Unlocking the potential within you ―― 学び続ける人のそばに

記事検索
Vol.074 2021.01.15

女子レスリング選手
登坂絵莉さん

<後編>

「よくがんばったね!」
子どもを成長させる魔法の言葉
前へ前へと進んでいける

女子レスリング選手

登坂 絵莉 (とうさか えり)

富山県出身。小学3年生からレスリングを始め、中学時代に全国中学生選手権で優勝。至学館高校入学後は全国高校女子選手権を2連覇、至学館大学時代にも数々の大会で優勝を果たす。2013~15年世界選手権48kg級3連覇、2016年リオデジャネイロ五輪同級で金メダルを獲得。(インタビュー当時は東新住建に所属)

小学3年生の時に始めたレスリング、5年生から通い始めた公文式教室、親元を離れての高校進学と、一貫して自分の進む道を自分で考え、決断してきた女子レスリング選手の登坂絵莉さん。中学、高校、大学と進む中で、数々の大会で好成績を収め、2016年のリオデジャネイロ五輪ではレスリング女子48kg級で金メダルを獲得しました。一つひとつのことを大切にしてきたからこそ今があり、このことはレスリングにも公文式学習にも共通していると話します。レスリングとの出会いや公文式での思い出、大切にしていることなどについて、家族への感謝の思いとともに語っていただきました。

目次

    英語を学ぶ中で「失敗は恐れなくていい」と考え方も変化

    登坂 絵莉さん

    私は今でも英語を勉強し続けています。それは、海外の人たちとしっかりコミュニケーションをとりたいからです。人生で初めての海外が、先にお伝えした遠征で行ったスウェーデンで、10日間滞在していました。そのとき、言葉は通じないけれど、練習になると身振り手振りで通じたのがうれしかった記憶があります。

    「レスリング」という共通のスポーツがあるだけでつながれることが、単純にすごいと感じました。でもやっぱり英語はできたほうがいい、とも実感しました。相手の言うことは理解できても、うまく伝えられない歯がゆさがあったんです。

    海外遠征を重ねるなどして外国の友人が増えていろいろ話すと、「こんな考え方があるんだ」とすごく刺激になります。日本との違いを感じることもあります。たとえば私は「これをやって失敗したら、人にはこう思われるかな」と気にすることがあるのですが、外国の友人はまったくそんなふうに考えない。気にしていなくて「自分がやりたいならやればいいと思うよ!」と明るくアドバイスしてくれるんです。

    そんな友人たちから、どんどん挑戦していくことが大事で、「必要以上に失敗を恐れない」ことを教わりました。自分が失敗したことも、周囲の人はすぐに忘れてしまうよ、という考え方に心が軽くなりました。英語を学ぶ中で、こんなふうに自分が知らなかった考え方を知ることができ、人生観も変わったと思います。それも英語を学び続けたいと思う理由です。

    海外で活躍したいと思っているお子さんたちには、語学の勉強そのものも大事ですが、いろんなことに挑戦して、いろんな経験をしてほしいと思います。何かを選択するときにも、いろんな経験をしていると、選びやすくなると思います。

    レスリングについても日本と海外とで違いはあります。たとえば練習スタイルについては、日本は年間を通してだいたい同じ練習をして、シーズンオフはないのですが、海外では練習にピークをつけたりしています。どちらがいい悪いとかではなく、いろんな考え方を取り入れていってもいいのかなとも思っています。

    レスリングをやめたい気持ちをとどまらせたこととは?

    「家族に成長した姿を見せたい」
    その一心でやめたい気持ちを乗り越えた

    登坂 絵莉さん

    私は「まじめが一番」という言葉が好きです。普段、おしゃべりでおふざけキャラな面もあるのですが、自分が決めたことに対しては、真剣に向き合っていきたいですし、これまでも向き合ってきたと思っています。それはやはり、私が選ぶ道をいつも一番に応援してくれる人たちに報いたい、という思いがあるからです。

    私は小学生の頃から父に「勝ちたかったら練習をすればいいし、負けてもいいのなら練習しなくていい」と言われ続けてきました。「勝ちたいからやる」と、ずっと練習を積み重ねてきました。

    高校受験の頃には、オリンピックを目指したいと思うようになり、富山県の実家を離れ、レスリングの強い愛知県の至学館高校に進学することに決めました。家族と離れているから実際の私の高校生活は家族には見えませんが、私ががんばっていると信じてくれる家族を裏切りたくはなかったですし、レスリングをするために実家を離れたのですから、まじめに、真剣に、取り組もうと強く思いました。

    15歳で親元を離れたわけですが、両親は私の前では寂しそうにはしていませんでしたね。ですが、愛知県の高校の寮まで車で送ってくれた帰りの車中では、両親ともに涙していたようです。私自身は、寮生活が始まり、同じような境遇の友だちがたくさんいたこと、練習が厳しくてついていくのも大変だったこと、そして勉強もしなきゃいけないしと、とても忙しくて、ホームシックにかかっているヒマはありませんでした。

    高校では同じチームの大学生と一緒に練習するんです。さらに社会人選手の吉田沙保里さんをはじめ、強い選手がたくさんいて、私なんか全然相手になりませんでした。そこで現実を知り、ずっと「やめたい」と思っていました。

    でも、レスリングをやるために家を離れているのだから、高校の3年間はがんばろうと決めました。そして、「たとえ勝てなかったとしても、少しでも成長した姿を家族に見せたい」と思い、その一心で続けました。そうしてがんばっていたら、高3の終わり頃からだんだん結果が出てくるようになったんです。それで大学でもレスリングを続けることにしました。

    子どもたちや保護者へのメッセージ

    あきらめたら目標はそこで終わってしまう
    失敗を恐れずに挑戦し続けよう

    登坂 絵莉さん

    これからのことについては、ケガの治る状況にもよるので、いまの時点でははっきりとした目標を上げることはできませんが、レスリングに関しても、レスリング以外のことでも、何かに挑戦し続ける人生にしたいと思っています。

    興味のひとつに、海外の方と積極的に関わる、ということがあります。国で言えば、レスリングの強いアメリカや、自然豊かで居心地がよいと感じたカナダなど。現地で英語に磨きをかけながら、コミュニケーションをとりつつ、レスリングもできたらと思っています。

    アスリートを目指してがんばっている子どもたちには「あきらめたらそこで目標は終わってしまうから、あきらめずにがんばって」とお伝えしたいですね。そして、「ほめる」ということが、子どもの成長に大きく影響してくると思うので、保護者の方には、ぜひお子さんをできるだけほめてあげてほしいと思います。

    私自身、子どもの頃にほめられて、うれしくて、「よし、次も!」とがんばれました。大人になった今でもほめられたらうれしいので、子どもだったらなおさら素直にうれしいと感じるのではないでしょうか。何かをして、思ったような結果を残せなかったときでも、まずは「よくがんばったね」と声をかけてあげれば、子どももまた「がんばろう」と前向きになると思います。

    私の父は、私が試合で負けて帰っても、第一声で「よくがんばった!」と迎えてくれました。そのお陰で、私は試合で失敗することが怖くありませんでした。そしてその後に「次、勝てるようにもっとこうしていこう」とアドバイスしてくれたんです。「なぜ、こうしなかったんだ」といわれているよりも、ずっと聞き入れやすいですよね。だから次はもっとこうしようということがすっと入ってきたのだと思います。

    今考えると、父にうまくのせられたのかもしれませんが、その言葉があったからこそ、ここまでがんばれたのだと思います。そして、いまの私があるのは、家族だけではなく、友人や先生、コーチの応援や支援があったから。今度は私が誰かを支えるようになりたいと思っていますし、私自身、さらに成長し続けていきたいと思います。

    前編を読む

    関連リンク

    東新住建レスリング部登坂絵莉TwitterYouTubeえりさらちゃんねる


    登坂 絵莉さん   

    前編のインタビューから

    -体力だけではない心理戦のレスリングのおもしろさ
    -「楽しい!」を優先させてくれたレスリング教室
    -公文式学習の思い出

    前編を読む

      この記事を知人に薦める可能性は、
      どれくらいありますか?

      12345678910

      点数

      【任意】

      その点数の理由を教えていただけませんか?


      このアンケートは匿名で行われます。このアンケートにより個人情報を取得することはありません。

      関連記事

      バックナンバー

      © 2001 Kumon Institute of Education Co., Ltd. All Rights Reserved.