さまざまな背景の人たちと学び暮らした6年間
夢をかなえるステップに
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12歳で親元を離れ、知り合いのいない土地での生活は、最初こそ心細かったですが、振り返ってみると非常に有意義なものでした。質の高い教育を受けられたことはもちろんですが、それ以上に大きかったのは、育ちも背景も違う仲間たちと寮生活ができたことです。本来、大学生くらいで経験するような異文化との接触を、中学生から経験できたわけです。早い段階で「世の中にはいろいろなバックグラウンドをもった人たちがいる」「自分とは異なった考えの人がいる」ことを知り、視野や見識を広めることができました。これは、その後の人格形成にも影響していると思います。
大学は薬学部に進みました。個別の患者を診るよりも、薬を開発することで多くの人に貢献できるのではないかと考えたからです。また、私が進学した京都大学では、所属学部での学びにとどまらず、さまざまな分野の授業を履修することができました。私自身、いろんなことを貪欲に学びたいと思っていましたし、周囲にも好奇心旺盛な友人が多かった影響もあり、法律や経済、植物学など幅広い分野の講義に顔を出し、最終的に、卒業時の履修単位は、最低履修単位を大きく上回る200単位に上りました。また、学部在学中には行政書士や宅建の資格もとったりして、「やってみたい」ことはすべてやっていました。今でもそうですが、目標を設定して集中して取り組んで達成する。すると、また新しい課題が出てきて、それにチャレンジする……というサイクルを繰り返していました。
このような幅広い学びの経験の中で、薬学とは異なり、徹底して理詰めなのがおもしろい、と感じたのが法律学でした。大学卒業後、大学院の薬学研究科に進みましたが、薬の開発にもやりがいを感じる一方、今後は個別のクライアントに直接かかわり、具体的に問題を解決する仕事に就きたいとの希望も持つようになっていきました。ちょうどその頃、多様なバックグラウンドを持った法曹の養成を目指し、法科大学院制度が創設されたことを知り、法律学への興味がよみがえると同時に、「医療知識を持って、法と医療を結ぶ法律家」になれば、これまでの自分の学歴や経験、興味関心などを総合的に活かせるのではないか、と強く感じました。そこで、現在の職業である弁護士を目指すことを決意しました。