がいるのだということを思い知りました。
ダブルスクールだったと話すと「すごく忙しかったんじゃない?」とよく聞かれますが、そんなことないんですよ。東大の場合は最初の2年が教養課程。当時はその2年間で必要な単位を取ればよかったんです。入学して最初の半年、1限から5限までフルに授業を入れて全部合格すれば、それで単位は十分に取れる。そうすればあとの1年半は週に2~3コマの必修がある以外は自由になります。
面白いのは、たとえば社会人向けの講演会などでこのエピソードを話すと、「おお、それはすごい!」と言われるんですけど、現役の中高生に話すと「ふ~ん…」ていう反応。それもそのはずで、彼らは大学の1限よりもっと早い8時くらいから学校に行ってるわけですから。この反応の違いは、いかに大学に入ると学ばなくなるか、というひとつの証左ですね(笑)。サークルやバイトに時間をかけて、学ぶということとはかけ離れた大学生活にだけはしたくないと思っていました。だから専門スクールでのCGも、医学部の授業もちゃんとやろうと肝に銘じていました。