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Vol.061 2019.04.26

イラストレーター
ながおかえつこさん

<後編>

迷ったときにはまず自ら動こう
周囲の空気が対流し
先につながる流れができてくる

イラストレーター

ながおか えつこ (ながおか えつこ)

大阪府生まれ。地元の小・中・高校を卒業後、金沢美術工芸大学産業美術学科にて商業デザインを学ぶ。卒業後は旧・松下電工株式会社に入社。1998年に退社後、夫とデザイン事務所グラフィオ設立。解散後、イラストレーターとして独立。現在、夫が経営する珈琲豆焙煎所の中に事務所を設け、イラストレーターとして活動中。絵を担当した書籍に『知ってびっくり!歯のひみつがわかる絵本 』シリーズ(くもん出版)、『凸凹あいうえおの手紙』(くもん出版)、『コーヒー豆を追いかけて』(くもん出版)など。

小さいころから絵を描くのが好きだったというイラストレーターのながおかえつこさん。美大卒業後は一般企業に就職し、広告やマーケティング業務に従事していましたが、「絵を描く仕事」への思いが募り、退職してイラストレーターとして独立することに。とはいえ仕事のあてがあっての退職ではなく、一歩一歩、努力と信頼を積み重ねて夢をかなえてきました。現在、絵本や小説・雑誌の挿絵を中心に、キャラクターデザインや広告イラストなど幅広く活躍されています。夢を実現するまでの道のりや、心がけてきたことなどについてうかがいました。

目次

会社を辞めて立場が逆転。
発注側の気持ちがわかることが強み

ながおかえつこさん

美大で学んでいたのはグラフィックやマーケティングなど、商業デザインです。企業に入って活躍するデザイナーを育てるカリキュラムが中心で、当時の私の将来の夢は、「企業に入ってデザインの仕事をするのかなあ」という、いたって漠然なものでした。

その筋書き通り、卒業後はメーカーに就職し、広告部門で制作物を担当しました。自分で手を動かすのではなく、デザイン会社につくってもらう、つまり口で仕事をしていた感じです。その後マーケティング部に異動し、会社案内やCIを担当しました。こうした会社での業務は、自分では実際につくらないものの、企業内で制作物をつくる際の一連の制作工程を知ることができたという点で、とてもよい経験をしたと思います。

ただ、社内でベテランになってくると管理職に向けての研修が始まります。もともとものをつくるのが好きな私は、そこに労力を費やすなら好きなことに時間を注ぎたいと思い、7年目に思い切って辞めました。とはいえ、仕事のあてがあったわけではなく、退職後は3ヵ月間ヨーロッパへ。スケッチブックを手に心に残る風景をスケッチしての旅でした。語学もたいしできなかったのですが、この旅ですべてをひとりで対処できたことは自信につながりましたね。

帰国後は友人から仕事を紹介してもらったり、作品をファイリングしたものをデザイン事務所に見てもらったりして、少しずつ仕事を増やしていきました。このころ心がけていたのは、自分の希望や意向にかかわらず、声がかかった仕事はしっかり引き受けるようにしていたことです。そうするうちに知り合いが増えますし、一生懸命やっていると必ず見ていてくれる人がいて、お声がかかることも増えてきます。

仕事をしつつ、自分のタッチを探っていた時期でもありました。やがて作品がたまったら自分の好きな作品だけをファイリングして、好きなタッチの依頼が来るように工夫する余裕も生まれてきました。早い人であれば2~3年でできることかもしれませんが、私は余裕ができるまで10年くらいかかりました。遅々としていましたが、積み重ねの結果、今があると思っています。

ここまでやってこられたのは、やはり相手が喜んでくれるものをつくろう、と心がけてきたからでしょうか。会社員時代はデザイン事務所に発注する側でしたが、独立後の今はその逆の立場。だから「納期は1日でも早く」など、発注側の気持ちがわかるので、その気持ちに応えるようにしています。

絵を描くときに大切にしていることとは?

本物”に触れて、“感じて”描くことを大切に

ながおかえつこさん

振り返ってみると、イラストレーターや絵本作家になりたいと思いつつ、じつはど真ん中ではなく周辺をうろうろしていたように思います。絵本作家になれなかったらショックだから、あえてのらりくらりして周辺の仕事に逃げていた。でも年を重ねるうちに、これでいいのかと疑問をもつようになり、思い切って会社も辞めましたし、その後、絵本の学校に行くことにもしました。

そこで学んだのは、クライアントに合わせて対応するのも必要ですが、絵本をつくるためには、自分なりのタッチで描くことの大切さです。だんだんその使い分けができるようになってきたと思います。

イラストレーターは、自分が名乗ればイラストレーターになることはできます。問題は、イラストレーターとして、どう自信をつけるかではないでしょうか。そのためには、「本物に触れる」ことが大事だと思います。

パソコン慣れしている今の子どもたちは、本物を見ないでパソコン画像やテレビを見て描くことが多い気がします。けれども、例えば猫のふんわりとした毛の触感を知らなければ、ふんわりとした毛は描けませんし、本物の質感を知るということだけでなく、本物を知らなかったら、欲求が枯渇してしまうのではないかと思うのです。

たとえば、夕焼けでも「きれい」と感じるだけでなく、悲しさを感じたら色も変わってきますし、古い木に歴史を感じれば、それが色に反映されます。「木だから茶色」ではなく、キラキラして見えたら、実際には色がついていなくても黄色や白を入れてみるとか、実物を見て感じたからこそ描けるのではないでしょうか。

単なる写生ではなく、湧き上がる感情、「気持ちを描く」ことも、「絵を描く」範疇だと思うんです。もちろん最初は、他人の出来上がった絵をマネすることで技術的にはうまくなるので、それも必要ですが、「自分の絵」の場合、自分の気持ちを感じることが大事だと思います。

ながおかさんからの子どもたちへのメッセージ

「子どもの気持ち」になって、ものがたりを紡ぎ、絵を描き続けていきたい

ながおかえつこさん

今後は、絵だけでなくものがたりをつくっていきたいですね。その内容は、自分の子ども時代のこと、生きもののことなど、自分の経験をもとに、子どもたちが喜んでくれるようなテーマを考えています。

じつは以前は、「きれいな絵」が「いい絵」だと思っていました。でも、子どもを生んでから、子どもは必ずしも「きれいな絵」に興味を引かれるわけではない、ものがたりの内容にひかれるのだということに気づきました。もちろん、絵はきれいにこしたことはないのですが、そこにこだわりすぎないようにしたいですね。

息子が小さい時、いっしょに歩いていたらまつぼっくりが落ちてきました。「どこから落ちてきたんだろうね」と話していたら、大人であれば、当然「松の木から」と思いますが、息子は「宇宙から落ちてきた」と言うのです。

大人になってしまうとそうした気持ちを忘れがちです。固定概念を取り払ってどれだけ子どもの気持ちになれるか、同じ立場になって楽しめるかを大切にしながら、ものがたりを紡ぎ、絵を描き続けたいと思っています。

子どもたちに伝えたいのは、好きなことを思い切りやってみよう、ということです。好きになるのにもエネルギーがいります。周りの目を気にして押さえるのではなく、そのエネルギーを出していいと思います。これは大人にも言えることかもしれません。

そして私が心がけてきたのは、迷ったときは、まず「やる」ほうを取ること。すると、思いがけず人とつながったりします。動かなければ何も起りませんが、関係ないこと、今必要でないことでも自分が動いていると、空気の流動が変わって、先につながる流れができてくるのです。

家庭では子どもに対して、「あれはダメ」などと制限するのではなく、好きなことを好きにさせる、いい意味で野放しにさせてあげてほしいですね。といいつつ、私も息子をなかなか野放しにはできず、叱ってばかりですが……。私自身、子育ては手探りで、悩める保護者ですが、子どもの目線に立って、子どもと一緒に楽しんでいきたいと思っています。

  • じょうずな歯みがき
  • むし歯のしょうたい
  • 歯いしゃさんはこわくない

前編を読む

関連リンク Etsuko Nagaoka Illustrations



ながおかえつこさん  

前編のインタビューから

-イラストレーターとしての心得とは
-絵を描くのが好きだった子ども時代
-公文式学習を通して身についたものとは?

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