KUMONトピックス
Feature Report - 進化し続ける活動
カテゴリーを表示

KUMONグループの活動  2015/01/13更新

Vol.070 就労支援としてのKUMON-愛光園  

愛光園利用者さんたちと
われわれスタッフ
ともに“就労”という
明確な目標をもった同志です」
「働きたい」という意欲と自己肯定感が未来を拓く

障害のある人たちの就労の課題は、大きくふたつあると言われています。ひとつは、就労そのもののハードルが高いこと。もうひとつは、就労しても離職してしまう人が多いことです。今回ご紹介する就職トレーニングセンター愛光園(就労移行支援事業所)は、このふたつの克服をめざしてひたむきにチャレンジしています。

「作業中心の就労支援プログラムで利用者の方全員が就労できるのだろうか…」


午前中の公文式学習は「よろしくお願いします!」
という元気なあいさつからスタート

愛知県にある社会福祉法人愛光園は老人介護、障害児・者などの支援施設のほか、就労移行支援事業所である就職トレーニングセンター(以下「就トレ愛光園」)も運営しています。JR東海道本線共和駅から徒歩7~8分、なだらかな丘に広がる住宅地の一角に就トレ愛光園はあります。清掃が行き届いた建物や車がきちっと並んだ駐車場のたたずまい、そして利用者の方たちとスタッフのみなさんの笑顔に、就労をめざす真摯な姿勢を感じずにはいられませんでした。

就トレ愛光園は2011年5月に開設された就労移行支援事業所(以下「支援事業所」)。一日平均18名程の方が利用されています。就トレ愛光園がほかの多くの支援事業所と異なるのは、その支援プログラムです。月~金の午前中は公文式学習(算数・数学と国語)、午後はSST、JST、WRAP(いずれも下記参照)といったコミュニケーションを大切にしたプログラムになっています。製品の組み立て・封入といった作業の風景は、就トレ愛光園では見ることができません。けれども、現在の支援プログラムに行きつくまでには紆余曲折があったのです。

2006年の障害者自立支援法(2012年改正、2013年障害者総合支援法に)の施行に伴い、それまでの「授産施設」「小規模作業所」(通常の就労がむずかしい障害者のための働く場)のほとんどは、就労の機会を提供する「就労継続支援A型(雇用)・B型(非雇用)」、あるいは知識や能力の向上を図る「就労移行支援」の施設へと順次移行していきました。しかし、多くの施設での就労支援プログラムは、従来と同様の作業中心の内容を踏襲していました。それは、就トレ愛光園も例外ではありませんでした。

就トレ愛光園のセンター長、青山さんはこうふり返ります。「支援事業所としてスタートし、作業中心の支援プログラムでそこそこの実績はあがっていました。しかし、自問自答の毎日でした。たとえば、蛇口の部品の組み立てを企業さんから請け負い、利用者の方たちの支援プログラムの一貫としてするのですが、器用な人とそうでない人の作業効率は目に見えて違います。また、請け負った仕事ですから作業完了が前提となり、利用者の方で病気で休む人がいると、いきおい器用な人の負担が大きくなり、われわれスタッフも手伝うことになります。そんな光景を見るにつけ、このままでよいのか…。利用者の方全員が就労できるようになるのだろうか…。悩む日が続きました」。

*SST
「Social Skills Training」。「社会生活技能訓練」または「生活技能訓練」などと呼ばれる。社会生活の上でさまざまな困難を抱えるたくさんの人たちのために、対人関係を中心とする社会生活技能のほか、日常生活技能や自己対処能力を高める方法が開発され、現在では、医療機関や各種の社会復帰施設、作業所、矯正施設、学校、職場などさまざまな施設や場面で活用されている。カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部精神科、ロバート・リバーマン教授が考案。

*JST
「Job related Skills Training」、「(発達障害者のための)職場対人技能トレーニング」。職場で一般的に想定される対人コミュニケーション課題を設定し、グループワークのなかで、発達障害者自身によるロールプレイや意見交換を行いながら、職場で必要となる対人コミュニケーションのスキルを学ぶ。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構、障害者職業総合センターで開発。

*WRAP
「Wellness Recovery Action Plan」、「元気行動回復プラン」。元気を回復し、元気であり続けるためのツール。アメリカの精神面での困難を経験する人たちのグループによって考案。

 

“集中して学べる”ということに、利用者さん自身が喜びを感じる


就トレ愛光園 青山センター長
 

就トレ愛光園 辻主任

そんなある日、青山さんは『働く広場』(2012年4月号 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構発行)という障害者雇用の月刊情報誌で「読み書き計算の学習を支援プログラムの中心に据えて、高い就労実績をあげている支援施設がある」ことを知りました。千葉県成田市の明朗アカデミー(就労移行支援事業所、巻末のリンクからご参照ください)です。

「その学習が公文式でした。正直エッ?という気持ちでしたが、詳しい話を聞いているうちに、これは自分が求めているものに近いかもしれないと感じました。さっそくスタッフ2人と明朗アカデミーを見学し、利用者の方たちの凛とした学ぶ姿勢に驚きました。これなら就労にもつながるはずだとうなずけました。すぐに内部でも話し合い、公文式の導入を決めたのが2年ほど前です。もちろん、“学習でよいのか?”“もっと実践的な支援プログラムのほうが…”という意見のスタッフが当時はいました。また、新入のスタッフも同じように最初は疑問を持ちます。しかし、その答えは利用者の方たちの笑顔でわかる気がするのです」(青山さん)。

就トレ愛光園の主任、辻さんにうかがってみました。辻さんは公文式学習の指導責任者でもあります。「青山さんから、作業中心から学習中心の支援プログラムにしたいという話を聞いたとき、大丈夫かな?とすごく心配になりました。それは明朗アカデミーを見学して、青山さんの意図は理解できたのですが、こんどは愛光園をそこまでのレベルにできるだろうかと不安になったからです。実際、導入してみると、少ない数でしたが利用者の方たちから“なぜ勉強なのか?”“仕事をしたいのに…”といった声もでて、ざわついた感のある状態でのスタートだったと記憶しています」。

ところが、公文式を導入して半年くらいすると、静かで落ち着いた学習状態に変化していったといいます。「勉強が苦手あるいは集中して作業を続けにくい利用者さんには、学習するということ自体がむずかしいのではないかと思っていました。たしかに、はじめのころは学習をしたがらない方もいましたが、各利用者さんの学力に合った教材を提供できるので集中できるんです。その集中して学ぶ姿は、われわれスタッフにも新鮮でしたが、なによりご本人がうれしいのではないかと感じました。“きちんとできて、すごいですね”と言葉をかけたときの笑顔が輝いていますから」(辻さん)。

「認めて・ほめると、心にゆとりができ、できないことができるようになります」

「公文式を導入して、いろいろな気づきがありました。変化もたくさんありました」と青山さんは話してくださいます。「午前中の公文式学習が良い状態になると、午後のSST、JST、WRAP(いずれも前出)といったコミュニケーションを大切にしたプログラムがスムーズにできるようになりましたね。午前中が作業中心だったころにはなかったことです。考えるに、午前中の公文式学習で自分に向き合い、できたことを認められ・ほめられて自己肯定感が生まれる。それがあるから、午後にほかの利用者の方やわれわれスタッフとコミュニケーションする、つまり他者と向き合うこともうまくいくのだと思います。このことは就労にはとても大切ですね」。

また、辻さんはこんなことも話してくださいました。「ある利用者さんの支援を考えるとき、その方がどんなことができて、どんな問題をかかえ、何を求めているかといった評価をします。アセスメントと言います。作業中心のときもアセスメントをしていましたが、公文式学習でも同じようにできることがわかりました。それも、作業中心のころよりも質の高いアセスメントができています。作業中心のころは、どうしても作業の完了を先に考えるので、お一人おひとりの利用者の方をじっくり見る余裕が足りなかったと思います。公文式の時間では自分に合った内容を学習するので、お一人おひとりの状態や得意な面も不得意な面もよく見えるようになりました。それも、できることをしてほめられた状態で見るので、利用者の方もうれしいはずです」。

そして、青山さんと辻さんはこう口をそろえます。「認めて・ほめると、心にゆとりができ、できないことができるようになるんです」と。たとえば、最近こんなことがあったそうです。就労実習の一貫として、企業の面接会にある利用者さんと参加したときのことです。その利用者さんは就トレ愛光園に来た1年ほど前は引っ込み思案で、いつも自信がなそうな表情、声もか細い印象。その人が、自分の名前を呼ばれると、「ハイ!」と元気よく返事、立ったあとすぐに自然にイスをしまう、姿勢よく大きな声で自分の名前を言う。この一連の動作がスムーズにできたとのこと。「それができた要因はたくさんあるでしょうが、やはり公文式学習で培った「職場を意識した学習作法の習慣」と自己肯定感がいちばん大きいと思います」(青山さん)。

就トレ愛光園の午後の支援プログラム(SST、JST、WRAP)では、さまざまなグループワークをしますが、大切にしているのは「利用者相互のいいとこさがし」だそうです。スタッフからいいところを言われるのはうれしいのですが、隣りにいる利用者さんから言われると、うれしさはさらに大きいといいます。こんな取り組みも自己肯定感の醸成にはとても効果があるのでしょう。

就労できる能力とは、“働きたい”という意欲、そして“自己肯定感”

青山さんと辻さんのコメントのなかに「自己肯定感」という言葉が何度もでてくるので、なぜでしょうか?とうかがってみると、こんな答えが返ってきました。「障害のある方たちは、就トレ愛光園の利用者の方たちを見ているだけでも、これまでの成育環境のなかで不得意な面やできなかったことを指摘されることが多かったようで、自信がなかったり、何事にも遠慮がちという傾向があるようです。けれども、その状態では、その方の得意なところや本来もっている能力がわからないと思うのです。自己肯定感があるからこそ、もてる能力を発揮できるのだと思います」(辻さん)

青山さんがこう続けます。「就労する・できるためのスキルや能力はいろいろあると思います。障害があっても特定のスキルや能力にとても長けている人もいます。でも、その能力を最大限に発揮できるのも、自己肯定感があればこそだと思います。人とのコミュニケーションも、自己肯定感があるのとないのとでは大きく違うと思います。自分のよりどころをしっかりもっているからこそ、人とかかわりあうことができ、少々のことではへこたれないのではないでしょうか。とすれば、就労できる能力や長く働きつづけられる能力というのは、“働きたい”という意欲、そして自分もやればできるのだ、という自信に裏打ちされた自己肯定感だと思うのです。もともと“勉強”が苦手であった彼らが、公文式に出会い、“勉強”ではなく“自ら学ぶ”ということに自信をもてるようになったのは非常に大きいと思いますね」。

就労が決まり、就トレ愛光園を卒業する利用者の方たちは、異口同音にこんなことを話されるそうです。「愛光園に入ったばかりのころは、公文をやるのがつらかった。でも、やっているうちに楽しくなって、公文があるからここに通っていたのかもしれない」「自分でもこんなに集中してできることがあるとは思わなかった」「復習はめんどうだけど、問題を解く時間が速くなるし、ミスも減るので力がついた気がする」「ここを卒業するいまは、公文をやっててよかったと思う」。利用者の方たちも、しっかりとその効果を体感しているようです。

「公文を導入して約2年がたち、就労実績も順調にアップしてきています。しかし、まだまだ課題や問題は山積状態です。けれども、利用者のみなさんとわれわれスタッフは、ともに“就労”という明確な目標をもった同志です。公文式学習を、利用者の方たちは自分と向き合うための、われわれスタッフは利用者の方と向き合うためのよきツールとして使わせていただき、利用者のみなさん全員が就労できるよう、これからも真摯に、そして懸命に取り組んでいきたいですね」(青山さん)。

関連リンク

bg_bnr_43 社会的自立をめざす方々に学ぶ喜び、成長する喜びを。
就労支援施設
導入目的は施設によって異なりますが、学力の向上と、態度面や生活面の変化は共通です。
詳細をみる

 

 

関連記事

KUMONグループの活動  2015/10/06更新

Vol.106 就労支援としてのKUMON-諫早ワークスサテライト

“社会の役に立てる人” “その職場になくてはならない人” そんな人になってほしいと思っています 就労移行支援事業所、諫早ワークスサテライトでの公文式導入

KUMONグループの活動  2016/10/27更新

Vol.179 就労支援としてのKUMON-
でらいとわーく(後編)

「自分の持っている力に気づき、可能性を知る。 自分にとっての“ちょうどいい”を知り、 働き続ける喜び、幸せを感じる」 その実現のためのサポートをしたい。

KUMONグループの活動  2014/11/18更新

Vol.063 就労支援としてのKUMON-就労支援施設フォーラム

“就労移行支援”や “就労後の定着支援”への 公文式の活用 「第3回就労支援施設フォーラムin品川」より

KUMONグループの活動  2016/10/25更新

Vol.179 就労支援としてのKUMON-
でらいとわーく(前編)

「自分の持っている力に気づき、可能性を知る。 自分にとっての“ちょうどいい”を知り、 働き続ける喜び、幸せを感じる」 その実現のためのサポートをしたい。

KUMONグループの活動  2016/11/29更新

Vol.184 就労支援としてのKUMON-
S&Jパンドラ(前編)

障害のある人を “自信と誇りに満ちた働き手”に プロデュースしたい

バックナンバー

KUMONグループの活動  2019/02/19更新

Vol.295 茅ケ崎市 脳の健康教室

95歳でいきいき暮らす秘訣とは?

KUMONグループの活動  2019/01/29更新

Vol.294 公文式の施設導入――
ひまわり学園真美ケ丘自立訓練校

学習によって生まれた 訓練生の「自信」と職員の「モチベーション」 お互いの「信頼関係」

KUMONグループの活動  2019/01/22更新

Vol.293 持続可能な教育支援と国際貢献

バングラデシュでの取り組みが 首相官邸国際広報映像として 世界各地のCNNで放送!

KUMONグループの活動  2019/01/15更新

Vol.292 公文書写―公文書写教室編

あらゆる世代の方々が それぞれの目標に向かって

KUMONグループの活動  2019/01/11更新

Vol.291 仲間たちとともに60周年
~Honda TV出演~

60周年コラボレーション HondaTV × 公文式

KUMONトピックス カテゴリー別インデックス

記事アクセスランキング

おすすめ記事 Recommended Articles
OB・OGインタビュー
Catch the Dream 夢をかなえる力
NEW
Vol.060 前編
環境省対馬自然保護官事務所
堺真由子さん
遠回りしたとしても 「好き」な気持ちを大切に 一歩を踏み出せば夢は近づく
Vol.059
ジャズヴォーカリスト
古瀬里恵さん
何ごとも続けることが力になる その力が自信となって チャレンジする勇気につながる
Vol.058
コピーライター
佐々木圭一さん
「伝え方」を学べば、  人の心を動かし行動を変えられる。  子どもたちの夢を後押しできる。
Vol.057
イラストレーター ももろさん
成長していこうと思う限り 学びに終わりはなく、 人生を拓くきっかけになる
スペシャルインタビュー
Academic Milestones 学びを究める力
NEW
Vol.052 後編
國學院大學文学部哲学科教授
藤澤紫先生
江戸文化に「遊び心」があふれていたように 学びの中にも「遊び心」を見つけていこう
Vol.052 前編
國學院大學文学部哲学科教授
藤澤紫先生
江戸文化に「遊び心」があふれていたように 学びの中にも「遊び心」を見つけていこう
Vol.051
跡見学園女子大学 学長
笠原 清志先生
心を開き、異質なものへの 素直な興味を持ち続けよう
Vol.050
大阪市立大学大学院 経営学研究科 教授
山田 仁一郎先生
「学問」は先人から受け取った 人類の「知恵の蓄積」 未来につなぐため、学び続けよう
KUMON now! フェイスブックページ
KUMON now!に「いいね」して、子育てに役立つ情報を受け取ろう!

What’s
KUMON?

これまでも。これからも。
KUMONはずっと
「学ぶ集団」であり続けます。

KUMONは、50を超える国と地域に、「学び」を提供しています。

乳幼児から高齢者まで。
生涯を通じて学ぶ喜びをお届けします。

Baby Kumon / 書籍・知育玩具 / 学校・施設・企業への導入 /
認知症の予防と維持・改善 / 書写 /
日本語/ フランス語/ ドイツ語

公文教育研究会
代表取締役社長
池上 秀徳

指導者も社員も
「子どもから学ぶ」。
KUMONはいつも
学び続ける集団です。

私たちが大切にしている、創始者の
ことばがあります。

学ぶ力は、やがて生きる力へ。
KUMONは一組の親子の
絆から生まれました。

KUMONは、公文式学習を通して、
「生きる道を自らの力で切り拓いて
いける健全で有能な人材」の育成を
目指しています。

公文式教材のひみつを
わかりやすくご紹介。

公文式になくてはならない
指導者の役割とは。

私たちには「夢」があります。教育を通じて世界平和に貢献することです。

時を越えて。国境を越えて。
すべては、一人ひとりのために。

日本の子どもたちから
世界中の人たちへ。

    • KUMONグループ会社一覧
    • さまざまな場で「個人別・
      ちょうどの学習」を実践。
      世界各地に広がっています。
    • お問い合わせ・資料請求
      KUMONへのご意見、ご質問などを
      お寄せください。
    • お問い合わせ
    • ロゴに込められた想い
    • この、KUMONのロゴ。どこかで見かけたことありませんか?
      このロゴには私たちの想いがたくさんつまっています。