戦国時代に江戸時代、そして自分の誕生も「歴史」
その史実をわかりやすくおもしろく物語る伝統芸能
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みなさん、「講談」ってご存じですか? 落語に比べて知名度は低いかもしれませんね。「着物を着て一人でおしゃべりする」までは落語と同じです。違うのは、講談は「釈台(しゃくだい)」と呼ばれる机の前に座り、その釈台を「張り扇」で叩いて調子を取りながらしゃべること。
内容も違います。落語は笑い話で、つくり話が中心ですが、講談は、「いつ、どこで、誰が、何をしたか」歴史の物語。難しそうに感じる歴史の事実を、お客さまに喜んでいただくよう、ユーモアや嘘を織り交ぜながら、講談独特の語り口で語ります。昭和初期には講談を毎日やっている専門の寄席小屋「講釈場」がありました。ところが現在は講談専門の寄席小屋は日本には一軒もありません。お寺や古民家などを借りて公演しています。
文部科学省の「文化芸術による子供育成総合事業」の一環として、全国各地の小中学校に派遣されてワークショップをすることも大事な仕事です。この事業は、演劇や舞踊、音楽などさまざまな分野から学校側が選択できるのですが、担当の先生が講談を知らないとなかなかお声がかからない。それが残念なところです。もっと広まったらいいなと思います。
そして、ワークショップは1回だと鑑賞だけで終わってしまうので、私の場合は3回やります。1回目は講談鑑賞。2回目は自分たちで体験する。張り扇をつくったり、お話をつくったりします。お話づくりは難しそうと思うかもしれませんが、講談は「歴史の物語」。江戸時代や明治時代も歴史。自分が生まれたことも歴史です。両親がどこで出会ったかなど家族を取材したり、おじいちゃんの子ども時代を聞いて「おじいちゃん一代記」をつくったり。3回目は発表会で、そこにご家族もお呼びします。とっても盛り上がりますよ。
張り扇は、リズムをとるだけでなく、その叩いた音よりも大きな声を出すためのものなので、子どもたちの発声を促したり、のどを鍛えたりすることにもつながります。講談では、源平合戦の「那須与一 扇の的」など、教科書に載っている話も語り継がれています。ですから中学生くらいになれば、歴史の勉強が楽しくなりますよ。
12月には小中学生を対象としたCD「こども講談」が発売されます。付録で講談台本や張り扇の作り方も書いてありますので、聞くだけではなく、講談を覚えて体験することもできますよ。