スペシャルインタビュー
Academic Milestones - 学びを究める力

2020/02/28更新

Vol.060

合同会社MAZDA Incredible Lab CEO
松田孝さん  後編

プログラミングをきっかけに
未来社会に向けて
「新しい学び」を獲得していこう

松田 孝 (まつだ たかし)

1959年東京都生まれ。東京学芸大学卒。上越教育大学大学院修士課程修了。東京都公立小学校教諭、東京都狛江市教育委員会主任指導主事(指導室長)をはじめ、東京都の小学校校長を3校歴任。2019年4月より合同会社MAZDA Incredible Labを立ち上げ、代表に就任。総務省地域情報化アドバイザー、金沢市プログラミング教育ディレクター、小金井市教育CIO補佐官も務める。著書に『学校を変えた最強のプログラミング教育』(くもん出版より近日発売予定)。

東京都の小学校教諭を振り出しに、教育委員会指導主事、小学校校長などを歴任されてきた松田孝さん。校長として最後の赴任校となった小金井市立前原小学校では、ICT(情報通信技術)の活用やプログラミング教育を先駆けて実施し、注目を集めました。現在は3つの公的な肩書きを持つほか、自ら会社をつくり、民間企業と連携してICT教育の普及に取り組まれています。新たなチャレンジを続ける松田さんが考える「学び」、そして「教育」とは? プログラミング教育によって子どもたちはどう変わるのか、教員の道に進まれた理由などについてもうかがいました。

大学時代の恩師に「稚拙でも自分の言葉で話しなさい」と諭される

合同会社MAZDA Incredible Lab 松田孝先生

私は東京生まれで、高度経済成長期に子ども時代を過ごしました。権威あるものが強かった時代で、こんなに時代が変わるとは想像していませんでした。小、中、高校は地元の公立校で学び、成績はよくありませんでした。できたのは水泳くらいだったかな。

父は教員でした。読書家で、尊敬していましたが、自分も教員になりたいとは思っていませんでした。父から「なれ」と言われたこともありません。昭和8年生まれの母は青森のりんご農家の娘。4人きょうだいの長女ですが、東京の大学で学んでいたという、ちょっとユニークな面があります。私はそんな母のDNAを受け継いでいる気がします。学生時代、ショパンコンクールの審査員を務めた中村紘子さんのインタビューを聞いていた時に、その選考基準が話題になりました。10人の審査員が皆、上手いといえば、それは確かに上手い。でも困る人物がいる。5人が評価して5人が評価しない人物だ、と。それを聞いた時、体(頭?)が「そんな生き方、素敵だな」と勝手に反応したのを今でも覚えています。

両親は私の成績が振るわなくてもとくに何も言わず、私も将来のことは何も考えていませんでした。成績はよくないのに、時間が自由になるという理由で、大学には行きたいと思っていました。北海道に憧れていたので北大を目指しましたが、入学したのは東京学芸大学の初等教育課程。「父も教員だし、まあ、いいか」という感じで、この場に及んでもキャリアについてまったく考えていませんでしたね。

ただ、大学に進んでつくづくよかったと思うのは、恩師の次山信男先生と出会えたことです。すごく厳しい方で、表面的にきれいなことを言っても相手にされず、「稚拙でも自分の言葉で話しなさい」と徹底的に叩き込まれました。

次山先生と出会ったとき、群馬県の小学校長であった、斎藤喜博氏が記した教育界の古典『島小物語』を紹介していただきました。大学を卒業する頃に、その斎藤喜博氏の教材解釈を宇佐美寛氏が批判したことに端を発した「出口論争」が起きました。これは教育界ではよく知られている論争なのですが、そこで宇佐美寛氏に興味が湧き、著書をむさぼり読むようになりました。次山先生に出会い、斎藤喜博氏を知り、宇佐美寛氏には指導主事時代に直接お会いして、何度かお話することもできました。

要所要所で素晴らしい方々との巡り合わせがあり、その過程で、自分の頭で考え、自分で判断することの大切さ、そして世の中は変わっていくのだということを実感するようになりました。そこから自分の主体が確立でき、「責任をもつ」という意識が芽生え、本気で教師という仕事を意識するようになっていったのだと思います。

「教育とは、子どもが「自分自身を好きになる営み」を応援すること

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