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Vol.080 2021.08.06

ライター/翻訳者
堀越英美さん

<前編>

「正しい母」でなくてもいい
自分も子どもも縛らずに
「おもしろい」と感じたことを掘っていこう

ライター/翻訳者

堀越 英美 (ほりこし ひでみ)

神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社、IT系企業勤務を経てライターに。二児の母。主な著書は『モヤモヤしている女の子のための読書案内』『不道徳お母さん講座』(河出書房新社)『女の子は本当にピンクが好きなのか』(河出文庫)『スゴ母列伝』(大和書房)など。訳書に『世界と科学を変えた52人の女性たち』(青土社)、『ギークマム』(オライリー・ジャパン、共訳)『ガール・コード プログラミングで世界を変えた女子高生二人のほんとうのお話』(Pヴァイン)。

女性の生き方やありように焦点を当て、多くの読者を魅了しているライター/翻訳者の堀越英美さん。史実や科学的な視点も織り込まれた作品は、「女性」「母」という呪縛にとらわれた読者の心を軽くしてくれます。著作でも翻訳書でも、著作巻末の膨大な参考文献を見てもていねいに調べられていることがうかがえますが、それができるのは公文式学習のお陰だといいます。今のお仕事に至る道のりや翻訳のコツなどとあわせてうかがいました。また、堀越さんが翻訳され、この9月にくもん出版から上梓されるアメリカの15歳の科学者ギタンジャリ・ラオさんの著作『ギタンジャリ・ラオ STEMで未来は変えられる』についてもご紹介いただきました。

目次

女児を出産して「女の子」について考えるように

本を書いたり海外の書籍を翻訳したり、というのがいまの私の生業です。女性の生き方をテーマにしたものが多いのですが、とくにその分野を専門的に学んでいたわけでもなく、女の子を出産してから子どもの発達や男女差について関心を持つようになり、自然と多く手がけるようになりました。
じつは子どもを産むのなら、「男の子のほうがいい」と思っていました。私の子ども時代は、勉強で成果を出しても「どうせ主婦になるんだからそんなにがんばらなくても」という風潮がありましたし、女の子は人間関係にとらわれて好きなことを追求できないイメージがあったからです。

でも、実際生まれてきたらそんなことはない。女の子でもアンモナイトの化石を欲しがったり、いろんなことに関心があります。「その興味関心をつぶさなければいいんだ」と思いました。女の子がもっといいところを伸ばせるようにしてあげたい。のびのびと自分を認め、社会からも認められるようになってほしい。そう考えるようになり、女性のありよう、社会との関係性などテーマに執筆するようになりました。

書籍:女の子は本当にピンクが好きなのか

たとえば、『女の子は本当にピンクが好きなのか』は、国を越えて多くの女の子がピンク色を好むのはどういうわけなのか、私の素朴な疑問が発端です。カルチャーから政治まで、国内外のピンクと女の子について考察しています。

自分の本を書いているときは、調べなくてはならないことも多くて、「これは本当に本になるのだろうか」と五里霧中で書き進めているような状態です。一方、翻訳は自分の知らないことが書かれているのでとても勉強になっておもしろい。英文をいかに適切な日本語に訳すか、謎の文章を解読するような、パズルを解くような楽しさもあります。

でも、自分が翻訳者になるとは夢にも思っていませんでした。最初の翻訳本『ギークマム』は英文を読んですごくおもしろくて。コミック、SF、サイエンスなどのテクノロジーや空想の世界を愛する「ギーク(意味:卓越した知識があること・人)」な母親が、身近な素材で子どもと楽しめる工作や実験、料理などが紹介されている本で、日本で紹介したいと思ったんです。それで、「誰か翻訳してくれませんか?」とツイートしたら、プロの翻訳者の方が「一緒にやりましょう」と提案してくださって、日本語への翻訳が実現しました。

自分を高める競争とは?

多くの人を勇気づける
15歳の科学者ギタンジャリさんの本

9月には私が翻訳を担当した『ギタンジャリ・ラオ STEMで未来は変えられる』が上梓されます。STEMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の4領域の頭文字をとったもの。これからの時代、STEM知識は基礎教育として備えるのは必須とされています。

ギタンジャリ・ラオ STEMで未来は変えられる

著者のギタンジャリ・ラオさんは、2020年にタイム誌初の「キッド・オブ・ザ・イヤー(今年の子ども)」に選ばれた現在15歳の科学者です。「科学を使って人を助けたい」という思いがあり、そのために行動し、さまざまな発明をしています。といっても、研究一筋というわけでもなくて、ある意味普通の部分をたくさん持っている女の子です。開発に必要なコミットメントや挑戦し続ける力は、3歳から10歳まで通ったアメリカ国内の公文式教室で培ったそうです。

普通は「困っている人を助けたい」と考えたとき、真っ先に思いつくのはボランティア活動だと思うのですが、彼女はそれだけではなく、「いじめ防止アプリ」など、デバイスをつくろうと考えた。そこが彼女のすごいところです。さらに、そう思いついても、「自分のような子どもがそんなものつくれるはずがない」となるのが普通です。しかし彼女は「人の助けを借りれば子どもでもできる。私でも世界を救える」と信じて行動している。それがまたすごいと思います。

そして本書の優れた点は、単に自分の武勇伝で終わっているのではなく、「私はできたし、あなたもできる」と、読者をイノベーション――彼女は「問題を解決するために、新しい何かを、作り上げたり、さらによくしたり、学習したりするプロセス」と定義していますが、そこに巻き込んでいくような構成になっていることです。

人のために何かを作りたいけれどどこから始めればいいのかわからない、何を勉強すればいいのかわからないということに対して、「この段取りでやればできる」とノウハウを細かく紹介しています。読み進めていくうちに「自分でもできるかも」という気持ちにさせてくれる、とても勇気づけられる内容です。

私は、人を蹴落とす意味を持つ「競争すること」が苦手でしたが、彼女の本を読み「自分を高める競争」があると知りました。彼女の競争に向かうスタンスに共感し、こういう競争ならアリだなと考えが広がりました。

科学コンテストで選ばれた子ども同士が、勝とうが負けようがそこで仲間になってお互いを高めていることにも驚きました。「今の子たちは、こんなおもしろそうなことをやっているんだな」と、私も高校時代に戻ってコンテストに出たくなったほどです。

自分のペースで進める公文式学習にはまる

幼稚園の頃から一人で図書館へ
校門前で受け取った公文のチラシが運命を変える

ギタンジャリさんは、本当にまっすぐに自分の道を進んでいて、すてきだなと思います。私は行き当たりばったりですが…(苦笑)。わが家はギタンジャリさんのご家庭のように教育熱心でもなく、親から読み聞かせしてもらった記憶もないのですが、3歳くらいから周りの大人を捕まえては「この字は何?」と聞いたりしていたそうです。自宅にはあまり本はなく、幼稚園くらいからひとりで近所の図書館に通っていました。母はふたりいた弟の世話で忙しくて、私はたいていひとりで遊んでいたんです。

母によると、幼稚園時代の私は落語の本を好んで借りていたそうです。児童書というより、あらゆる本に触れていた記憶があります。小学生になると「風刺・ユーモア」の書棚が好きでよく借りていました。

堀越 英美さん

習い事もしたかったのですが「お金がないからダメ」と言われて断念していました。ところが小2のとき、学校の校門前で公文のチラシをもらって運命が変わりました。月謝が比較的安く、「この金額ならいいでしょう」と母に交渉して、公文に通えるようになりました。勉強への意識が高かったわけでもなく、公文もそれまで知らなかったのですが、とにかく習い事をしたかったんです。

通い出したらおおいにハマってしまって。やればやるほど上のレベルに進める、経験値が積み上がっていくというゲーム的な要素があったことや、自分のペースで進められることが性に合っていたのだと思います。

じつは私は学校の授業が苦手でした。先生の話をずっと聞かないといけないからです。ですから、人の話を聞いたり、強制的にやらされたり、長時間拘束されたり、という塾だったら続かなかったと思います。高3のとき大学受験の予備校に通ったのですが、やはり退屈ですぐにやめてしまいました。

公文では最初は算数を、直後に国語も始めました。英語もやりたかったのですが、小4からと言われていたので、それまでは児童向けの英語入門書でがまんし、小4になると始めました。そうなると、この3教科は学校でたいして勉強しなくても、できるようになります。社会や理科は頑張らないとなりませんでしたが、公文のお陰で勉強への苦手意識を持たずに済んだので、その他の勉強もスムーズに取り組めました。

後編を読む

関連リンク

堀越英美の仕事(Tumblr)『ギタンジャリ・ラオ STEMで未来は変えられる』詳細はこちらくもん出版


堀越 英美さん   

後編のインタビューから

-難しいことでも着実に続けていけばなんとかなる、そう思えるのは公文のおかげ
-自分がおもしろいと思ったことを深掘りすれば、その先で仕事に巡り会える
-世の中のお母さんがハッピーになれば社会全体の幸福度がアップする

後編を読む

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