「努力していれば結果は出る」
三度目の挑戦でプロテストに合格
大学卒業後は、会社員をしながらボウリングをする生活を続けていたのですが、やはりプロを目指そうと決めたのは、プロアマオープントーナメントのアマチュアの部で優勝したことがきっかけです。
これが転機となり、会社を辞める決心がつきました。会社を辞めてからは、母の公文の教室を手伝ったり、ボウリング場でアルバイトしたりしながら、練習を重ねました。
ところが、そこからプロになるまで3年かかりました。プロになるには1年に1回、春に行われるプロテストに合格しなくてはなりません。
プロテストは1次から3次試験まであります。1次と2次は実技試験で、それぞれ4日間で女子は1日12ゲームを投球し、48ゲームのトータルピンがアベレージ190点以上で実技合格となります。そして三次試験での面接、筆記試験を突破すると、テスト合格となるのです。
テスト中はしゃべってはいけないので、朝9時から夕方4時くらいまで、皆無言で黙々とプレーします。体も疲れますが、喜怒哀楽も出せないので、精神的なプレッシャーも大きかったですね。
2年連続不合格でもくじけなかったのは、「努力していれば何かしら結果が出る」と信じていたから。こう思えるのは公文式学習のおかげだと思います。全力でやってみて、どうにもならなかったら仕方ないなとあきらめもつきますが、中途半端にあきらめてしまったら後悔すると思います。それで私は全力でやってきました。
私はその過程、つまり日々の積み重ねが大事だと思います。これも公文式学習と同じですね。そうやって努力していれば、そのとき目指した結果は思うようなものでなくても、必ずどこかで何かにつながる。いまでもそうポジティブに考えています。
ですから、アスリートを目指すお子さんたちにも、コツコツ努力することを忘れないでほしいです。このことは勉強もスポーツも同じです。その習慣を身につけることが、夢に近づける秘訣ではないでしょうか。
また、「アスリートを目指すから勉強はいいや」ではなく、勉強は必要です。プロになって実感したのは体を動かす練習やトレーニングだけでなく、知識を得るための勉強も沢山しないといけないということです。スポーツも以前より論理的に練習や試合の組み立てをしていくことが主流となっていますし、アスリートを目指したいのなら、勉強を習慣づけしておくことも大切だよと伝えたいです。
私自身、「一日ひとつは知識を得よう」と意識して生活しています。そうすると「今日はこれを学んだ!」と成長している実感が生まれます。この成長実感は、夢をかなえるだけでなく、生活を楽しくしてくれます。楽しくなると、いろんなことにやる気がでます。そうやってポジティブに学んでいく姿勢を持てるといいと思います。
母の背中を見て
「好きなこと」ができる喜びを感じ取る
プロになれなかった間、両親は「もうやめたら」とも「必ずプロになってね」とも言わずに、ただただ応援してくれていました。とくに父は、よく車でボウリング場まで送迎してくれて、全力で私をサポートしてくれました。母も私が子どもだった頃と変わらずに、「好きなことをやりなさい」と、いつも後押ししてくれました。
それは、母自身「好きなことをしていて幸せ」という実感があったからだと思います。母が公文式教室を開設したのは、兄が3歳、私が生後2ヵ月のとき。育児と教室の指導・運営で大変だったと思います。それでも母から、「疲れた」という言葉を聞いたことは一度もありません。ただ、「好きな仕事をさせてもらっているからね」というようなニュアンスのことを言っていた記憶はあります。
それほど公文の仕事が好きで、誇りを持っているということが、子どもの私にも伝わっていました。そんな母の姿を間近で見ていたので、私自身も好きなことを仕事にしたいと思っていました。
私はこれまで「つらい」と感じたことはあっても、「やめたい」と思ったことは一度もありません。それは、誰かに言われてプロとしてやっているのではなく、社会人経験もした上で、自分がやりたくてやっているから。母と同じく、好きなことを仕事にできて幸せだと実感しています。
母を見習いたいのはそれだけではありません。私はボウリングのインストラクターの資格も持っているので、イベントなどでレクチャーすることがありますが、アマチュアの方や初心者の方に指導させていただくときは、同じ内容のことでも人により伝え方を変えて、一人ひとりにあったアドバイスをするように心がけています。
それは母が公文の教室で実践していたことでもあります。母は毎月、生徒さん一人ひとりの連絡ノートに手書きで生徒さんの学習の様子を細かく記入して、ご家庭とやり取りをしていました。教室を続けている現在も同じようにしています。私はそこまではできていませんが、少しでも近づきたいと思っています。
業界に恩返しをしながら
オリンピック種目になることを目指す
プロになった翌年に、米国フロリダにあるケーゲルトレーニングセンターにボウリング修行に行ってきました。そこでは投球技術だけでなく「目標のためにどうしていくか」プランニング方法を教えてもらうほか、メンタルトレーニングをするなど多くの収穫を得ました。
じつはボウリングというのは、メンタルと密接に結びついています。もちろん相手のいる競技ですが、マックス300点というスコア目標がある、自分との戦いなんです。試合前にはメンタルをポジティブにもっていくことが大切になります。
そのために私が試合前に必ずやっているのは、トイレ掃除を徹底的にやること。トイレがきれいになることで、「私はこれだけやったんだ!」と達成感が得られて自信になるんです。掃除はやればやるだけ目に見えてスッキリします。気持ちが整い、頭もクリアになるので、落ち着いて試合に臨めます。
何でもいいので、こんなふうに自分の気持ちがポジティブになれる習慣をつけると、生活も前向きになるのでおすすめですよ。
今後の目標は……私はPリーグでは優勝経験がありますが、公式戦では準優勝が最高順位なので、やはり優勝を狙いたいですね。また、ボウリングの魅力をもっと沢山の方に広めていきたいです。
そのためにも今までボウリングに馴染みがない方達にも積極的にアプローチをしていけたらと思います。いつか子どもたちのなりたい職業にプロボウラーがあがるようになったら幸せです。
そして目指すはオリンピック競技になること。私の大好きなボウリングがオリンピック競技になる日が来たら本当に嬉しいです。
もうひとつ描いているのは、ボウリングを通して、健康面、美容面について発信することです。この4月に池袋さくらクリニックさんと、「ウェルネス&ビューティパートナーシップ」を締結しました。
ボウリングは適度な有酸素運動です。代謝が高まりますし、運動負荷が高くないので無理なく全身運動ができてカロリーを消費できます。
例えば仲間とお話ししながら投球したり、ひとりで自分のペースでプレーできるので疲労感が少なく運動ができます。またピンが倒れるのは気持ちよく、ストレス発散にもなります。美容面では、屋内スポーツなので天気に左右されず、日焼けを気にせずに運動できるというのが良いですよね。
ボウリングをしたあとの体のケアについて、あまり意識していない方も多いと思います。プレー後は、静的ストレッチをしたり、ゆっくりお風呂に入ったりして固まった筋肉をほぐして老廃物を流してあげることが大切です。
逆に、試合前は動的ストレッチをして可動域を広げて怪我の予防をし、筋肉が緩くなりすぎてパフォーマンスが低下するのを防ぐため、長湯はしないほうがいい。こうしたプロならではのケアのノウハウなどをお伝えすることで、少しでも怪我の予防をしながら快適に長くプレーを楽しんでいただけたらいいなと思います。
「ボウリングは小学生のとき以来やったことがない」という方もいるかもしれませんが、ボウリングはいつから初めても上達するスポーツです。この機会にぜひ、ボウリング場に足を運んでみていただければうれしいです。
(撮影協力:池袋ロサボウル)
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