盆栽は「生きている芸術」
長い期間育てることでその木ならではの風格が出る
![]() |
私は盆栽園を営みながら、盆栽家として作品を作っています。今、この盆栽園にあるのは約500鉢。そのうち半分ほどがお客さまからの「お預かりもの」です。じつは盆栽家としてのメインの仕事は、お客さまの盆栽を「しっかり見ながらしっかり育てる」こと。
盆栽は、雨や陽に当たること、温度管理をきちんとすることが大事。ほかにもその木に合った肥料や水の量、消毒なども考えなくてはならず、盆栽が趣味の方でも自分で育てるのはなかなか難しい。それで私たちのような盆栽園に預けるのです。
育てた盆栽は展示会にも出します。一般の盆栽展では、持ち主であるお客さまの名前で出展しますが、盆栽家の腕を競う競技会では、盆栽家の名前がメインに出ます。その代表的なものが日本盆栽作風展で、これは創作部門など様々な部門があり、毎年どの部門に挑戦するかを決めて、それに合わせて作っていきます。この出展には「3年間は自分で育てたもの」などの規定があり、長いと10年以上かけて育てることもあります。盆栽は時間がかかるものなのです。
![]() 樹種 真柏 鉢 古渡紫泥切立長方樹盆 |
盆栽は、将来的にどういう形にするか、はじめに「樹形構想」をして、それに合わせて針金で矯正し、はさみで剪定し、枝を作っていきます。木は生きているので、形は次第に変化していきます。
そこが盆栽の魅力。絵や彫刻などの芸術作品は、一度作れば、未来永劫同じ姿をずっと鑑賞することになりますが、盆栽は幹も太るし枝の形も変わっていく「生きている芸術」。手入れをくり返すことで、木の風格や歴史が出てきて、その過程を楽しめる芸術なのです。
そのため、お客さまとも長いお付き合いになります。展示会に出展したいか、個人で楽しみたいかなど、お客さまの目指す方向に合わせて、一緒に作り上げていきます。それも楽しみのひとつですね。