高校時代から「大学は理学部に進み、地球のことを勉強しよう」と決めていた
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母は文学少女だったみたいです。今も短歌を教室で教えています。自宅には科学関係以外にもたくさんの本がありましたが、「本を読みなさい」と言われたことはありません。ただ、母は子どもの頃から移動文庫や図書館によく連れていってくれました。「これを借りなさい」ではなく、「何か借りたら?」と言うのです。そういう場に行けば、何かしら「これ面白そう」という本が子どもでも見つけられるものです。
私は3人兄弟の真ん中ですが、そんな両親の特徴を特に受け継いだのかもしれません。よく読んでいたのは、ジュール・ベルヌのSFです。子どもには分厚かったのですが、分厚いのを読むのがかっこいいなと思っていました。シャーロックホームズやルパンシリーズなどもよく読みました。
中学生のときに受験して、国立の中高一貫校に進学しました。小学6年生のとき、母の知り合いのお子さんがそこの学校に行っていると聞いてきたのがきっかけです。それまでそんな中学があるなんて知らなかったので、特別な中学に行くということが「かっこいいな」と感じて受験することに決めました。
高校に入った頃には、「大学は理学部に進んで地球のことを勉強しよう」と決めていました。小さいころから地球や宇宙への興味を持ち続けていたことと、野外に出て調査するというフィールドワークへの憧れがあったからです。天文学や宇宙物理学は数学だけの世界であるのに対し、地球惑星物理学は物を対象にする学問で、数学だけでなく興味のあるフィールドワークも行います。結局、地球惑星物理を学べる地球科学科に進みました。夢は研究者だったので、当時から大学院まで行こうと考えていました。希望どおり東京大学の大学院に進み、博士号を取得してからは富山大学の教員として就職。順調な研究者生活をスタートしました。
私の専門は「地磁気」です。方位磁石が必ず北を向くことからわかるように、地球は磁場を発生しています。この磁場を「地磁気」といいます。地磁気は、地球の内部にあるドロドロに溶けた鉄の「外核」が、自転の方向に動いているため生じるもので、地磁気を測ると、地球内部の活動の様子や、地球がどのように進化してきたがわかるのです。
地磁気は変化を繰り返していて、その様子は岩石や地層となって記録されています。例えば10億年前にできた岩石を取ってきて、それがどんな磁石になっているかを調べると、10億年前の地磁気の方向や強さがわかります。
たとえば、最近話題となった「チバニアン」も、77万年前の地磁気の方向を崖の地層が記録していることからわかったものです。この地層には、地球の磁場が最後に逆転した形跡があり、地球の歴史を表す地質年代の区切りの目印とされています。地層がどんな磁石になっているかを細かく調べると、地磁気がひっくり返った形跡がわかるのです。
私はそういう研究をずっとしていました。オーストラリアや南アフリカなど海外にもよく行き、約35億年前の岩石を採取したりして、地球内部の進化の様子を調べていました。