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Vol.585 2026.04.28

これも金太郎?浮世絵に描かれた意外な姿

絵本では決して見ることのない
浮世絵の金太郎百変化

今年もゴールデンウィークがやってきました。昨年、端午の節句にあわせて掲載をしたKUMON now!記事「みんなが知らない金太郎の話」は、おかげさまで多くの方々からご好評をいただきました。そこで今年は「これも金太郎?」と題し、現代の昔ばなし絵本や五月人形では決してみることのない、浮世絵に描かれた様々な金太郎の姿をご紹介します。

目次

    歌舞伎で演じられた金太郎

    最初にご紹介するのは、歌舞伎で演じられた金太郎の姿を描いたこちらの作品。描かれているのは、歌舞伎舞踊・常磐津「薪荷雪間〈たきぎおうゆきま〉の市川」のワンシーンです。

    薪荷雪間の市川 三田仕・怪童丸・山姥>(三代歌川豊国)
    <薪荷雪間の市川 三田仕・怪童丸・山姥>(三代歌川豊国)
    (画像をクリックすると大きくなります)

    画面中央でクマを担いだまま見得を切る※のが、怪童丸こと金太郎です。そして金太郎の左右に描かれているのは、金太郎に抑え込まれた、ウサギやクマ、サル、シカなどの衣装を着た役者たち。木の幹の挟み込まれている姿は芝居がかっており、何ともユーモラスですね。そして画面左の女性は金太郎の母親である山姥〈やまんば〉、右は怪童丸の強さを聞きつけた源頼光の家臣、三田仕〈みたのつごう〉です。
    ※見得を切る=歌舞伎役者が演目の重要な場面で特徴的なポーズや表情のまま動きを止める、観客に強い印象を残す所作のこと。

    様々な伝説が複合して成立したと言われている金太郎ですが、広く世の中に知られるようになったのは江戸時代のこと。このような歌舞伎の演目などを通じて、広く庶民に知られるようになっていったと言われています。

    アニメキャラに通じる
    金太郎の魅力

       

    次は「八頭身美人」というスタイルを“発明”して一世を風靡した絵師・鳥居清長と、その門弟である二代鳥居清満による、金太郎絵の競演です。「節分に鬼退治をする金太郎」というモチーフの浮世絵は江戸時代に数多く描かれましたが、この師弟の描いた金太郎はとても対照的です。

    師匠である清長が描いた金太郎は、文字通り鬼を「手玉に取って」放り投げる勇ましいもの。しかし一方の二代清満が描く金太郎は、鬼を退治するどころか、鬼と一緒になって双六遊びに夢中になっています。金太郎は怪力の持ち主だとはいえ、年齢的にはまだまだ子どもですからね。

    またどちらの絵でも、金太郎と鬼との間に敵対するような憎しみは感じられず、どこか心が通い合っているように見えるのも面白いところ。幼いころから山の中で動物たちを遊び相手にして育ってきた金太郎ですから、動物や鬼たちとも意思疎通ができる不思議な能力を持っていたのでしょう。

    双六遊びを描いた二代清満の作品など、「俺たち何も悪いことしてないのに、毎年節分になると豆をぶつけられるの、ちょっと悲しいんだよね」なんていう鬼たちの愚痴を、金太郎が聞いてあげているようにもみえます。

    この金太郎の、子どもらしさと強さ、そして不思議な能力を併せもつ「ちぐはぐさ」は、現代のマンガ・アニメの人気キャラクターとも共通している要素のようにも思えます。

    喜多川歌麿が描いた山姥と金太郎

    最後にご紹介するのは、喜多川歌麿が描いた金太郎です。歌麿は遊女や茶屋の娘などをモチーフとした、リアルで艶めかしい美人画を描く絵師として知られていますが、一方で母子絵を大量に制作したことでも知られており、中でも「山姥と金太郎」という母子の姿は、歌麿母子絵における重要なモチーフでした。

    この作品で歌麿は、金太郎を三人兄弟に仕立てて描いています。長男(惣領)・金太郎は母親である山姥と一緒に餅つきを始めるところ。怪力自慢の金太郎の面目躍如ですね。次男(二男)・金太郎は勇ましく、鳥のカモを今まさに捌かんと包丁をにぎっています。そして末っ子・金太郎は、空の杯(さかずき)を母親に掲げて、なんとお酒の「おかわり」をおねだりしています。

    どの作品も無口で一生懸命な金太郎と、そんな金太郎を微笑ましく見守る山姥の姿を描いており、女性や子どもの愛らしさだけでなくその内面をも描き分けようとした歌麿らしく、生き生きとした演出が、本作の見どころです。

      

    また、2025年にNHKで放映された大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」最終話の中では、歌麿が山姥と金太郎をモチーフとした浮世絵を描き始めた理由を、自身の不遇な幼少期に重ねて、このように語るシーンがありました。

     「こりゃ(=山姥は)おっかさんがタネなんだよ。で、金太郎が俺でさ。
     おっかさんとこうしたかったってのを、二人に託して描いてみようかと思って」

    歌麿の幼少期に関しては不明な点も多く、これもドラマの中のお話ではあります。しかしとても多くの「山姥と金太郎」の浮世絵を残した歌麿が、この母子に特別な思いをもっていたことは確かなように思います。

    今回も浮世絵に描かれたさまざまな金太郎の姿をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。歌舞伎役者が演じた金太郎、退治しなければいけない鬼と遊んでしまう金太郎、そして歌麿が描いた金太郎三兄弟。どれも江戸の人々の「金太郎愛」が感じられる浮世絵でしたね。サイト「くもん子ども浮世絵ミュージアム」には、まだまだたくさんの金太郎の浮世絵が紹介されていますので、こちらもぜひ訪れてみてください。

    関連リンク みんなが知らない金太郎の話|KUMON now! 浮世絵に描かれた元服の儀 ~金太郎の成人式~|KUMON now! くもん子ども浮世絵ミュージアム

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