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Vol.090 2022.08.05

スキージャンパー
渡邉陽さん

<前編>

「やり抜く力」を身につけて
楽しみながらあきらめずに続けよう

スキージャンパー

渡邉 陽 (わたなべ みなみ)

1997年札幌市生まれ。小学校3年より札幌ジャンプスポーツ少年団でジャンプ競技を始める。中学2年より全国中学生スキー大会に出場。中学3年のとき全国中学生スキー大会の競技中に転倒し前十字靭帯断裂のケガをするも、リハビリを経て札幌日大高校1年の秋に競技に復帰。高校2年から海外遠征のFISカップ・コンチネンタルカップ・世界ジュニア選手権に出場。高校3年でシニア大会初優勝。インターハイ2連覇など高校時代は成績を残し、東海大学に進学。大学1年の時に出場した世界ジュニア選手権男女混合ミックス戦にて銅メダルを獲得。卒業後は、東部ダイハツグループにて自動車販売営業に携わりながら競技を続け、2022年4月からはプロアスリートチーム「team taku」に所属。

「飛ぶのが大好き!」と大きな瞳を輝かせながら、ジャンプについていきいきと語るスキージャンパーの渡邉陽(みなみ)さん。ジャンプ歴は今年で15年になるそうです。その間、インターハイ2連覇などの成績を残しましたが、ケガに見舞われたり再発したりと、道のりは決して平坦ではありませんでした。大学卒業直前となってしまった就職活動やスポンサー探しも自らの手で切り開き、現在は選手活動の一方で、スキージャンプの魅力を知ってもらうための広報活動も精力的に行っています。そのバイタリティとタフさは、公文式で「やり抜く力」を身につけたお陰でもあるそうです。好きなことにまっすぐに取り組む渡邉さんに、ジャンプへの思いや今後のプランなどについて伺いました。

目次

    札幌と長野の2拠点で活動、移動はフェリーと車が中心

    渡邉陽さん

    私は札幌と長野を拠点に女子スキージャンプ選手として活動しています。大学を卒業して2年間は自動車の販売営業をしながら競技を続け、現在は長野のプロチームに所属しています。

    スキージャンプは冬のスポーツとのイメージがあるかもしれませんが、アルペンスキーやクロスカントリーとは違って、5月から翌年3月までがシーズンで、オフの期間は4月しかありません。5月から11月まではサマーシーズン、12月から翌年3月末まではウィンターシーズンになり、冬だけでなく夏にもワールドカップはあるので、そこに合わせて取り組んだりもしています。冬の場合は氷のレールですが、夏は人工芝があり、プラスチックのレールに水をまいて夏用のスキーワックスをかけて飛びます。ウェアは夏冬一緒なので、夏は暑いし冬は寒いし……なかなか大変なスポーツです。

    札幌ではトレーナーに見てもらったり、長野ではチームでトレーニングしたりしています。具体的にはウェイトトレーニング、ハードルジャンプなどの瞬発トレーニングのほか、走り込みもします。一番大事なのは体幹トレーニングです。ジャンプは腹筋、背筋など全身の筋肉を使うからです。もちろん、ジャンプ台がある場所ではジャンプ練習もします。

    5月から6月にかけての3週間は、宮古島で陸トレ合宿を終えたところで、これから長野で初飛びです。休みの日は、愛犬と遊んだり夏であれば海で泳いだりと、普通に過ごしています。

    私は札幌と長野の2ヵ所を拠点にしているので、移動も結構あります。スキー板など荷物が大きいため、本州に渡るときはフェリーに乗ります。今日もフェリーで苫小牧港から仙台港まで、その後は仙台から東京まで自分で車を運転してきました。(※取材は東京都内で実施)

    試合は夏と冬半々で、年間約30試合あります。試合の1週間くらい前に現地に入って、調子を整えながら練習し、試合終了後は港まで自分で車を運転し、その日のフェリーですぐに帰ります。疲れないかと心配されるかもしれませんが、慣れていますし、元々運転も好きなのでまったく苦になりません。

    会社に勤めながら競技活動していた2年間は、準備も移動もすべて一人でやっていました。運転中は好きな音楽をかけながらずっと大声で歌っています(笑)。

    「生身の人間が空を飛ぶ」体験に惚れ込む

    「生身の人間が空を飛ぶ」体験に惚れ込む

    渡邉陽さん

    私がジャンプを始めたのは、2006年のトリノオリンピックのジャンプをテレビで観たことがきっかけでした。「かっこいい!」と思い、すぐにジャンプスポーツ少年団の見学に行き、翌日には小中学生用の小さいジャンプ台を飛んでいたそうです。そしてそのまま入団しました。

    じつはクロスカントリーの選手だった父が、本当はジャンプをやりたかったそうなんです。それで私も幼い頃から、父に連れられて大倉山のジャンプ台(※1972年の札幌五輪の舞台のひとつ)に行っていました。だからジャンプには馴染みがあったのだと思います。加えて、0歳から8歳まで続けていた水泳がちょうど卒業のタイミングで、次に何をしようかと探していたことも、ジャンプを始めるきっかけとなった一因です。

    私は覚えていないのですが、始めてまもなく、ジャンプ台から落ちて顔にケガをしてしまい、それで怖くなってしばらく飛ばなかったそうです。ですが、その後いつの間にか飛んでいたんですね。

    渡邉陽さん

    ジャンプは飛ぶ前の「アプローチ」といわれる、滑り込むところがとても大事です。うまくスキー板に体がのれていないとスピードが出ません。スピードが出ないということは距離が飛んでいかないということです。飛び出すタイミングもとても大事です。ジャンプはすごく繊細なスポーツなので、そのちょっとのズレで、飛距離が5m、10mと変わってしまいます。ですからより遠くに飛ぶためには、アプローチをしっかり準備することが絶対です。

    スキージャンプの魅力ですか? とにかく楽しい、に尽きます。生身の人間が空を飛ぶなんて、普通はできないことですよね。でもジャンプはそれを可能にします。風を自分でうまく捉えられたとき、一段階、体がふっと上に上がるんです。その感覚がすごく楽しい。もちろん、距離が遠くに飛べたときもうれしいです。

    追ってお伝えしますが、私はこれまでケガをするなど、苦しいこともたくさん経験しています。でも、一度もジャンプをやめたいと思ったことはありません。

    公文式で身についた「やり抜く力」

    海外遠征で英会話に困らないのは公文のお陰
    「やり抜く力」「優先順位を考える力」も身についた

    山口厚子さん

    公文式教室には3歳から15歳、中学卒業まで通っていました。きっかけは覚えていませんが、母の勧めでしょうね。国数英と三教科を学習していましたが、中でも好きだったのは英語です。私はやりたいものはどんどん進むタイプなので、英語もどんどん得意になりました。英語に力を入れていた幼稚園に通っていたこともありますが、公文式での学びもあって英語の成績はずっとよく、小学校3、4年生のときには英検準2級を受けました。

    英語は今でも得意で、海外遠征でも会話に困らないのは公文に通い続けていたお陰だと感謝しています。小5のときに遠征でフィンランドに行くことになり、公文の先生に英語を重点的に学習させてもらうようお願いしたこともありました。

    また先生だけでなく、先生のお子さんたちにもかわいがっていただいた覚えがあります。アットホームな雰囲気の中で楽しく学んでいましたね。

    英語のほか漢字も得意で、国語も苦にはなりませんでした。算数・数学は苦手でしたが、1日5枚、やらない選択肢はありませんでした。例えば夏休みで公文に行かない日は3枚に減らしたとしても、次の日は7枚やらなくちゃいけない。となると、その日に5枚やったほうがラクですよね。後回しにしていても、結局やらなくてはいけないのならやってしまおうと、やり抜く力が身についたと思います。

    そして苦手な算数を続けたお陰で計算が早くなり、ものごとを逆算して効率よくできるようにもなりました。私は公文式のほか、ピアノ、ジャンプと毎日いろんなことをしていたのですが、ジャンプ以外は中3まで続けることにしていました。決めた通りに全部をちゃんとやり切れたことは、自分の自信につながっています。

    いろんなことをやらねばならないときに意識していたのは、優先順位をつけることです。今でもやるべきことを書き出して、やったものにはチェックをしています。子ども時代に優先順位をつけて考える習慣ができたのは、とてもよかったと思います。

    後編を読む

    関連リンクMinami Watanabe 渡邉 陽 (@minami___0905) • InstagramMinami Watanabe 渡邉 陽 (@minami___0905) 個人Twitterスキージャンプ選手 渡邉 陽 公式 (@5pdhj2JtOgNkIDP) / TwitterMINAMI WATANABE Promotion movie


    渡邉陽さん  

    後編のインタビューから

    -ケガや手術にも負けずに続けた競技活動
    -渡邉さんが描く今後のアスリート像とは?
    -育ててくれた北海道への恩返し

    後編を読む

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