単に情報を吸収するだけではなく
“人生が変わる”メディアでありたい
ニューズピックスは、私が社長を務める会社名であり、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」の名前でもあります。ソーシャルメディアというのは、インターネット上で誰もが双方向に発信・共有できるメディアのことで、私たちは「経済を、もっとおもしろく」をキャッチフレーズに、経済という切り口で運営しています。特徴は、国内外の経済ニュースを厳選していること、編集部でも独自に記事を作成していること、そしてそれらに専門家のコメントがつくということです。
メイン読者は20~30代のスマホ世代のビジネスパーソンや学生で、現在は首都圏はじめ大都市圏の若者が中心ですが、今後、私の出身地である愛媛の高校生が見て「経済っておもしろいな」と考えが変わるきっかけになるくらい、各地に広めていきたいと思っています。
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NewsPicksは、もともとはユーザベースという情報を扱うベンチャー企業のなかの一事業でした。私は立ち上げから関わり、いまは社長として、採用を含め事業全体を統括しています。追ってお話ししますが、私はそもそもベンチャー企業で働きたいと思っていたわけではありません。
ただ、大学時代に暮らしていた京都からインターンのために東京に出てきたとき、ある違和感を覚えました。京都では、学生が多いこともあり、電車の中で笑いながら話している人がけっこういたのですが、東京に出てきた瞬間、満員電車で疲れた表情をした人が多いと感じたのです。仕事を楽しそうにしていない。日本の未来を担うはずの若者も希望を持っていないように見えました。それを変えたい。そんな思いがいまの仕事の原動力となっています。
私たちユーザベースグループは「経済情報で、世界を変える」をミッションにしています。NewsPicks利用者に話を聞くと、「NewsPicksを読んで転職しました」「こういう生き方があるのだと刺激を受けて起業しました」という声が結構あるのです。ただ単に情報を吸収するだけではなく、情報で人生が変わっていく人が多い。そうしたことを知るたびに、やりがいも大きくなります。
じつは、私も情報によって将来への考えが変わった一人です。それについても後半でお伝えしますが、ちょっとしたきっかけで人は変わっていきます。そのきっかけにNewsPicksがなれたらいいなと思っています。
公文式学習に出合って
「自分のペースを自分でつくる」くせがついた
幼少期は、愛媛県の松山と新居浜で過ごしました。ゲームをしたり習い事をしたり、いわゆるごく普通の子どもでした。「公文と水泳とピアノをやっていればなんとかなる」という親の方針で、水泳とピアノは3歳から、公文は4歳から始めました。なかでもピアノは得意で高3まで続けました。水泳は小6までで、中・高時代はテニスに熱中。テニスの国体選手だった父を追い越そうとがんばりましたが、全然及びませんでしたね。
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勉強はほどほど。でも公文に通っていたからか、算数(数学)、国語、英語の3教科の成績はいつもよかったです。私は、「短時間でガッと集中してやる」公文が大好きで、はりきってプリントに向かっていました。
先へ先へと自分で学べる仕組みが好きなんです。私はいわゆる「飛び級」を日本に導入すべきだと思っているので、学年に関係なく、どの教科も一人ひとりの進捗にあわせてどんどん進んでいける公文式学習の仕組みは性にあっていたと思います。
教室では早く進みたくて、先生に次のプリントをよく催促していましたが、間違っていると返却され、また解き直して満点になるまで進めませんよね。当時はやきもきしましたが、その反復も学習効果があるいい仕組みだと、改めて思います。
周囲の動きを見ながらそこに合わせるのではなく、「一番高いところはどこだ?」と自分で目標を目指せるようになったのは、公文に通っていたから身についたこと。「自分のペースを自分でつくる」くせがついたのは、大きな収穫でした。
もうひとつ、よかったと思うのは数学の基礎が身についたことです。私は文系でしたが、センター試験でも数学が一番よかった。社会人になっても数学ができることは強みになります。
小学生のころは伝記のマンガを読むことに熱中していました。図書館でもよく借りていました。とくに真田幸村が大好きで、「真田幸村」とつくものはひととおり借りて読み、夏休みの自由研究では真田幸村について30ページにまとめたほどです。彼は自分では結果を出したわけではないのですが、結果を出すために燃え尽きた。自分が似ているとは思いませんし、結果は出したほうがいいですが、「ダメかもしれないけれどやりたいことに突き進む」そんな姿勢に引きつけられました。
恩師から「会計士ではなく経営者になれ」
そのひと言で目指す山を変える
将来何をやるか決めなきゃなと考えていた高校生のころ、当時30代の堀江貴文さんの企業買収のニュースをテレビで見て、「若い人でもこんなことができるんだ」と企業買収に興味をもちました。どうやったら企業買収ができるのだろうと調べたら、弁護士か会計士になるといいと知り、西日本で会計士を一番多く輩出している同志社大学商学部に進学しました。
会計士になるためには専門学校にも通いたいと考え、大学1年目は、その学費稼ぎにバイトに注力。100万円を貯め、いざ専門学校に通おうとした2年目、経営系の自主ゼミに入ったことが、その後の人生を方向付けることになりました。
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ゼミの“先生”は、元同志社大学の教授で前職で金融機関の役員として活躍されていた方。私は初対面でその先生に、「君は会計士は向いてないから経営者になれ」と言われたのです。先生の専門が経営だからそう言われたのかもしれませんが、自分でも「そうなのか」と思い、目指す方向を変えました。
簡単に方向転換したように思われるかもしれませんが、当時の私は『エコノミスト』など経営雑誌を多読し、ビジネス書もたくさん読んでいて、経営にも関心が出てきていたころ。ですから自分では納得できる方向転換でした。
やがてそのゼミの幹事長になり、経営者の方が参加する勉強会に参加するようになりました。京都には長寿企業が多くあります。私は20歳のときから、100年企業の経営者が参加する勉強会に参加していました。ほとんどがご高齢の経営者の中に若い自分が混じっていて……。飲み会にも連れて行っていただき、近い距離でいろいろなお話をうかがうことができて、得がたい経験だったと思います。
そうやって多くの大先輩から学ばせていただいたなかでも一番印象に残っているのは、自主ゼミの先生の言葉です。「経営者にとって一番大事なのは人として誠実であること。それより大切なことは何もない」しょっちゅうそう言われていました。当時の私は「こんなに経営の勉強をしているのに、そこか」と拍子抜けしたものですが、いま、その意味が本当に心にしみています。
その後、インターンや就職などでさまざまな人たちと接していくと、「一時期波に乗る人はいるが、長く続いたり上に立つようになるのは、人間としてちゃんとしている人」ということが、実感としてわかるようになりました。
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