始めたきっかけは、友人のお母さん
中学生の時、友人の家に遊びに行った際に、たまたまお母さまが公文書写のペン習字教材を見せてくれたのが、始めたきっかけでした。小学生の頃に少し書道教室に通っていたことがあり、以前から「自分も美しい文字を書いてみたい」と思っていたので、大きく気持ちが動きました。高校受験を終え、高校入学と同時に教室に通い始めました。学校が終わった後に教室へ行っていたので、学習中によく眠くなったことを覚えています(笑)。
先生の指導はわかりやすく、どこを直せば美しく書けるようになるかといった指導が的確だったので、上達も早く、学習するのが楽しかったです。そして、家族や友人、学校の先生などから、書いた文字を褒められるようになってくると、もっと教材の手本の文字に近づきたいと思うようになりました。ただ、その当時は、こんなに長く続けることは想像していませんでした。
公文書写とともに30年
公文書写の教材は、先生と相談しながら自分が学習する分量を決めることができます。短い空き時間でも教材の説明を読みながら書くことによって、上達することができるので、マイペースな自分の性格に合ったのでしょう。
大学では古典文学を専攻しましたが、平安時代に書かれたかな文字や草書の読み書きには、公文書写の草書教材が役に立ちました。その後就職し、学生時代の友人と結婚。結婚式の招待状の宛名は自分で書きました。結婚を機に、県外にあった夫の実家に引っ越しましたが、そこでも公文書写教室を紹介してもらい、学習を継続しました。
その後、私たちは2人の子どもに恵まれました。息子や娘には小さい頃から文字の書き方を教えていたおかげで、今ではとてもきれいな文字が書けるようになりました。そして義理の両親や夫の理解・協力もあり、その後も順調に続けることができ、いつの間にか30年が過ぎたのです。
コツコツと一日数枚の教材に取りくんでいると、そのたびに発見があります。始筆や終筆のちょっとした加減や、一本の線への力の入れ方、そして筆を動かす速さなどで文字がまったく変わるのです。長く続けて、何度くり返しても、書くたびに新鮮な気持ちになれます。また公文書写の先生は、自分の気づかない点を丁寧にわかりやすく教えてくれます。励ましてくださりながらも、無理に押しつけない、この絶妙な距離感が心地よいです。
「できるときに、できるだけ」、自分のペースで学習する
なぜ続けられたのか?と問われても、「自分に合っていた」としか言いようがありません。そもそも公文書写をやめる理由が見つからないのです。やめたいと思ったことも一度もありません。一つのことを始めたらとことんやる性分なのでしょう。
もちろんこれまでに「壁」のようなものを感じることはありました。生活や家族のことも大事ですし、仕事もしています。忙しい時は教室に行けませんし、自宅での学習も進みません。そのような時は「落ち着いたらできるから」「いつまでもこのような状況ではない」と、気楽に考えるのです。短期的な視点ではなく、人生を長い目で見るようにしています。そんな私を辛抱強く見守ってくれている先生の存在も大きいと思います。
「できるときに、できるだけ」、気負わずに自分のペースで学習する積み重ねでここまで来ました。
大きな目標は立てず、自分が納得するまで続ける
ペン習字と筆ペンは最終教材まで学習し、硬筆書写技能検定1級も取得しました。ただ、あまり大きな目標を立てることはしません。体調不良や仕事でお休みすることもありますし、これからの人生の中でも、いろいろなことがあるでしょう。それでも、続けていくことが当たり前と考えています。
これだけ習っていても、自分の文字が美しいとは思えないので、納得するまで、まだまだ続けるつもりです。
文字には人の性格が表れると思います。大好きで憧れている公文の教材のように整った文字を書く努力をすることは、書く文字だけでなく、自分の内面も美しくしてくれているのだと信じています。