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KUMONグループの活動  2014/07/01更新

Vol.043 知的障害者のための“大学”-くれおカレッジ  

もう少しだけゆっくりと、
時間をかけて、
社会人になる準備をしよう
知的障害者のための新たな「学びの場」、くれおカレッジ

最近は、知的障害のない発達障害児が大学へ進学することもめずらしくなくなってきました。しかし、今回ご紹介するのは、2014年4月に開校したばかりの、知的障害がある人たちのための「大学のような学びの場」。滋賀県大津市からのレポートです。

「遠路はるばる、ごくろうさまです!」


くれおカレッジのシンボルマーク。
「CREO」はラテン語で「創造」の意

くれおカレッジのサロン。
4年後には、ここに40人の学生さんたちの笑顔が集う

琵琶湖にほど近いJR瀬田駅から歩いて約5分、5階建てのビルの4階と5階にくれおカレッジはあります。カレッジの入口ドアを開けると、「遠路はるばる、ごくろうさまです!」という女性の声に迎えられました。女子職員の方なのかなとうかがってみると、その声の主はカレッジの女子学生さんだったのです。何とも温かな出迎えの言葉に、ここに集う、学びを提供する側の人たち、そして学ぶ側の学生さんたちの思いが詰まっているようでした。

日本国内でもようやく十数年前から、知的障害のない発達障害児たちが大学や専門学校へ進学するようになり、そのサポート体制を組む学校が増えてきました。けれども、今回ご紹介するくれおカレッジはまったく新しい構想のもとに生まれた、知的障害者のための「大学のような学びの場」です。具体的には、1・2年生で自立訓練(生活訓練)、3・4年生で就労移行支援と計4年をかけ、基礎学力を含む技能やメンタル面を磨き一般企業などへの就労をめざします。1学年の定員は10人。現在は1年生のみで10人ですが、4年後には40人が学ぶようになります。

障害者の就労には2つの大きな課題があるといわれています。1つは就労そのものが高いハードルであること。もう1つは、就労しても離職してしまう人が少なくないことです。その実情は関連リンクからご覧いただくとして、くれおカレッジは、この2つの大きな課題に挑戦する、新たな学びの場でもあるのです。

もっと時間をかけて学んだり、将来のことを考えたりする時間がほしい


くれおカレッジの設立者、
中崎さん(共生シンフォニー常務理事)

くれおカレッジの設立・運営母体は「共生シンフォニー」という社会福祉法人です。共生シンフォニーは、食料品やクッキーなどの製造や販売事業のほか、障害者のためのさまざまな施設や事業所を運営しており、数多くの障害者を雇い入れています。くれおカレッジの構想はそのなかから生まれてきたといいます。ちなみに、「くれお」とはラテン語で「創造」という意味。元校長先生であった笹川さん(後出)が名付け親です。共生シンフォニーの常務理事であり、くれおカレッジの設立者でもある中崎ひとみさんは、こう話してくださいます。

「クッキーの製造事業だけでも障害がある方たちにたくさん働いていただいていますが、特別支援学校を卒業してすぐに働きはじめる子たちには、何か落ち着かない様子だったり、コミュニケーションがうまくできなかったり、冷蔵庫と冷凍庫の表示の区別がつかなかったりするような子が少なくありません。残念ながら辞めてしまう子もいます。けれど、1~2年すればコミュニケーションもできはじめ、冷蔵庫と冷凍庫の表示もわかるようになります。さらに3~4年たつと、落ち着いて仕事ができるようになるのです。そうであれば、特別支援学校を卒業してすぐに就労を急ぐよりは、3~4年の年月をかけて、社会に出て大丈夫なだけの技能や学力を身に付ける、その子自身が自分の得意な面や特性を活かせるよう、就職先や人生をじっくり考える時間を創ったほうがよいのではと、ずっと思い続けていました」。

夢をもって学生たちをサポートしていきたい


橋本さん

永田さん

笹川さん(校長先生)

中崎さんがそう思いはじめてから10年近くたった昨年の春、大津市の支援もあり、カレッジ構想が現実のものとなり、設立準備に入りました。「嬉しかったですね。このカレッジでもっと時間をかけていろんなことを学ぶことができ、より多くの障害者が就労できるようになるはずです。途中で離職する人も減ると思います。しかし、一番困ったのは、カレッジのメインカリキュラム。いろいろ思い悩みました。パソコンに教育ソフトを入れて、各自にさせてはどうだろうかと考えたりもしましたが、なにかピンとこないのです。これで、一人ひとりがきちんと学べるのだろうか、就労につながる姿勢や力をつけられるのだろうかと…」。

そんな中崎さんが出会ったのが、千葉県成田市にある就労移行支援事業所「就職するなら明朗アカデミー」でした。明朗アカデミーは支援プログラムのメインを公文式学習に据え、就労実績を大きく向上させています。ここを見学した中崎さんは、「これだ!」と得心したといいます。「伯母が公文の教室の先生だったので、私も公文式を学習したことがあり、このカレッジには公文もいいのかなという考えが頭の片すみにはありました。しかし、明朗アカデミーを見学して、公文式が基礎学力をつけるだけでなく、就労するためのいくつもの力を育てることがわかり、これをメインカリキュラムにしようと決めたのです」

そして今年4月、くれおカレッジが開校。公文式学習もスタートしました。公文のほか、パソコン・英会話・SST*・音楽・演劇・書道などなど多彩な授業が用意されていますが、月曜から金曜の午前中は公文式算数と国語の学習です(水曜のみ公文は午後)。カレッジの職員であり、公文式の指導を担当されているみなさんに、その様子をうかがってみました。
*SST:ソーシャル・スキル・トレーニングの略、社会生活技能訓練

まず、橋本さんです。「公文も4月から始まったばかりですが、学生たちは、達成感がとても大きいようですね。公文が始まる5分前には全員が着席していて、きょうもやるぞ!という空気になっています。集中して問題を解き、100点に仕上げ、ほめられるという毎日のくり返しによる達成感でしょうね。この達成感は、働くための自信につながると思います」。

二人目は学生さんたちの相談役でもある永田さん。「やはり、毎日これだけ集中して学習するという体験がとても大切だと思います。また、教材を採点のためにきちんと揃えて提出する、ミスを訂正し100点に仕上げるといったことも、書類を揃えて提出する、仕事を最後までやり通すことにつながるので、こういう日々の積み重ねは就労のために大きな力になると思います」。

三人目はくれおカレッジの校長先生、笹川さん。以前は公立高校の校長先生だったそうです。「はじめのうちは採点待ちや訂正の手順にとまどったり、混乱している学生もいましたが、今はすっかり定着してきましたね。じつは、メインカリキュラムを公文にすると聞いて、近くの公文式教室を見学させてもらったことがあります。これなら、学力に大きな開きがある、うちの学生たちにも合っているなと思いました。対人関係やメンタル面など、まだまだ伸びてほしいところはたくさんあるので、そんなところも、公文の学習を通して支援していきたいと思っています」。

2014年5月後半のカリキュラム

ふたたび、中崎さんです。「笹川さんはもともと先生ですが、橋本さんや永田さんもだんだん先生っぽくなってきたのが嬉しいです。私はいつも、“夢を持って学生さんたちを育成してほしい”とカレッジの職員に話していますが、言葉を聞くだけではなかなか実感できないことだと思います。それが、この4月から公文はもとより、いろいろな授業を自ら担当することで、学生さんたちの伸びに手応えを感じ、ようやくそのことが自分のなかで形になってきたのでは、と思うのです。学生さんだけでなく、私たちも成長していきながら、くれおカレッジを障害者のための真の学びの場にしていきたいですね」。

関連リンク
くれおカレッジ
共生シンフォニー
障害者就労の現状(厚生労働者)

bg_bnr_43 社会的自立をめざす方々に学ぶ喜び、成長する喜びを。
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