原理原則(ルール)を理解して書けば
誰でもきれいな字が書ける
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私は現在、大学で小・中学校の教員をめざす学生に、「書写指導」や「漢字指導」を教えているほか、高等学校の書道の教員になる学生に「書道科教育学」を教えています。「書写」というのは、小・中学校では国語科の中のひとつに位置づけられていますが、高等学校では「書道」として芸術科に含まれます。これは他の教科には見られない特徴です。
このほか、全国の大学教員で構成される全国大学書写書道教育学会の会長を務めています。書写及び書道教育の研究の充実と発展を図ることを目的とした学会で、「点画」(漢字をかたちづくる「点」と「画」)はどう書かれるのがよいのか、整った字形(文字の形)とはどういうものかなど、文字そのものにかかわる分析や指導法を研究したり、歴史的な調査分析をしたりしています。学会の研究成果は、2020・2021年度から実施される新学習指導要領にも少なからず反映されていると思っています。
書写は、ただきれいに書けばいいというものではなく、ある原理原則、つまりルールのもとに書かれることが大前提です。言い換えれば、「美しい」といわれる文字には一定のルールがあります。かつては「手先が器用だと字がきれい」といわれていました。筋肉運動が字を美しくしていると考えられていたのです。しかしそうではなく、字のルールを知識として獲得すると、誰でも整った字を書くことができます。
たとえば「青」という字を美しく書くポイントは2つあります。1つは、「青」の文字にある横画6本を等間隔に書くことです。これは、同じ方向にある線は、ほぼ等しい間隔で書くという「画間の原理」です。2つめは、上から3本目の横画を長く書くことです。すると、その文字の軸がはっきりしてきて安定感が出てきます。これは「画の長短の原理」です。このようなルールはほかにもたくさんあります。それらを習得することができれば、他の文字にも応用でき、正しく整えて書くことができるのです。