資金集めと研究を両立させる難しさ
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東大時代、周りにいる友人たちはみな優秀で「自分は研究者では一流になれないな」というのはひしひしと感じていました。でも、何かしら宇宙に関わった仕事はしたい。当時の指導教官がすごくユニークな先生で、研究者としても優秀で見た目も奇抜なんですけど、とにかく研究資金を集めてくる能力がすごかった。通常、宇宙研究は公的資金で動いているものですけど、その先生は色々な企業から資金を集めてくる。その先生を見ながら、一方で資金集めと研究を両立させる難しさも知りました。優秀な研究者は研究に没頭したほうがいいに決まっている。やがてそれは、「基礎科学に資金が入る仕組みはできないものか」という問いにつながっていきます。
人工的に流れ星を作るアイデアは、じつは学生時代からのものです。2001年の獅子座流星群、2002年のペルセウス流星群と、当時続けて流星群を見るチャンスがありました。天文学科の友人に何気なく流星群の仕組みを訊ねたところ、宇宙空間に漂うチリの粒が地球の大気に飛び込み、衝突することで光を放つと教えてくれたんです。「チリからできているなら、人工的に作り出せるんじゃないか……?」そのアイデアはずっと頭の端にありました。
それなら天文学の知識を生かしつつ、マネタイズ(事業から収益が得られる仕組みをつくること)もできるのではないか。これすごく新しいなって。流れ星を人工的に作り出すことで、天然の流れ星との比較が可能になれば、まだ解明されていないことも多い流れ星の研究にも寄与できるかもしれない。医薬の分野なんかは研究とマネタイズが密接していますけど、天文学ではほとんど前例がありませんでした。
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