ストイックだけが上達の道ではない

環境ってすごく大事で、たとえばプロになるときも「これくらいがんばらないといけないんだ」と、プロの棋士を間近に見ていれば分かります。それは大きな道しるべになってくれました。
もちろん奨励会にはいい先輩がいればよくない先輩もいて、新人を遊びに連れまわすとか(笑)。実際、そういう誘いをうまいことかいくぐりながら、強くなっていくというのはリアルな話としてあります。でも、そんな経験をしていると将棋でもピンチを切り抜けやすくなる。
だから一概に「ストイックじゃなきゃダメ」とは言えないんです。いわゆるコミュニケーション、人間関係ですね。結局求められるものは総合的な結果ですので、だったらメリハリをつけて、息を抜くときは息を抜いて、集中するときは集中して……というのを経験として学んでいかなきゃいけないと思います。それは何も十代二十代に限ったことではなく、全世代共通ではないでしょうか。どんなに年齢や環境が変わっても変わらないところだと思います。
では、どうやって息を抜くのか。あるいは、煮詰まったときにいかにしてそこから抜け出すか。変な言い方ですけど、お酒を飲んで発散できる人のほうが切り替えは早い。極端な例ですが。よくないサイクルに入ったとき、そういう人のほうが抜け出しやすいんです。
真面目に考え過ぎるとずっとそのよくない状態が続いちゃう。私のリラックス法はズバリ「何もしない」ことです。それがいちばん気分転換になるんですよ。でも「何もしない」って簡単なようで意外と難しいんです。頭をからっぽにしようと思ってもつい考えてしまいますから。
そういうときは「片づけ」が私には有効なんです。これは親から受け継いだ息抜き法。うちの父親はやたらに掃除が好きなんですよ。日曜日になるとすぐ掃除機を出してくるくらいの。煮詰まったときは、身のまわりのものをちょっと片づけてみる。私は特にキレイ好きということはありませんが、片づけると頭がすっきりして視界が開ける気がします。
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日本将棋連盟