スペシャルインタビュー
Academic Milestones - 学びを究める力

2019/11/01更新

Vol.058 早稲田大学 教育・総合科学学術院 教授
澤木泰代先生  前編

言語を学べば、
知らなかったことを知ることができる
一歩一歩、「知るよろこび」「進むよろこび」を味わおう

澤木 泰代 (さわき やすよ)
熊本県八代市生まれ。熊本大学教育学部卒業後、熊本県公立中学校教員となる。その後、イリノイ大学修士課程(英語教授法)で学び帰国。昭和女子大学英米文学科助手を経て、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)博士課程(応用言語学)へ。2003年よりETS(Educational Testing Service)妥当性研究センターにて、アソシエイト・リサーチ・サイエンティスト(常勤准研究員)、リサーチ・サイエンティスト(常勤研究員)として勤務。2009年より早稲田大学教育・総合科学学術院准教授。2014年より現職。主著に「大規模言語テストの妥当性・有用性検討に関する近年の動向」(『言語教育評価研究』誌掲載)など論文多数。

中学生のときから「毎日英語を勉強する」と決めて実行し、大好きな英語に関わる研究をされている、応用言語学の研究者、澤木泰代先生。TOEFL®の開発・運営で知られるアメリカの非営利教育団体、ETSの研究員をされていた経験などを活かして、日本の英語教育の向上に精力的に取り組まれています。応用言語学のおもしろさや、日本の英語教育の課題、学びの姿勢などについてうかがいました。

日本の英語教育で気になる「4技能のバランス」と「言語を使う経験」

早稲田大学 教育・総合科学学術院 教授 澤木泰代先生

日本の英語教育で気になるのは、4技能をバランスよく身につけることがうまくいっていないことと、英語を使う経験の少なさです。教科書で「この場面ではこういう表現を使うんだよ」と、文法的な要素や道具は習い、ある程度の繰り返し学習をして理解を深めることは学校でもしていると思います。しかし、それをいろいろな状況、いろいろな文脈で使っていく経験が不足しています。考えなくても言葉が出るようになる(これを「自動化」=Automatizationといいます)まで、とにかくたくさん「言語を使う経験」をする必要がありますが、授業時間数も限られており、そのための時間が圧倒的に足りていません。

リーディングを例にして説明しましょう。たとえば「過去形」のチャプターであれば、教科書には過去形の文章がたくさん出てきます。それらを読むのはもちろんですが、それだけでなく、過去のできごとについてメールでやり取りしたり、友人と話したりと、聞いたり読んだり話したり書いたりする必要があります。書くにしても、手紙やメールなどさまざまなコミュニケーションがあり、そうしたコミュニケーションの中でいろんな形で出てこないと使えるようにはなりません。とはいえ、基礎となる文法や語彙を疎かにしてはいけませんから、そのバランスが難しいところです。

先にETSのテストとしてお伝えした「TOEFL Primary®」は小中学生を主な対象に、「TOEFL Junior®」は中高生を主な対象にした英語の運用能力を測定するテストですが、これで測ることができる「読む」「聞く」という2技能は、言語能力を育てるうえで非常に重要なものです。読んだり聞いたりすることで、「こういう時にはこういう言葉を使うんだな」など、知識が増え、それが自分が書いたり話したりするときのモデルとなるからです。ですから、“いいインプット”がないと、“いいアウトプット”ができないといえます。

じつは私がETS在職中は、この2つのテストはまだありませんでしたが、TOEFL®はかなり上のレベルから始まるので、当時から、根っこから育てるようなプログラムの必要性が議論されていました。基礎的なものからアカデミックな内容への橋渡し役として、意義があるプログラムとして機能していると思います。
また、「TOEFL Primary®」や「TOEFL Junior®」は熟達度を測るテストです。覚えたことがどれだけ定着したかをみる到達度のテストとは性質が異なります。言語の熟達度は言葉を使った情報処理をたくさんしないと目に見えて変化がみえませんから、目に見える形でスコアが上がるにはかなりの時間と労力を要します。スコアに一喜一憂せず受験結果を普段の勉強に生かしていただきたいです。

「知らない世界」に憧れ、毎日英語を勉強した子ども時代

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