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Vol.043 2017.04.14

労働経済学者 浦坂純子先生

<後編>

積み重ねることで
見える景色は変わってくる
足元の一歩一歩を登って道を開こう

労働経済学者

浦坂 純子 (うらさか じゅんこ)

大阪府生まれ。大阪市立大学経済学部卒業後、同大学院経済学研究科博士課程修了。松山大学経済学部専任講師を経て、1998年より同志社大学文学部社会学科で専任講師として勤務。同大社会学部准教授を経て現在同大社会学部教授。著書に『なぜ「大学は出ておきなさい」と言われるのか-キャリアにつながる学び方-』(ちくまプリマー新書)、『あなたのキャリアのつくり方-NPOを手がかりに-』(ちくまプリマー新書)など。

労働経済学がご専門で雇用や労働にかかわるテーマを研究されている浦坂純子先生。中でも大学入学前から就職後までの一連のキャリアの流れに着目されています。今までの先生のキャリアや、将来につながる学びを獲得するために必要なことなどをうかがいました。

目次

大きな挫折感から新たな目標を立て、研究者の道へ

浦坂純子先生

大学1年生のときは授業には一切出ず、医学部を目指して予備校通い。幸い予備校では特待生になれたので授業料が免除されたこともあり、親も応援してくれました。ところが2回目のチャレンジでも医学部に合格できず、結局経済学部へ戻ることに決めました。

1年間授業を受けていないので、2年生が始まった時点で取得単位はゼロ。当然留年するだろうと思っていたら、残りの3年間で単位を取得できれば卒業できることがわかり、「それなら3年間で卒業しよう!」という新たな目標ができました。医者になるという目標を失い、人生が終わったかのように落ち込んでいた私は、新たな目標ができて気持ちを前に向けることができました。

語学の単位を取っていないと進級できないことがわかっていたので、大学に戻って最初の1年間はとにかく語学を必死に勉強しました。その後は専門科目を学ばなければなりませんが、同級生より1年遅れている私は、いろいろな授業を浴びるように受けることになり、徐々に「経済学も面白い」と思えるようになりました。

3年生が終わる頃になると、一緒に入学した同級生は就職活動を始めました。私自身は真面目に大学で勉強をするようになってから2年も経っていなかったので、もう少し力をつけてから社会に出たいと思い、大学院に進むことにしました。

ただ、この段階ではまだ「研究者になる」と、将来の道を明確に描いていたわけではありませんでした。まずは大学院で修士論文をきちんと書こう、それができれば次にいけるかなという思いで、目の前のことをしっかりやることにしました。修士論文のテーマは好きだった計量経済史にしました。

計量経済史の分野で研究を続けるつもりでしたが、博士課程2年目のとき、雇用や労働に関する分野の共同研究に誘われました。これまで自分が関わったことのない分野でしたから、不安もありましたが引き受けました。それが結果的に今の専門になったわけですから、人生はわからないですね。

キャリアを考える上で大切な「計画された偶発性」とは?

歩んできた道を「計画された偶発性」として納得する

浦坂純子先生

ひとつの専門をずっと掘り下げるのはすばらしいことですが、私の場合はその時々に直面したことに一生懸命取り組んできました。相手は自分に何かを期待して声をかけてくれるので、それに応えようと頑張るんですね。そうやって与えられたことに取り組んでいると、最初は全然違うところを掘っているようでも根っこがつながっていたりすることがあって、それが面白い。入口は与えられたものだとしても、そこから自分で調べていくうちに、面白さを感じてさらに学ぶ意欲が湧き、手応えを感じるようになる――それが、学びだと思うのです。

そんな経験をくり返すうち、私自身も「まずはやってみて、それをこれまでの自分とどう結びつけられるか」と考えるようになりました。思うようにいかなかったことを、「これでよかった」と納得できるようにする力、と言えるでしょうか。これはスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が「計画された偶発性」として提唱するキャリア理論の私なりの解釈ですが、そうやって「思い通りにならなかった」切ない気持ちを抱えながらも、今の道に納得できるようにすることは、どんなキャリアを築くにしても励みになる考え方だと思います。

私の場合は、留年せずに済んだこと、大学院に合格したこと、大学に就職できたことなど、「自分はできるかも」という小さな成功体験を少しずつ積み重ねていったことで、過去の失敗も学びだと思えるようになりました。

そんな経験からも、学生には「やってみなければわからないのだから、とにかくやってみよう」という思いで接しています。目の前に立ちはだかった課題に対して「こんな山、登れない」と立ち止まるのではなく、足元の一歩を踏み出してみる。「視点が上がると見え方が変わる」とはよく言いますが、それは山を登って高いところに行ってみないことにはわかりません。

浦坂先生のこれからの目標とは?

「やりたいこと」と「大事なこと」の
バランスをとるため柔軟に考える力を身につけよう

浦坂純子先生

今「働き方改革」が声高に叫ばれていますが、自分が置かれている現状でどう働いていくか、一人ひとりが主体的に考えることが問われていると思います。

グローバル人材として、子育ても介護もしながら働き続け、地域にも貢献し……と、何もかもこなすのは無理な話。「自分には何が大事なのか」、「その大事なことを実現できる場はどういう場なのか」を、柔軟に考えるとよいのではないでしょうか。「やりたいこと」と「大事なこと」が相容れない場合は、矛盾させないよう自分が働きかけて場を変える努力も必要かもしれません。社会に出る前に、こうした「考える力」を身につけてもらいたいですね。

私自身についていえば、大学教授としてのキャリアを考えると今がちょうど中間点くらいです。この仕事では、これからの社会を担う若者たちと一緒に学び、その成果を発表したり発言したりする機会があります。たとえば、「数学学習と大学教育・所得・昇進」をテーマにした共同研究は広く社会に知っていただきましたし、著書を通じて研究結果を若者にわかりやすく発信することも心がけてきました。

このように一般の人が働く中で疑問に思うことに示唆を与えられるような研究を、これからも学生と一緒に深めていけたらと思っています。そうやって自分に与えられた役割をしっかり果たしていきたいと思っています。

前編を読む

関連リンク浦坂純子先生研究室サイト


浦坂純子先生 

前編のインタビューから

-浦坂先生の研究テーマとは?
-浦坂先生の子ども時代
-浦坂先生が考える公文式学習法の魅力とは?

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