スペシャルインタビュー
Academic Milestones - 学びを究める力

2016/02/26更新

Vol.029

昔話研究者 小澤俊夫先生  後編

子どもには自ら育つ力がある
昔話に込められたメッセージ
を傾けてみよう

小澤 俊夫 (おざわ としお)

1930年中国・長春生まれ。口承文芸学者。東北薬科大学助教授を経て、日本女子大学教授、独マールブルク大学客員教授、筑波大学副学長、白百合女子大学教授を歴任。現在は、筑波大学名誉教授。国際口承文芸学会副会長及び日本口承文芸学会会長も務めた。1992年より「昔ばなし大学」を開講、1998年には季刊誌『子どもと昔話』を刊行。おもな著書は『昔話の語法』(福音館書店)、『グリム童話を読む』(岩波書店)、絵本「子どもとよむ日本の昔ばなし」シリーズ全30巻(くもん出版)ほか。「日本昔ばなし」シリーズの第5巻『うらしまたろう』(くもん出版)を2016年4月に刊行予定。

グリム童話の研究に始まり、日本の昔話研究の第一人者として、精力的に活動されている小澤俊夫先生。長年大学で教鞭を執られた後、若手研究者の育成や「昔ばなし大学」の開講を通じ、昔話の本来の姿を伝えています。日本の昔話を研究するきっかけとなった柳田國男氏との出会いや、ご両親のこと、そして昔話が教えてくれる大切なメッセージなどについてお話しいただきました。

子どもは「育てる」のではなく「育つ」もの
大人は子どもを信頼しよう

昔話研究者 小澤俊夫先生

昔話からわかるように、子どもは自らの力でちゃんと育ちます。それを理解し、子を信頼すればよいのですが、今は、親が子どもに口を出し過ぎてはいないでしょうか。

もみの木をご存じでしょう。我が家の息子たちが小さいとき、クリスマスツリーにしようと、庭にもみの木の苗を植えたら、少しずつ先の尖ったきれいな形に育ってきた。クリスマスが楽しみだと思っていたら、それらしく揃い始めていた上の方を、ある日植木屋さんにバッサリ剪定されてしまいました。がっかりしたんだけど、しばらくするとまた見事に先の尖ったきれいな形に戻ったのです。もみの木は「おれの姿はこういう姿なんだ」と主張しているのです。

もみの木でさえ、自分の意思を持ち、復元力がある。だから人間の子だって、「自分はこういう姿でありたい」という意思をもっているはずだと思うのです。大人が脇から「こうしなさい」「早くやりなさい」「もっとたくさんやりなさい」などと言うのは、大人の支配欲ではないでしょうか。大人がやるべきことは、子どもがもみの木みたいに、すくすく生きていけるよう手助けをすること。信頼し、育つ環境を作ってやることです。今、子どもはあまりにも手を加えられ過ぎている。人は盆栽ではないのです。

ぼくの母は、ぼくらの手が離れたころ、「わたしはうちのなかで空気のような存在でありたいと思っていたのよ」とポツリと言ったことがあります。空気はふだんはその存在に気づきませんが、でもなければ生きていけません。父はぼくらの家が戦後貧しかったときに、音楽好きなぼくらのためにピアノを買ってくれた。「こんなに貧乏なのに……」と、親戚からは批判されたようですが、父は「おれの自由教育が正しかったかどうかを証明するのはお前たちだ」とぼくらに言ったことがあります。ぼくは「証明できないはずはない」と思いましたね。父も母も、ぼくら子どもたちを完全に信頼していました。

その目で見ると、現代の親子関係の状況はとても気がかりです。「子どもは無限の可能性を持っている」とよく言いますが、それは「大人が干渉さえしなげれば」という条件つきです。幼いときから、大人が子どもの可能性を一生懸命つんでしまっていないか、心配です。子どもは自ら成長し、変化するもの。そうした当たり前で大切なことを、昔話は教えてくれています。大人は、慌てずに焦らずに、子どもたちを信頼して、温かく見守っていてください。

関連リンク

小澤昔ばなし研究所

 


 

昔話研究者 小澤俊夫先生  

前編のインタビューから

-昔話が大事にしているリズムとは?
-敗戦を迎えて父が言った言葉とは?
-小澤先生が日本の昔話研究に進むきっかけとなった人物とは?

 
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