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Vol.103 2024.05.24

プロバスケットボール選手兼通訳 冨岡大地さん

<前編>

「努力」を見ていてくれる人は必ずいる
「自分にできること」を探して
あきらめずに続けていこう

プロバスケットボール選手 兼 通訳

冨岡 大地 (とみおか だいち)

1995年広島県生まれ。広陵高等学校卒業後、広島経済大学へ進学。大学3年時、広島に誕生したプロバスケットボールチームで、大学に通いながら活動。広島ライトニング、愛媛オレンジバイキングス、東京サンレーヴス、金沢武士団を経て、2022年から新潟アルビレックスBBに所属。

目にも止まらぬ高速ドライブで、コートの中を軽やかに走り抜ける冨岡大地さん。プロバスケットボールチームの新潟アルビレックスBBで選手兼通訳として活躍している冨岡選手が、「バスケットボール選手になる」という子どものときからの夢を見事に叶えることができたのは、公文式学習の中で得た「目標達成のためには段階を踏んでいくことが大事」という考え方があったからとのこと。
選手と通訳という“二刀流”までの道のりや、夢を実現するためのヒントをうかがいました。

目次

    練習、試合、記者会見…
    活躍の場が多い通訳という仕事

    プロバスケットボール選手がどんな一日を過ごしているのか、自分のチームでの平均的な一日を例に紹介しますね。シーズン中は、午前中はウエイトトレーニングなどのチームトレーニング。昼食休憩をはさんで、午後は体育館に再集合してストレッチ。その後ミーティングを30分から1時間ほど行ってから、ボールを使った練習を皆で2時間ぐらいします。

    そのあとは自主練習をしたり、トレーナーからケアを受けたりと個人個人のメニューをこなし、18時ごろには体育館を後にします。これが火曜から金曜まで続き、土日は試合。月曜がオフになります。

    自分はプロバスケットボールの選手をしながら、コーチ、外国人選手の英語の通訳としても活動しています。選手兼通訳としてチームを支えている人は、他のチームにもいますが、それほど多くはありません。

    選手としての自分のポジションはポイントガード(PG)。ボールを運び、パスをしたり、指示を出したりする「チームの司令塔」の役割を担っています。動きながら考えて指示をするので、事前にいろんなことを頭に入れておかなければなりません。加えて通訳として、外国籍のヘッドコーチの英語の指示を、即座に日本語に訳して選手たちに伝えます。

    大変そうに思えるかもしれませんが、今はもう慣れましたね。プレー時は自分のPGというポジションを考えながら、耳だけしっかりコーチのほうに向けておけば、言われた指示の内容は頭の中に入ります。コート内で話すのは当然バスケのことなので、「何を言っているかわからない」ということはほぼありません。

    通訳するのはプレーの最中だけではありません。ミーティングの時には、次の試合に向けて戦略を練るために、過去の試合や対戦チームの映像を観ながら、コーチが解説をするので、その内容を訳して選手たちに伝えます。

    また平日の練習後、週に2~3回は選手やコーチがメディアからインタビューを受けるので、外国籍選手やコーチの場合は自分が同席して通訳します。土日の試合後に行われるコーチの記者会見でも、やはり自分が通訳を担当します。

    そしてコート外でも出番があります。チームにいる外国籍の選手たちの中には、日本に住むのが初めてという選手もいて、日本の生活に不慣れだったりします。そうした選手のために、買いものにつきあったり、行きたい場所への行き方を教えてあげたりと、日常生活も必要に応じてサポートしています。

    英語でも日本語でも誠実に
    「相手の目を見て話す・聞く」

    もちろん、いつでもすべて完璧にできるわけではありません。自分のプレーに熱中していて「今なんて言った?」と聞き返すことも、正直あります。逆にいえば、そんなときに「もう1回言って」と遠慮しないで言えるように、日頃からしっかりコミュニケーションをとることが大切だと思っていて、それを心がけています。

    コーチ、そして選手たちと、そうした良好な関係になるためには、「誰かが話していたらそちらの方を向く」「相手の目を見て話を聞く」「耳をきちんと傾ける」という基本的なことをしっかりやっておくことに尽きます。それは英語だろうと日本語だろうと、外国籍の人だろうと日本人だろうと関係なくて、相手に真摯に向き合うということがコミュニケーションの基本だと思います。

    もうひとつ意識していることは、コーチや外国籍の選手が、何を言いたいか、今何を考えているか、どう思っているのかということを、常に気にかけるようにしていることです。例えばコーチがとても怒っていて、そのまま訳したら日本人選手との間で角が立つようなことでも、「どんな思いで言っているのか」がわかれば、表現を工夫して、オブラートに包んで伝えることができたりします。

    つまり通訳の仕事というのは、直訳すればよいのではなく、相手の言いたいことをいかに伝えられるかということなんですね。語学力以上に、相手が何を伝えたいかや、相手の考えを理解できる力が必要だと思います。

    選手をやりながら通訳をするというのは、このチームでは自分にしかできない仕事です。そこにやりがいがありますし、自分が発する言葉で情報を得ている選手がたくさんいると思うと、とても重要な仕事だと身が引き締まります。

    また、英語ができると、得られる情報量も違ってきます。外国籍選手や海外のヘッドコーチなどと、通訳を介さずに、自分の言葉で直接コミュニケーションがとれるので、そこからの学びが多いんです。通訳としての力が実践で養われるだけでなく、選手としても自分のプラスになっていると感じます。

    小1でバスケ、空手、公文式を
    3つ同時にスタート
    楽しくてどんどん進んだ公文式

    バスケをやるようになったのは、ふたりの兄の影響です。私は三人兄弟の末っ子で、兄たちがバスケと空手と公文式学習をやっていたので、自分もやりたいと言い出し、小学校1年生になると、3つ全部を同時に始めました。親からは「3つもやると遊ぶ時間がなくなるからやめたほうがいい」と言われましたが、兄たちに負けたくなくて、自分の意志を押し通しました。

    ところが、やはりスケジュール的にしんどくなって…(苦笑)。ほどなくして、「バスケ以外はやめたい」と親に申し出ました。すると、普段はやさしい父が「自分でやりたいと言い出したのだから、6年生までは続けなさい」と言うんです。小1の子どもにそんなこと言うのかと子ども心に衝撃的でしたが、幼くして自分が発した言葉の責任というものを思い知らされました。そのとき言われた「やりたいことをやるには、やりたくないこともやらなくてはいけないんだよ」という言葉は、ずっと頭の中に残っています。

    公文式教室では算数をやっていました。算数自体は楽しくて、勉強をしに行くというよりもパズルをしに行くという感覚でどんどん進み、父との約束通りに小6でやめる頃には、中学教材まで終了。透き通ったきれいなオブジェもいただいきました。くもんの先生がやさしかったのもよかったと思います。通っていた時期の後半の頃には、よく「宿題やってきた?」と言われましたが。

    実は、自分は結構成績がよくて、勉強が苦になったことがありません。苦手や嫌いという教科もありませんでした。今考えると、それは勉強の最初のとっかかりとして「楽しくできる」という感覚を、公文式学習で感じていたからかもしれません。他の子が「授業めんどくさいな」と言っているときでも、自分は「とりあえず聞いてみよう」と思えました。学習意欲や集中力を身につけられたのは、公文式教室に通っていたからだと思います。

    自分はバスケをやり始めた小学生の頃から、「将来はバスケの選手になる」と思い続けていました。きっかけは自分でもよくわからないのですが、他のことをやりたいと思ったこともありません。高校は公立高校に進むようにと親から言われていましたが、「待てよ。ここで自分の選択を間違えたくない」と、バスケで評判の私立高校に行きたいと思い直し、進路選択をしなければいけないギリギリの時期に親と相談しました。

    すると、「行ってもいいけれど、学費がかからないように」と言われたんです。そこでスポーツ推薦を狙おうとしましたが、バスケの枠では入れないことが判明。となると、成績で特待生の枠を獲得するしかありません。幸い勉強が好きだったお陰で成績は悪くはなく、その成績を維持して特待生にチャレンジし、無事合格することができました。親との約束通り、3年間学費ゼロ。しかも制服も先輩方のお下がりをいただくなどして、親に負担をかけずにすみました。本当にたくさんの方に助けていただいたことに、いまでも感謝しています。

    後編を読む

     


     

     

    後編のインタビューから

    -プロバスケ選手になるために自分流で英語を磨く
    -「段階を踏んで考える」KUMONの考え
    -子どもでいる時間は短い

    後編を読む

     

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