自然に囲まれ、
生きものを一人黙々と観察した子ども時代
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現在焙煎所を開いているこの場所は、もともとは私が小学生のころ、母が店を始めた場所でした。父は別の場所で喫茶店を開いていて、その影響か、専業主婦だった母は私が小学校1年のころに、田んぼに囲まれたこの店舗住宅を見つけ、引っ越してきたのです。
母は最初はパン屋さんの看板を掲げていましたが、そのうち七宝焼きや岩のり、バッグ、ラジコンなどいろんなものを売るようになって、私から見たら「何でも屋」でした。好奇心旺盛な母には、インコを肩にのせて洗濯物を干していたらインコが飛び立って逃げてしまったなど、さまざまな逸話があるのですが、革細工を始め、古布を再利用したりと、作ることが好きなのです。店のコースターも母の手作りです。私がものづくりが好きなのはそんな母の血を受け継いだからかもしれません。一方、商売をすることに違和感がないのは、父の姿を見ていたのが影響していると思います。
マイペースな私は、子どものころは友だちと遊ぶというより、田んぼでカエルの卵を見つけたら、塊ごとどさっとバケツに入れて持ち帰って観察したり、水路でフナをとったりと、ひとりで自然の中で遊ぶタイプでした。
絵を描くのも小さいころから好きでしたね。描くのはやっぱり動物。飼っていたインコの絵を、実物に似せて描くというより、マンガっぽくかわいらしく描いたりしていました。マンガといえば、中学時代はテニス部でしたが、部活の仲間もマンガ好きで、よく回し読みをしていました。学校にはマンガは持ち込み禁止だったので、うちの店に置いておいて、仲間が帰宅途中に立ち寄るんです。この店が中継地点になっていました。楽しい思い出です。中学でテニス部に入ってからは、絵のほうは友だちの似顔絵を描く程度でした。