スペシャルインタビュー
Academic Milestones - 学びを究める力

2014/05/30更新

Vol.009 地震学者 大木聖子先生  後編

夢中努力に勝る
夢中になれるものを見つけよう

大木 聖子 (おおき さとこ)
北海道大学理学部地球惑星科学科卒業、東京大学大学院理学系研究科にて博士号を取得。国内外での研究員、東京大学地震研究所助教を経て、現在は慶應義塾大学環境情報学部で准教授を務める。著書に『地球の声に耳をすませて』
(くもん出版)など。

高校1年生のときにテレビで阪神・淡路大震災の惨状を見て以来、地震学者を志し、「同じ悲劇をくり返さない」と決意した大木聖子先生。大学で地球科学や防災学などを教える一方、幼稚園や小中学校に赴いての防災教育も精力的に行っています。「夢を叶えた」かに見える大木先生ですが、ご本人曰く、「まだまだ学究の徒の入口です」とのこと。どのように道を選び、学びを突き詰めてきたのでしょうか。また、「教育者」として人を育てる醍醐味についてもうかがいました。

「地球との対話」から「人との対話」へ 価値観が変わった新潟県中越地震

こうして地震学者の道を進みはじめた私ですが、一途に夢を追ってきたと思われる方が多いようです。じつは私のなかではけっこう道草というか紆余曲折があったのです。最初は地震学を究めて人助けをしたいとの思いでしたが、学んでいくうちに、「人」よりも「日本列島の形」が気になり出しました。それからというもの、プレートの動きによって日本列島がどう形成されてきたのか、これからどんな形になっていくのかといったことに興味をもつようになりました。研究を重ねるうち少しずつ成果も得られ、自分のスキルが磨かれている実感がもて、それに喜びを感じていました。

ところが、そういう実感や喜びを打ち砕く出来事が起こりました。2004年10月の新潟県中越地震です。そして2ヵ月後にはスマトラ島沖地震とそれに伴う巨大津波が発生しました。当時私は大学院生。現地で苦しんでいる人たちの様子を見て、「今、目の前で苦しんでいる人たちに対して、私は何もできていない。それなのに何が地震学者だ」と深い自省の念にかられたのです。

ひとつのことを突き詰めていくというのは、とても大事なことだと思います。でも、研究を突き詰めてスキルを磨いてきたのに、地震が起きて死者が出るたびに、ものすごくショックを受けてしまう。この先も地震は起こり続けるわけで、そのたびに私はショックを受けるのか。地震学者なのにそれでいいのか、真剣に自問自答しました。

そして、自分の研究のスキルやレベルアップを求めるより、「あなたの話を聞いていたことで、この命が助かりました」と一生のあいだに一人にでも言われたほうが、はるかに価値があるのではないかと思うようになりました。地震波によって地球内部の様子を探る地震学者は、「地球と対話」をしているといえますが、もっと「人と対話」をして、その命を守りたい、という考えに変わったのです。

「人の命を守る」というのは、災害医療の医師や看護師さんも同じで、そういう選択肢も私のなかにはありました。ただ、あらためて医学部に入り直すのは時間的にも大変だし、なにより私には地震学という“武器”がある。それを使って防災をしてもらうことで、きっと命は助けられる。その道筋があったので、結果的に地震学者のまま、「命を守る」活動を続けています。

学生の学びに対する取り組み方が「化ける」瞬間とは?

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