スペシャルインタビュー
Academic Milestones - 学びを究める力

2014/05/30更新

Vol.009 地震学者 大木聖子先生  後編

夢中努力に勝る
夢中になれるものを見つけよう

大木 聖子 (おおき さとこ)
北海道大学理学部地球惑星科学科卒業、東京大学大学院理学系研究科にて博士号を取得。国内外での研究員、東京大学地震研究所助教を経て、現在は慶應義塾大学環境情報学部で准教授を務める。著書に『地球の声に耳をすませて』
(くもん出版)など。

高校1年生のときにテレビで阪神・淡路大震災の惨状を見て以来、地震学者を志し、「同じ悲劇をくり返さない」と決意した大木聖子先生。大学で地球科学や防災学などを教える一方、幼稚園や小中学校に赴いての防災教育も精力的に行っています。「夢を叶えた」かに見える大木先生ですが、ご本人曰く、「まだまだ学究の徒の入口です」とのこと。どのように道を選び、学びを突き詰めてきたのでしょうか。また、「教育者」として人を育てる醍醐味についてもうかがいました。

悩んだり迷ったりしたら「自分の脳が何に喜びを感じるか」を考える

私は地震学という同じフィールドでずっとやってきましたが、途中で専攻を変える人もいます。それを「ブレている」と批判する人もいますが、私は専攻や夢が変わってもよいと思います。「絶対○○になりたい」と固執するのもいいですが、さらに前向きなのは「自分にとって何が本質的な喜びか」という観点に立って、突き詰めていくものを常に見つめ直すことではないでしょうか。

それと同じようなことだと思うのですが、「今の若者はやりたいことがわからないやつが多い」と否定的に言われたりもしますが、はたしてそうでしょうか。私の大学にも、「打ち込むものが見つからない」と、焦りを感じたり、はなから自分の能力を限定してしまう学生もいます。そんな学生には「急がなくていいよ。じっくり考えてごらん」と声をかけたり、あきらめがちな子には、その子が得意にしていることを見つけてほめます。

そして、「自分の脳が何に喜びを感じるか」と聞いています。「自分が」ではなく「自分の脳が」と客観視すると、本質的な答えを導きやすいと思います。たとえばゲームが好きすぎて留年したというようなワケありの子もいます。そういうときはどうするか。留年するくらいゲームにはまっているわけで、ゲームの知識を含め、PCのスキルは相当なものだったりします。「それを活かして防災ゲームを作れるかもよ」とアドバイスすると、とたんに表情が明るくなります。

そうやって学生に接していると、学びに対する取り組み方が「化ける」瞬間がやってくるんですね。どう「化ける」かといえば、貪欲に学び取ろうとする姿勢が急に出てきたり、いくつもの視点から学ぶ道筋を考えられるようになったりと、以前とはまったく結びつかないような変化というか成長を見せてくれるのです。そんな瞬間に立ち会えるのは教員冥利に尽きますね。

もちろん、「化ける」のは学生が学び続けたからなのですが、そんな学生から私自身も学んでいます。学びを「与える」ことで、逆に私のほうが「与えられている」のです。新しいアイデアをもらったり、人の変化や成長のすごさを教えられたりしています。私は、これが学びの本質だと思っています。今、学生を指導していて、強くそう感じ、学生たちにも感謝しています。

もうひとつ、学生たちを見ていて思うのは、「夢中は努力に勝る」ということ。「課題だからやっている」というのではなく、やっているうちに課題がどんどん楽しくなって、夢中になる場合があります。すると、おのずと努力するようになり、ぐんぐん伸びていくのです。

大学生だけではなく、防災授業で接するようになった小中学生の子どもたちも目を輝かせ、一所懸命に授業を聞いてくれます。彼らを見ていると、夢中になれるものを見つけてほしいと思いますね。そして周りの大人たちが「夢中になることは素晴らしいことだ」という思いで見守れば、子どもたちは必ず伸びていきます。

関連リンク
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