元受刑者の育成は千房の人材育成の根幹
支えることで支える側も成長する
![]() |
元受刑者の就労支援は社内で周知徹底されていると思い込んでいたのに、違った。「これはどうにかしなくては」と思ってまずやったのは、最初の全国店長会議で「この就労支援の取り組みはずっと続けていきます。でも、現場任せにはしません。会社一丸となって全力でバックアップします」と宣言したことです。
具体的には、本社の管理本部が毎月面接をしたり、家計簿のような金銭出納帳をつけさせてお金の管理を一緒にやったりということです。こうして従業員の理解を得られるようにしていきました。なぜそこまでして続けるのか、ともよく聞かれます。それは、元受刑者の育成は創業当時からずっと続けてきたことであり、すなわち千房の人材育成の根幹だと思うからです。
千房では、「信頼と友情そしてファミリーの心」を創業以来の経営理念のひとつとして大切にしています。例えば元受刑者の従業員が失踪してしまったら、閉店後に店舗スタッフ全員で探しに行きます。そうして「皆“家族”なんだ」ということが、実践を通じて身につきます。こうしたことが千房のよさであり、他社にはない強みです。なので、元受刑者の育成をなくすわけにはいかないのです。
正直、大変です。しかし、反省は一人でもできますが、更生は皆の支えがないとできません。皆が一丸となって育成しようとなると、育成する側の自分たちも心優しくなれる。「自分たちも襟元を正さないと」と自覚するようにもなります。人として成長できるのです。
「職親プロジェクト」に参加する他の企業さんでも同様の問題は起こります。そうした悩みを共有し、解決策を模索していく。このような取り組みを続けるのも、新たな被害者を生まないためです。罪を犯した人のうち、約2人に1人が再犯者で、再犯者の70%が無職です。職を持ってもらうことで、再犯防止につなげたいのです。それには元受刑者を引き受ける会社が必要です。損得でやっていたらとてもできないことです。ですが、この取り組みが善か悪かといえば、明らかに善です。社会にとって善である取り組みだから、我々は続けているのです。