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Vol.101 2024.02.02

リンゴアメ株式会社代表取締役/ プロデューサー・クリエイティブディレクター
下田翼さん

<前編>

興味をもったら行動しよう
考えていた以上の
おもしろいことが見えてくる

リンゴアメ株式会社代表取締役/ プロデューサー・クリエイティブディレクター

下田 翼 (しもだ つばさ)

1986年東京都小金井市生まれ。武蔵大学人文学部卒業後、都内の広告代理店に入社。2012年仕事のかたわら大学時代の友人とともに、りんご飴の魅力を発信するサイト「ringo-a.me」を立ち上げる。2015年4月から総務省の地域おこし協力隊として、弘前市在住。青森県や弘前市などを舞台にしたPR映像のほか、ミュージックビデオや芸能関係のコンテンツを多数プロデュース。2020年コロナ禍で閉鎖された弘前公園で撮影した「101回目への弘前公園の桜(2020)」、大鰐町を舞台にしたPR動画「家族のかたち、大鰐のくらし」が、それぞれ第2回、第3回の「ふるさと動画大賞」を受賞。「よみがえる下風呂小唄(しもふろこうた)~下風呂温泉郷の今~」が第5回日本国際観光映像祭で国内グランプリ賞。2023年には短編映画「からっぽ」がショートショートフィルムフェスティバル&アジア2023「BRANDED SHORTS 2023」観光映像大賞 観光庁長官賞(グランプリ)受賞。

地域の何気ない風景や眠っている伝統文化などを「よそもの」視点から発掘し、クリエイターと協業してコンテンツ化、その魅力を映像やWEBなどで発信しているプロデューサーの下田翼さん。地方で地域社会に貢献したいと、生まれ育った東京から青森県弘前市に移り住み、現在は都内との二拠点生活を送っています。幼少期は思いを内に秘めたおとなしい子だったそうですが、興味を持ったことにはとことん没入し、そのひとつが公文式学習だったといいます。弘前に住むことになったのも「りんご飴」を追求しようと考えたことがきっかけでした。

目次

    思いや考えを形にして
    地域の人によろこばれるのが最大のやりがい

    私はリンゴアメ株式会社の代表として、コンテンツ制作のプロデュースや、地域の方の思いを形にする、クリエイティブに関わる仕事をしています。具体的には、映像、イベント、写真、楽曲などにより、どう表現したらより見てもらいやすくなるかを考えながら作品をつくりあげ、リリースするまでを担っています。最近はアーティストなど芸能関係のプロデュースが多いですね。

    青森では、地元のリンゴミュージックに所属する「ジョナゴールド」や「りんご娘」、「ライスボール」というグループのプロモーションを担当したり、イベントの企画、ミュージックビデオやライブ映像のディレクションやプロデュースのほか、行政のPR動画やTVCMなどの企画・制作もしています。

    例えば、10~30代の地元学生や若者が地域の魅力を描く地域発信プロジェクトでは、私がプロデュースを担当し、短編映画「からっぽ」をチームでつくりあげました。就活に悩める若者の一泊二日の逃避行を通じて津軽の魅力を描いた作品で、アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2023」主催の「BRANDED SHORTS 2023」において、ありがたいことにグランプリを受賞しました。

    ほかにも、青森県風間浦村で口伝えで残されていた小唄をよみがえらせる様子を描いたドキュメンタリー「よみがえる下風呂小唄 ~下風呂温泉郷のいま~」や、大鰐町を舞台にしたPR動画「家族のかたち、大鰐のくらし」などのプロデュースを担当しています。

    この仕事のおもしろさは、まず、自分が描いているアイデアや地域の方の思いを、どうクリエイティブに落とし込めるかを考えること。そして、それをリリースして地域の人に喜んでいただけることです。そこに一番やりがいを感じます。

    自分が表現者にならなくても、地域でがんばっている人たちをサポートする仕事におもしろさを感じるようになり、自分はプロデュースに徹し、地域のことを理解してくれるクリエイターと協業しています。青森県弘前市に移住したのは2015年ですが、最新情報の収集などのため現在は都内にも拠点を持っていて、二拠点生活を送っています。

    地元の人たちの地域への誇り
    地元愛に溢れた「りんご娘」に感動

    私は青森どころか東北には縁もゆかりもなければ、旅行で来たこともありませんでした。弘前に住むことになったのは、大学時代の友人とお酒を飲んでいたとき「りんご飴の魅力を発信するとおもしろいかも」と盛り上がったのがきっかけです。

    なぜりんご飴か…。りんご飴は縁日の定番で、昭和の原風景としてノスタルジーに溢れているのがいいなと感じたんです。その場のノリで「りんご飴を持っている女の子」の写真をひたすら撮影して、ひたすらアップするサイトを立ち上げました。

    やがてそれだけではおもしろくないし説得力もないので、りんご飴のことをもっと勉強しようと、青森へ行くことにしました。ちょうど東北新幹線が新青森駅まで開通したばかりの頃です。私は学生時代からブログを書いていたので、そこにりんご飴の魅力を書こうと考えていました。実は、「ひろさき」を「ひろまえ」だと思っていたぐらい知識不足だったんです…。

    初めて青森に来て感じたのは、空気がまったく違うということと、すごくのどかな地域だということです。でも実際に現地で話を聞くと、お祭りでは「いちご飴」はあっても「りんご飴」はあまりないという驚愕の事実が判明しました(笑)。

    このとき、ご当地アイドル「りんご娘」にりんご飴を持って写真を撮らせてもらおうと、所属事務所のリンゴミュージック社長の樋川新一さんとだけアポイントメントをとっていました。そこで当時、中学三年生だった王林さんとときさん、その妹分の「アルプスおとめ」に出会い、なんて純粋で謙虚なんだろうと衝撃を受けました。それ以上に印象的だったのが、地元愛に溢れていたことです。彼女たちだけでなく、地元の人たちが地域を誇りに思っていることにもおどろきました。

    私に興味をもってくれた樋川さんは、地域を盛り上げようと、ちょうど劇団を立ち上げようとしていたところでした。それで私に脚本を書いて欲しいというのです。稽古の様子も見に行くことになり、定期的に弘前に通うことになりました。

    まだ会社員だったので、金曜に仕事が終わると夜行バスで弘前へ。月曜の早朝に東京に着いて会社へ直行という生活を、多いときで月に3回ほどしていました。ハードでしたが、誰かのために役に立つならと、すごくやりがいを感じましたね。広告代理店での仕事もおもしろかったのですが、規模が大きすぎて「自分じゃなくてもいいのでは?」と感じるようになっていたこともあり、自分を頼ってもらえることがうれしかったんです。

    通っているうちにいろんな方と知り合い、地元愛あふれる温かい人柄にひかれて「この人たちのために仕事ができたらいいな」との思いが募りました。ちょうどセカンドキャリアも考えていたこともあり、7年間の会社員生活に終止符を打ち、弘前行きを決めました。1年やってみてダメだったら戻ろうと思いながら。タイミング良く弘前で「地域おこし協力隊」を募集していることを知り、2015年5月に移住しました。

    興味分野をどんどん学びたい自分と相性がよかった公文式

    私は生まれも育ちも東京ですが、群馬県みなかみ町に暮らす祖母の家によく遊びに行っていたこともあり、自然が大好きでした。とはいえ小学校低学年の頃まではもの静かで、学校でもあまり外で遊ばずに、窓の外ばかり見ていた子だったそうです。活発な兄と妹の様子をうかがいながら、自分の意見はいわずにじっと黙っている。反抗もせず、親からは「手のかからない子」と思われていたようです。

    やりたいこともなく、親から「こういうのはどう?」と勧められてやることがほとんどでした。そうした性格が少しずつ変わっていったのが、友人から誘われて高学年で始めたバスケットボールでした。

    母がいろんなことを勧めてくれた中のひとつが公文式学習です。親戚が教室に通っていたこともあり、小学校4年生から近所の教室に通うようになりました。友人と一緒だったので遊び場のひとつという感覚でしたね。

    公文式が楽しかったと思うのは、自分が興味ある分野をどんどん進められること。学校では決まった時間に決まった教科を学ばなくてはなりませんよね。でも公文式は、自分の好きな分野を自分のペースで学べます。私は強制されるのが苦手でしたが、一度夢中になるととことん没入するタイプ。オールラウンドにまんべんなく学ぶというより、好きなことを徹底的に学びたいので、それができる公文式とは相性がよかったのだと思います。

    学習していたのは国語、算数、英語です。とくに英語は専用のリスニング機器を使って学ぶのがおもしろくて、英語好きになりました。おかげで中高時代の成績は他の教科より良かった覚えがあります。

    また映画が好きだったので、洋画を観たときに少しでもわかると楽しくなり、「自分のまったく知らない世界があるんだな」と思うきっかけにもなりました。語学のおもしろさを知り、高校生ぐらいのときは、将来は翻訳家や通訳になりたいと思っていたほどです。

    後編を読む

     


     

     

    後編のインタビューから

    -地域を大切にする気持ち
    -与えられたものをしっかりやるだけでなく
    -全部が100%できなくていい

    後編を読む

     

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