研究者になるために決意した3つのこと
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ぼくは大学での研究生活のあと、1992年に「昔ばなし大学」を全国で開講し、1998年に「小澤昔ばなし研究所」を創りました。グリム童話に始まり、昔話をずっと研究してきたわけですが、その間、迷いは一切なかったですね。
大学入学時、専攻していたドイツ文学では、優秀な仲間がたくさんいて、それに比べると自分は並の研究者だと気づきました。でも、昔話の研究者になりたい。そのためにはどうしたらいいか、3つのことを考えました。1つは幅を広げないようにすること。2つめは人より3倍時間をかけること。3つめは人より長期間やること。その原則でいままで来ています。逆に才能のありすぎる人はいろんなことをやりたがり、まとまった成果を上げられなくなります。学生たちを教えていた頃にも、よくこの原則の話をしました。
大学院卒業後、東北薬科大学でドイツ語を教えながら、グリムの勉強もずいぶんしました。初めてドイツへ渡航したのは36歳のときで、研究者としては遅いほうです。でもぼくは「いつか行けるだろう」と考え、焦らなかった。最初は世界のメルヒェンの百科事典を制作する手伝いのために半年間、その数年後に客員教授として招かれ、家族同伴で2年間ドイツに暮らしました。
「昔話は聞くのが楽しい」というのは、フィールドワークで実感していたので、息子たちにも聞かせたりしていました。そして今は孫に読んでいます。いや、逆に孫が読んでくれますね。もちろんぼくは、相づちを打ちながら一生懸命聞きます。相づちは、語りと対なので、とても大切です。お父さんもお母さんも、子どもが何かを言ったら、聞き流さないではっきり相づちを打って聞いてくださいね。