自分の考えを表現できるのが絵本作家の醍醐味
絵本づくりは、お話が先にあってそこに絵をつけるパターンと、絵を考えてからお話をつくるパターンがあると思います。私は後者で、「こういう絵が描きたいな」と思い浮かべたところからお話をつくっています。こんな生き物を主役にして、それをこう動かして……とイメージしてお話を組み立てていき、デザインやレイアウトまで自分で手がけています。
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例えば、最初の作品『うずらちゃんのかくれんぼ』は、「うずらを主人公にしたいな」というところから始まり、「キノコに隠れる」というシーンをイメージしたりして、お話を組み立てていきました。実は最初はまったく違うお話だったのですが、それは追ってお伝えしますね。
私の場合、ラフを描くのに多くの時間をかけます。編集者とやりとりしながら、何度も何度も描き直すのはとてもたいへんですが、ものすごく大切な作業です。そこをクリアしたらアクリル絵の具で絵を描いて、デザインしたり、文字の配置を考えたりしていきます。「描きたい絵」からつくったお話を、どんどんそぎ落として完成させるわけで、私の場合1冊ができるまでに約3年かかります。とても地道な仕事ですが、自分の考えや思いついたことを手間をかけてていねいに形にできるのが、絵本作家の面白さだと感じています。
私の絵本には動物がよく登場します。人間を描くのも嫌いではありませんが、動物は可愛くて大好きなので、動物を主役にして描くほうが好きです。道徳的なことを伝えたいというよりも、自分で描いていて楽しいと感じるお話をつくっているので、読者にもぜひそこを楽しんでいただきたいと思います。植物は、読者の方から何の花か聞かれたときにきちんと答えられるよう、『うずらちゃんのかくれんぼ』を作った頃は花の図鑑を見ながら自分なりのタッチで描いていました。
絵を描いているのだから、小さい頃から絵本に親しんでいたかというと……じつは経済的に苦しい家庭で育ったため、好きな絵本を選んで買ってもらうという余裕はありませんでした。家にある絵本といえば、母が仕事先からもらったものばかり。しかも数冊程度しかなかったと思います。