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Vol.104 2024.07.19

在大阪スイス領事館 アカデミックリレーションズ部長
小谷 みなみさん

<前編>

世界を知るためにまずは自分を知る
未知の分野を学ぶことが
自らの可能性を広げる

在大阪スイス領事館 アカデミックリレーションズ部長

小谷 みなみ (こたに みなみ)

東京都生まれ。小学校から神奈川県横浜市の学校で学び、中学2年生のときにスイス南東部の LAZ(Lyceum Alpinum Zuoz)に編入。2017年7月に国際バカロレア(通称IB)を取得し、University College Londonに進学。帰国後は日本初の科学領事館として開所した在大阪スイス領事館にて勤務。現在アカデミックリレーションズ部長。

大阪にあるスイス領事館で、スイスと日本をつなぐ業務をされている小谷みなみさん。中学2年生のときに、自らの意志で単身スイスへ留学。その後イギリスの大学を卒業し、現在も仕事を通じてだけでなく、様々な未知の分野に挑み続けています。読書や学ぶことへの意欲が養われたのは、2歳から通っていた公文式教室のおかげだそうです。領事館でのお仕事やスイスの魅力などについて、楽しそうに語ってくれました。

目次

    科学や研究でスイスと日本をつなぐ架け橋に

    小谷 みなみさん

    私の職場は在大阪スイス領事館です。大使館と領事館の違いは、大使館は主に外交活動を行う機関で首都にあり、領事館はその国の国民のための機関で、どこに設置してもいいとされていることです。ビザやパスポートの発行は基本的に領事館の仕事です。とはいえ、本領事館は科学領事館なので、発行業務はしていません。

    では何をしているかというと、科学分野での両国の交流を促進することを目的に活動しています。スイスは時計やアーミーナイフの生産国として有名ですが、科学の研究や製造業も盛んで、日本でパートナーシップを展開することは両国にとって有益なのです。

    私が手にしているマグカップには、Swissnex(スイスネックス)とロゴが入っていますよね。これはスイスの国外における研究、技術革新分野の外部ネットワークを指している、いわばグローバルブランドです。サンフランシスコ、上海、ベンガルールなど、世界でもイノベーション力のある都市に拠点を置いていて、最新の拠点がここ日本です。

    本領事館には、3つの柱があります。スイスのスタートアップ企業が、日本に拠点を持ちたいというときに支援する「スタートアップ&イノベーション」、科学技術を使って芸術活動の可能性を広げる支援をする「アートサイエンス」、そして私が担当する「アカデミア」です。

    アカデミアはスイスと日本の大学や研究機関、企業をつなげる業務がメインです。私が担当しているのは大きく2種類あります。ひとつはスイスの研究者が来日する際に、会うべき研究者や訪問するべき研究機関の提案をすることです。

    ワークショップの様子
    ワークショップの様子

    先方から提示されるトピックはかなり幅広く、最近ではマインドフルネスの研究者が来日されたので、禅と関連させて僧侶の方とつなげ、領事館のイベントスペースで市民とワークショップを開催しました。マインドフルネスは私にとってまったくの専門外。書籍や論文を読むなどしてかなり勉強しました。

    日本でケアワーカーを訪問したいという案件もありました。その際は通訳も担当しましたが、そうなると私に介護や福祉分野の知識がなくてはなりません。「地域包括ケアセンター」はスイスには存在しないので、英語でどう表現するか悩みました。

    もうひとつは、スイスの若者をインターン生として受け入れてくれる企業を探すことです。スイスでは日本の高校に該当する期間に、座学と並行してインターンシップで実際の職務経験を積むというシステムがあります。会計、料理、写真、ITなど幅広い職業をカバーしていて、私は「職業訓練システム」と表現しています。

    スイスの大学進学率は30%で、70%の若者は職業訓練システムを利用しています。早い時期から自分のキャリアに主体性を持てる仕組みと言えますが、途中で大学に行きたければ変更することができるなど、かなり柔軟です。私はこのシステムを修了した人が日本でインターンを希望する際に、受け入れ企業を探したりサポートしたりしています。

    それ以外にも、スイスの大学と協定を結べる大学を探したり、留学に関する情報共有をしたりしています。自分の専門外の領域を知ることができるだけでなく、「科学と研究でスイスと日本をつなげる」ことを手伝えるこの仕事は、とてもやりがいがあります。

    母の読み聞かせで「本好き」に
    公文式で知った「学ぶことの楽しさ」

    私は一人っ子なのですが、一人で集中してものごとに取り組むのが好きな子どもだったようで、物心ついた頃から科学者になりたいと思っていました。理由やきっかけはとくにありません。ただ、何かを観察したり、「これは何からできているのだろう」と突き詰めて考えたりするのは好きでしたね。

    オフィスの様子
    オフィスの様子

    父は証券会社勤務を経て、今は自分で会社を経営しています。母は体育大学出身で、今でも短距離走をしているほか、ボランティアでシニアに体操を教えています。楽しそうに活躍しているので私もうれしいです。両親とも科学とは特に縁がないので、私の科学好きは両親の影響でもないようです。

    2歳になったばかりの頃に公文式教室に入会しました。母によると、散歩の途中に公文の教室があったからだそうで、最初は国語、3歳から算数を始めました。

    先生からの「とにかく文字や絵本を声に出して読み聞かせて」というアドバイスを受けて、母は絵本を初め、いろいろな本を読んでくれました。お気に入りはノンタンシリーズで、ぬいぐるみも持っていました。読めるようになってからは自分でもよく本を読んだので、そのおかげで今でも本に対する抵抗心はありません。

    読むだけでなく、自分で創作もしていました。『はいいろちゃん』という創作絵本をつくって、公文の「おはなしエンジェル 子ども創作コンクール」に応募し、賞をいただいたこともあります。紙芝居をつくって公文の教室で披露することもあり、『はいいろちゃん』も紙芝居にしました。ただ、創作は好きでしたが、それを将来の仕事に、と考えたことはありませんでした。

    公文を続けていたのは小学4年生までですが、クリスマス音読会や進度上位者のつどいに呼ばれていたことなど、楽しかった思い出がいくつもあります。私は中学2年生のときにスイスへ行ってから、コロナ禍で帰国するまで海外生活でしたが、公文の先生とは年賀状のやりとりを今でも続けています。
    ※当時、各地域で行われていた進度上位の生徒が表彰される催し。

    公文式が今でも役に立っていると感じることは様々あります。まず、公文式は自分のペースで学習を進めるシステムなので、自主的にものごとを進める力がついたこと。また自分に今できる最大の努力をすることが身についたこと。そして勉強したり新しいことを学んだりすることにまったく抵抗がないことです。机に向かう習慣がついたのも公文のおかげです。

    公文で学んだのは子どもの頃の一時期でしたが、そこで知った「学ぶことの楽しさ」や身についた学習習慣は、生涯学習にもつながるものだと思います。知識を身につけるだけでなく、やり続ける継続力などの非認知能力も養えるのではないでしょうか。

    スイスの学校へ留学、日本人は最大で5人

    小谷 みなみさん

    スイスに興味をもったのは、小1のときに参加したスイスでのサマースクールです。それまでも国内で2泊程度のスキー教室に参加するなどして、親と離れたことはありましたが、2~3週間も離れるのは初めてでした。

    ところが一度もホームシックにならず、とても楽しくて、終わるのが嫌で泣いたほどでした。帰りたくないなんて、親は悲しかったと思いますが、一方で「これはいける」と思ったのかもしれません(笑)。その後もサマースクールに参加するようになりました。小さい頃から海外に行く機会を与えてもらえて、恵まれていましたね。

    考えてみれば、昔から部屋の片付けも親に言われる前に自分でするなど、しっかり者と言われることが多かったです。年齢の割に大人びているとか、堂々としている、とも言われていました。

    アメリカにも行きましたが、アメリカでは当然、皆英語が上手です。一方、スイスは英語が公用語ではないので、英語圏出身でない子のサポートが充実しています。そこで中学生になって留学を考えるようになったとき、やはり行くならスイスかなと思いました。

    海外への大学進学に有利になる国際バカロレア(IB)を取りたかったので、英語の習得と環境に慣れるために、中2のときにスイス南東部のLAZ(Lyceum Alpinum Zuoz)という学校に編入することにしました。

    ドイツ語圏で国際バカロレアが取れる学校は限られていました。何より、できるだけ多様な国籍の人と交流したかったこともあり、LAZに決めました。LAZでは45カ国ほどの国籍の人が学んでいて、私がいた時期は日本人は最大でも5人しかいませんでした。

    後編を読む

     


     

     

    後編のインタビューから

    -自分の可能性を狭めるようなカテゴリー分けはしなくていい
    -「今できること」に着実に取り組めば、結果は後からついてくる
    -自分をよく知って、自分だけの基準を持とう

    後編を読む

     

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