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Vol.068 2021.05.28

特別対談 未来を生きる子どもたちのために①

<前編>

これから求められるのは
自ら課題を発見して解決できる人材

デジタルハリウッド大学 教授・学長補佐

佐藤 昌宏 (さとう まさひろ)

デジタルハリウッド大学 教授・学長補佐。一般社団法人教育イノベーション協議会代表理事。内閣官房「教育再生実行会議 技術革新ワーキング・グループ」委員、文部科学省 教育再生実行アドバイザー、経産省「『未来の教室』とEdTech研究会」座長代理など、国の教育改革に関する委員を数多く務める。著書に『EdTechが変える教育の未来』(インプレス)。

時代の変化がよりスピードを増しているように感じられるなか、「どんな時代、どんな状況になっても、子どもたちが伸びていくために大切なことは何か?」――これからの子どもたちに求められる力、そして育みたい力について、各界の識者とともに探っていきます。
今回は、EdTech(=Education[教育] × Technology[テクノロジー])の第一人者として、国が推進する教育改革への提言に関わる委員などを数多く務められている、デジタルハリウッド大学 教授・学長補佐の佐藤昌宏先生をお迎えして、公文教育研究会 代表取締役社長の池上秀徳が対談を行いました。今回お届けする前編では、これから求められる人材像や未来の教育の在り方、ICT(=Information and Communication Technology[情報通信技術])を軸とした時代の変化について、後編ではKUMONらしいICTの活用について意見を交わしました。

目次

これからの時代に求められる力

特別対談:佐藤昌宏,池上秀徳

佐藤昌宏先生(以下、佐藤):日本では学習指導要領が改訂されて、主体的な学びができる子どもたちを育てていくという流れにあります。これからますます不確実で不確定なことが起こっていくであろう世界で、日本も多くの課題を抱え、誰もが経験したことのない問題に直面していきます。答えのない問いにどう答えていくか、試行錯誤しながら主体的に学んでいく子どもたちを育てていくことが、世界的な傾向でもあります。
新型コロナウイルスの流行はその象徴的な問いのひとつですね。予測できない問題をどのようによりよく解決していくのか、主体的な学びは子どもたちだけでなく、今この世の中を生きているすべての人たちに求められます。

公文教育研究会 池上(以下、池上):コロナ禍で教育現場でも、一斉休校にともなうオンラインでの授業など、これまでにない大きな変化が起こりました。私たちKUMONの社員もリモートワークをより推進したり、公文式教室で学ぶ子どもたちにはご自宅でも学習していただけるように、オンラインを活用した学習のサポートを公文式教室の先生方と協力しながら進めているところです。

佐藤:社会が大きく変化していることを実感しますね。変化があたりまえだからこそ、言われたことをやり続けるというよりは、自ら課題を発見して解決できる人材が求められているんだろうなと思います。当然、教育の方法も、求められる能力もそれに基づいて変化していくでしょう。

池上:先を見通せないからこそ、主体的に学び、課題を考えて、それを解決するために人と協力しながらやっていける人材が求められると思います。公文の理念として掲げている「健全にして有能な人材」を育成することは私たちの使命です。有能さというのは時代を超えて様々な意味があると思いますが、モチベーションと集中力とやり抜く力は土台として必要です。
また健全であるために、創始者である公文公会長は読書を重要視しました。読書によって何ができるかというと「健全な見方」、つまり自分のものの見方だけじゃなくて、他の人には違う見え方があり、物事のいろいろな見方の存在がわかる。近年でいうダイバーシティ(=多様性を活かす)の礎ですね。

佐藤:読書というのは、身に付けた知識を知恵にかえていくフェーズに必要なんでしょうね。現代では、読書だけではなくインターネットで動画を見ることで、経験したことのない情報を得ることや、さまざまな考え方に触れられたり、学びの機会がより多様化しています。
学習の方法はひとつじゃないと思うんですね。そして、学校教育も変わろうとしている。学校が民間とも連携して、それぞれの役割は何なのか、それこそKUMONのやるべきことと学校のやるべきこととが連携できるといいですよね。

池上:たしかにそうですね。これからの未来を創る子どもたちを育てたいという思いは同じですから、今後ますます連携できるとよいと思います。

最先端教育である公文式の役割・使命

最先端教育である公文式の役割・使命

佐藤:学校教育における一斉授業というのは、これまでの教育の最適解であったとは思います。限られたリソースで多くの人たちに教育の機会を提供していくという点では意味のある形式でした。ただ最近では、これからの時代に求められる力、主体的に学び続ける力を育むために、ICTの進化もあって、一人ひとりに合った学びを個人のペースで提供していく「個別最適化」がようやく教育でも取りざたされるようになりました。公文式はアナログ時代の昔から、個別最適化された学習を提供していたわけですから、じつは創始者の公文公さんの提案は、最先端の教育だったのだと思います。

特別対談:佐藤昌宏,池上秀徳

池上:公文式教育は、創立以来、一人ひとりの可能性を信じ、その能力を最大限に引き出すために、その子にとっての「ちょうど」を見つけ、個人別に最適な教材を提供して指導を行っています。そして実社会に出ても、自ら主体的に学び、物事に積極的に取り組む、自分の道を自分の力で切り拓いていける自立した人間を育むことを目指しています。今、世界の50を超える国と地域にグローバルに共感をもって受け入れられているのは、すべての人間が持っている限りない可能性を信じ、個人別教育を徹底して追求するところにあると思っています。

佐藤:主体的に学び続ける力を育むための指導者の存在や、公文式のプログラム教材など、一貫した素晴らしい体制が整っていますね。

池上:ありがとうございます。一人ひとりの子どもたちの「ちょうど」を見極める指導者の存在と、誰もが自分の力で進めていけるようにきめ細かいステップで構成された教材は、私たちの強みだと思っています。

佐藤:これからICT化が進む時代において、公文式教育の可能性はますます広がるように思います。ICTを活用すれば、教育の現場でも医療でいう電子カルテのようなものを一人ひとりに合わせて作ることができます。たとえばそのような学習カルテを、学校のみならず家庭、そして民間教育でもシームレスにつながるようにできれば、学習者を中心にした学びを、より高い品質で担保できるようになるんじゃないかと思います。

池上:それこそまさに教育の進化ですね。ICTの活用が公文式をもう一歩上のステージに引き上げてくれる可能性を秘めています。

新しい時代の「ちょうどの学習」

新しい時代の「ちょうどの学習」

特別対談:佐藤昌宏,池上秀徳

佐藤:これまでの教育におけるICTの活用としてイメージされてきたのは、eラーニングのような、画面に向かって一人で学習するというものですが、これはモチベーションを維持するのが大変なんですね。ゲーム性を取り入れたゲーミフィケーション(=ゲームの要素や考え方を他の分野で活かす)のような工夫もありますが、学び続けるモチベーションをいかにキープしていくかは課題のひとつです。

池上:公文式はICTのないアナログ時代から始まっていますが、創始者の公文公会長は、紙の問題を解き指導者が採点してその場で振り返る、という形で、人が介在することで学習者のモチベーションを引き出すことを大切にしていました。

佐藤:モチベーションを維持するために必要なのがリフレクション(=内省による振り返り)だと言われています。ただリフレクションに関して、自分の過去の履歴を客観的に、事実に基づいて振り返るのってとても難しいんですね。でもそこはICTの出番。たとえば私はスキーをやるんですが、ビデオを使って自分の動きの録画を振り返るだけでも劇的にうまくなるんですよ。ICTを使えば、事実に基づいたリフレクションができる。
たとえば公文式のプリントを積み上げていくだけでもその紙の累積の量で、子どもたちは「こんなにやったのか」と自己肯定感がわくでしょう。でも枚数だけではなく、1枚1枚の中身について何ができたのか何を間違えたのか、かかった時間は?それらを的確に分析して、グラフのような形でより詳しく見せていくこともICTで可能になります。

池上:ICTの活用、まさに大事なところですね。私たちは「教材は子どもたちがつくるもの」という考え方を大切にしています。学習いただいている子どもたちが問題を解いている様子や内容、記録に学びながら、細かな改訂を重ねています。誰もが自分の力で進めていける、学習者にとっての「ちょうどの学習」を実現できる教材を目指しています。ICTは、よりよい指導にも活かせますね。

佐藤:おっしゃる通りで、ICTを活用することで、「ちょうどの学習」や「教材改訂」など、さらなる進化に活かせるように思います。指導者の先生方の教育への熱い思いや子どもたちへの愛情を大切にしながら、そこにICTを有効活用することが、さらに先を行くためのヒントになりそうです。

関連リンク デジタルハリウッド大学大学院一般社団法人教育イノベーション協議会


特別対談:佐藤昌宏,池上秀徳  

後編のインタビューから

-KUMONらしいICTの活用
-すべては子どもたちの幸せのために

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