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Vol.009 2014.05.16

ピアニスト 河村尚子さん

<後編>

世界中の人々と
音楽喜びを共有しながら
自分自身も成長を続けていきたい

ピアニスト

河村尚子 (かわむら ひさこ)

1981年、兵庫県生まれ。父の転勤に伴い5歳で渡独。ハノーファー音楽演劇メディア大学でピアノを専攻。多数の音楽コンクールで優勝・入賞を重ね、2006年にミュンヘン国際コンクール第2位、2007年にはクララ・ハスキル国際コンクール優勝。日本でも、2012年に芸術選奨新人賞を受賞した。ソロリサイタル活動のほか、ウィーン交響楽団、サンクトペテルブルク・フィルなど各国の交響楽団とも共演し、世界的な注目を集めている。

数々の海外音楽コンクールで優勝・入賞し、日本でもよみうり大手町ホールの開館記念コンサートで演奏を披露。今もっとも注目される若手ピアニストの一人が、河村尚子さんです。5歳からドイツで暮らし、現地の文化を吸収しつつも日本人の心を大切にしてきた河村さんに、グローバルに活動していく上で大切にしてきたことをうかがいました。

目次

海外生活のなかで、日本人の心と自分への自信を育む

ピアニスト 河村尚子さん
よみうり大手町ホール開館記念
読響スペシャルコンサート 2014年3月28日
©読売新聞

私は3人きょうだいの末っ子で、小さなころは、活発で落ち着きのない子(笑)でした。みんなとサッカーやドッジボールをすることが好きで、突き指をしても気にしていませんでしたね。ピアニストは内向的な人が多いようなイメージがあるかもしれませんが、私は内向的な部分もありつつ、人懐っこい子どもでした。

両親は私たちきょうだいに、やりたいことをのびのびやらせてくれました。母の口癖は「一日一善」。ほかの人のためにできることをしなさい、という教えは今も私のなかにあり、できる範囲で実行しています。あと、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」ということわざも心に残っていますね。5歳からドイツで暮らしていますが、両親ともに日本人ですし、家には日本語の本がたくさんあり、母の料理は和食が中心だったので、日本文化の基盤はあると思います。

5歳から中学2年までは、デュッセルドルフの公文教室にも通っていました。兄と姉が通っていたので、「自分もやりたい」と言って、迷路やなぞなぞ、塗り絵のプリントから始めました。教室で先輩たちが放物線のグラフを書いているのを見て、「あんなきれいなラインも数学なのか」と憧れ、そこにたどりつくのを目標に学習に取り組んでいました。やっていてよかったと思ったのは、小学6年の2学期のとき。日本人学校から現地校のギムナジウムに転校したのですが、公文で学校より先のことをやっていたおかげで、ギムナジウムの数学がとてもやさしく感じられたんです。ドイツ語の面では苦労しても、数学や音楽、体育という得意分野で自分の良さを発揮することができました。

また、ギムナジウムに行きながらも公文の国語学習を続けていたことで、今でも日本語の読み書きは不自由なくできます。ほかにも、毎日少しずつこつこつと、自発的に行うことや、忍耐力の大切さも、公文で学べたような気がします。

「眠くなるようにゆっくりと」と「消えるようにゆっくりと」の違いとは?

外国語を学ぶことで譜面をより深く理解できる

ピアニスト 河村尚子さん

勉強熱心なほうではありませんでしたが、ロシア語には一所懸命取り組みました。ポーランドの先生の次にロシア人のピアノの先生に師事したのですが、師事し始めて2年目に突然、「きょうからロシア語でレッスンします」と言われたんです。それまでもクラスメートとお喋りするなかで少しはロシア語を覚えていたのですが、レッスンでは日常会話とまったく違う言葉が出てくるので、先生のおっしゃる言葉をひとつも落とさないように、必死についていきました。

ほかにも、ドイツ語はもちろん、英語とフランス語も学びました。その言語圏に行ったときに、少しでも現地の方々の言葉が理解できるようになりたかったのです。外国語を学ぶと、言葉のニュアンスも分かって勉強になります。例えばイタリア語のある二つの単語を日本語にすると、どちらも「ゆっくりと」となるけれど、原語では「眠くなるようにゆっくりと」「消えるようにゆっくりと」とニュアンスが異なるというケースがあり、譜面をより深く理解することができるのです。

日本人は何年勉強しても外国語がなかなか身につかないと言われますが、大事なのはやはり実践、「喋ること」だと思います。喋ることで自分が理解されていると感じとり、相手の話も理解できることで、自信につながる。海に囲まれた日本では外国の方と接する機会がなかなか無いかもしれませんが、もし道に迷っている外国の方がいらしたら、勇気をもって話しかけてみてはいかがでしょうか。

オープンに人と接する秘訣とは?

日本固有の文化を大切にしながら、オープンに人と接してほしい

ピアニスト 河村尚子さん

さまざまな国で活動していく上で大切にしてきたのは、「誰も外国人だと思わない」ということです。この人は外国人だから意志疎通ができなくても仕方がない、とわりきる考え方もあるかもしれませんが、「私の国ではこうだけど」と前置きをすることなく、「これはどういうことなの?」と率直に聞くようにしています。私のように音楽をやっている人間からすれば、皆、音楽という、一つの同じ言葉を喋る人間です。一人ひとりの育った環境の違いを楽しみ、好奇心旺盛に、オープンに人と接していくことが大事だと思います。

その一方で、日本の皆さんには固有の文化も大切にしてほしいと思います。5歳でドイツに渡り、ずっと外から日本を見てきましたが、日本の良さはいろいろあると思います。私の周りの人たちも、日本人は礼儀正しく、丁寧、そして文化自体が素晴らしいというのです。日本に住んでいるとなかなか気づかないと思いますが、皆さんには大いに誇りを持ってほしいです。

子どもたちにはぜひ、自信と勇気をもって目標にチャレンジしていってほしいです。もしも壁にあたっても、自分ひとりがそういう目にあっているんじゃないと思えば、きっと落ち込まないと思います。私自身、やはり自分ひとりだけが苦しんでいるのだと思って、そのことに気づくまで時間がかかりました。みんな悩んで努力して、その人の今ある地点にたどり着いているんですよね。これからも演奏や指導といった音楽経験や多くの人とのふれあいを通して、自分自身を成長させていけたらと思っています。

関連リンク
河村尚子オフィシャルサイト

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