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Vol.111 2025.07.11

インド大好き芸人
シバモア・ゲンさん

<後編>

学びは後から効いてくる!
手札を増やして
「おもしろい人生」を歩もう

インド大好き芸人

シバモア・ゲン (しばもあ・げん)

1995年福井県生まれ。大学在学中の19歳の時、初の海外旅行で行ったアフリカのガーナで「人生の目的は楽しむこと」だと気づき、好きだったお笑いを仕事にすることを決意。20歳の時、オーストラリアやアメリカのニューヨークで、スタンダップ・コメディや発声などを学ぶ。帰国後は英語力を磨きながら、大学卒業単位を取得。その後入学したインドの演劇学校でインドの魅力にはまる。現在はインド大好き芸人として日本とインドで活動中。2023年にはインド制作のNetflixドラマ『Kaala Paani』に、翌年にはインドクリケットリーグ(IPL)のCMに俳優として出演。

豪華なインドの伝統衣装に身を包み、ユーモアあふれる言葉選びと持ち前の明るさで、周囲の人を笑顔にする「インド大好き芸人」のシバモア・ゲンさん。日本のみならず、インドでは俳優兼スタンダップ・コメディアンとして活躍中です。TOEIC940点という英語力を生かして、インドでは出演交渉やマネジメントも自身で行っているというシバモア・ゲンさんですが、英語で仕事ができるまでになったのは、小学校低学年から始めた公文式学習が土台にあったからとふり返ります。なぜインドなのか、どのようにして英語を身につけたのか、そして一風変わった芸名の由来とは…? 「おもしろい人生」につながる学びのことなど、楽しいエピソードを語っていただきました。

目次

    言語習得には「時間」と「目的」が重要

    ガーナでは英語ができたおかげで助かった経験がありました。現地での生活費や帰国便のチケットは、カードでキャッシングして調達しようと思ったのですが、そのカードではキャッシングができなかったんです。持参した現金はわずか30ドルで、自分はここでのたれ死ぬのかと絶望しました。

    結局、携帯電話で母に連絡が取れ、国際送金してもらえたのですが、そこに至るまでには、現地の人の助けが必要でした。やりとりはもちろん英語。つまり、英語ができたおかげで問題解決ができたんです。

    ガーナ渡航前の1年間は、「もっと英語を勉強しなきゃ」と思い、大学の授業を受けつつ、英会話スクールへ通っていました。それまで、勉強のことなんて話したことがなかった私が勉強したいと言い出したので、両親は費用を喜んで出してくれました。そのおかげで英会話は上達しましたが、スクールの費用はなかなかの高額だったので、コスパはいいとは言えないかもしれません。

    それでも私は、公文式で培った“高校レベルの英語”という確かな土台があったので、英会話スクールも高いレベルからスタートすることができ、吸収も早かったと思います。公文式で学んでいた頃は、勉強していることが何の役に立つのかなんて考えてはいませんでしたが、こうして大人になってから効いてくる。後から「やっててよかった」とつくづく思いました。

    外国語をマスターしたいなら、時間を捻出することが一番です。あるいは海外へ行く。そうすれば嫌でもその国の言語を使わねばなりませんから。いずれにしても大事なのは、まず目的を見つけることではないでしょうか。私には「スタンダップ・コメディで笑いを取る」という明確な目的がありました。「英語がうまくなりたい」のではなく、「英語を使って何をするのか」を意識することが、上達につながるのだと思います。

    オーストラリア時代

    そして大学2年次が終わったタイミングで、今度は大学を1年休学し、ワーキング・ホリデーを利用して、オーストラリアのスタンダップ・コメディのスクールへ通い始めました。でも、最初は全然ウケませんでした。英会話スクールで英語力を磨いたつもりでしたが、現地の人からは、何をしゃべっているか全然わからない、と。発音がダメだったんですね。

    私はオーストラリアに行くにあたり、「スタンダップ・コメディをして笑いを取る。それができたらお笑いの道に進もう」と決めていました。でもウケなかったので、「このままだとマズイ」と焦り、現地で英語の先生に毎日4~5時間、発音だけを徹底的に教えてもらいました。今ふり返ると大変でしたが、それができたのは、「スタンダップ・コメディで笑いを取る」という圧倒的な目標があったからだと思います。

    ニューヨークのコメディバーで

    オーストラリアでのワーキング・ホリデーを終えると、そのままスタンダップ・コメディの本場、アメリカ・ニューヨークへ行き、ニューヨークでもスタンダップ・コメディの学校に通いました。

    卒業ショーでは、米国人の生徒たちの中で、ただ一人の日本人である自分が、なぜかトリを務めることになったんです。70人ほどの聴衆の前でコメディライブをしたのですが、日本人であることを生かしたネタを披露したところ、手応えを感じ、「お笑いを続けていていいんだ」と気持ちが固まりました。あの舞台は人生で一番緊張しましたね。

    ニューヨークではボーカルトレーニングも受けていて、カーネギーホールでゴスペルコンサートに出場したこともあります。

    帰国後は、大学3・4年次の単位を取るための勉強と英語を猛勉強しました。お笑いは言葉選びが命ですが、英語のお笑い表現はかなり特殊なものです。オーストラリアでは発音を徹底的に練習しましたが、さらに多くの「お笑い」の表現や間の取り方を学びたいと思った私は、『フレンズ』という米国のコメディ・ドラマ番組を視聴しながら、面白い表現をノートに書き出し、通学時間に覚える、という独自の勉強法を考案しました。でもそれは「勉強」という感じではなくて、そうして学ぶことがとても楽しかったんです。

    多様な文化が混在するのがインドの面白さ

    オーストラリアとアメリカでスタンダップ・コメディや発音、ボーカルトレーニングなどの研鑽を積んだ後、前編でお伝えしたように、「次は演技だ。演技ならインドだ」と、大学卒業に必要な単位を取り切ってから、インドへ渡りました。

    最初に観たインド映画に出演していた俳優さんの出身校をネットで調べ、直接その演劇学校に連絡を取ったところ、すぐに入学許可が下りました。またヨガ道場にも1か月ほど滞在し、トータルで半年ほどインドにいました。あるときヨガ道場で、ふとネットを見たら、私が通う大学が卒業式をやっている動画が流れてきて、「あれ、今日が卒業式だったんだ」と…。無事に卒業できていましたよ。卒業証書をもらいに行ったのはその5年後でしたが。

    インドは一言でいえばカオスな国。オーストラリアやアメリカは先進国であるからか、どこか物足りなかったのですが、インドは最初に訪問したアフリカに似ていて、冒険心やサバイバル精神がくすぐられて、ものすごく引き込まれました。

    なによりインドの面白いところは、いろんな文化が混在していること。インドは面積も広いですが、憲法で認められている言語が22言語もあり、利用されている総言語数は1000以上とも言われています。また地域ごとにルールはありますが、それをひとまとめにするルールがない。個人がそれぞれ自由に振る舞うことができるし、それが変だとも思われない。あるがままの自分を受け入れてくれるのがインド。地域によって言葉も文化もまったく違うのに、「インド」というひとつの国として成り立っていること自体がとても不思議です。行けば行くほどいろんな面白さが発見できる。堀りがいがある。学び甲斐がある。そんなところがインドという国の魅力です。

    インドに滞在してインドが大好きになり、「インドキャラ」の芸人になろうと決めました。そして数ある芸能事務所の中でも、キャラが強い芸人さんが多いと感じていたサンミュージックなら自分を受け入れてくれるかなと期待して、サンミュージックの養成所に通うことにしたんです。

    インドでオーディション活動

    研修生は、最初の3か月は発声など基礎を、その後は各コースに分かれて専門的に学びます。私はお笑いコースへ。ひたすらネタをつくり、講師に披露してアドバイスを受ける…ということを、私の場合は2年続けました。そして今は研修所を卒業し、サンミュージック所属芸人として活動しているというわけです。

    インドでのマネジメントや契約の交渉などは、事務所には報告しますが、基本全部自分でやっています。インドではSNSでドラマなどのキャストの募集がかかるので、それに応募したり、最近ではインドの中でも名前が知られてきたので、直接キャスティング会社から連絡が来たりもします。最近では映画で日本兵の役を演じました。

    交渉は主に英語で行いますが、最近はヒンディー語も勉強し、ある程度しゃべれるようになりました。ヒンディー語でしゃべるとインド人のウケがいいんです。言葉というのは文化なので、インドの人はヒンディー語を話す私を、インドの文化を尊重している人だと思ってくれるのでしょうね。

    「とりあえず、やる」をモットーに
    「エンタメの外交官」を目指す

    Netflix(ネットフィリックス)のドラマで
    日本兵の役で出演した

    私が意識してきたことは、「とりあえず、やる」ということ。ガーナに行く時、普段は何も言わない父が「そこまで行ったら、やらないという選択肢はないな。やれること全部やってこい」と言ったんです。実際に動かないとわからないことはたくさんあります。そして、いつも「なんとかなる」と思って行動しています。私がこうして行動できるように育ててくれた親や周囲の方には、本当にありがたいという気持ちでいっぱいです。

    今後は今やっていることを仕事としてしっかり確立したいですね。もう少しお金が入るように…。そして「エンタメの外交官」になって、インドと日本の二国間で相乗効果を生み出すことが目標です。

    多くの日本人がもつインドのイメージは、まだまだ「カレー」と「ガンジー」かもしれませんが、インドのエンタメはすごくおもしろくて魅力的ですから、それらを日本に伝えたいし、逆に日本のエンタメもインドに紹介したいと思います。それに、最初にインド映画を観たときに夢見た「インド人に交じって踊ること」もまだ果たせていないので、それも実現したいですね。

    保護者の方の中には「うちの子成績が悪くて」「何もできなくて」と、わが子を心配されている方もいると思います。公文式指導者である私の母も、保護者からそうした相談を受けることが多いようです。その時、母が必ず言うのが「うちの息子に比べたら、全然マシです。大丈夫です!」だそうです。そうすると保護者も納得する。説得力があるんでしょうね(笑)。でも、本当に成績が悪くてやんちゃだった私もこうしてなんとかなっているので、皆さんも自信をもってほしいです。

    ただ、勉強は「地道に」しておくといいかもしれません。小さい頃から目標をもって勉強をする、という賢い子はいるかもしれませんが、それは少数派でしょう。それでも「勉強はしておいたほうがいい」と大人が言うのは、私のように後々勉強したいことができた時に、いい位置からスタートすることができるから。持ち札がたくさんある状態で、夢や目標に向かってスタートできるということが、小さい時から勉強する意味ではないかと思います。

    私は公文をしていたからこそ、大学時代に英語を勉強する時、高いレベルからスタートできました。それがあったから今がある、やってきたことはつながっているんです。もし今、好きなこと、やりたいことがない人でも、いろいろやっているうちに好きなことに気づいたり、やりたいことが見つかったりするはず。そうすれば、「おもしろい人生」に近づけるのではないかなと思います。

    前編を読む

     


     

    シバモア・ゲンさん  

    前編のインタビューから

    -芸名はガーナのサッカー選手「アサモア・ギャン」さんから
    -「人を笑わせる」のが好きで野球と公文式に取り組んだ少年時代
    -得意な英語での「お笑い」へ 人生を決定づけたガーナへの旅

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