これまでのDTWB & KUMON協働の取り組み
【食べる×学べる=Live Well】の実現へ

吉川玄徳 代表理事
KUMONは教育格差という社会的課題の解決に貢献するため、一人でも多くの子どもたちに公文式学習の場を提供できるよう、志を同じくするパートナーと連携しています。DTWBとの協働を通じて、子どもの支援に携わるNPO法人との学習機会創出を目指し、子どもの教育分野におけるコレクティブ・インパクト実証実験を2022年6月に開始しました。
この取り組みは、様々な理由で学習支援が必要な子どもたちを主な対象とし、こども食堂などのフリースペースにて、学習能力向上につながる教育支援を行うものです。
本実証実験により成果や多くの知見を獲得することができ、特に【食べる】と【学ぶ】の2つの機能を併設することにより一定のインパクトを得られることがわかりました。
そして2023年9月からは「子どもを未来につなげる奨学助成プログラム」という、こども食堂や無料塾等が持つ機能にそれぞれ【学べる】と【食べる】の機能を追加することにより、困難を抱える子どもがより良く生きる【Live Well】のための活動を応援する正式な助成プログラムとなりました。
こども食堂には【学ぶ】機能を提供し、無料塾等の学習支援機関には【食べる】機能を提供して、2つの機能を併設する支援団体を増やすことで、より多くの困難を抱える子どもたちが、より良く生きるための活動、【Live Well】を応援する助成プログラムの中で、KUMONは主に小中学生向けプログラムに協力し、首都圏のこども食堂5施設で公文式学習を導入しました。

こども食堂には多子家庭の困窮世帯や生活保護を受ける非課税世帯の子ども、福祉施設である母子支援センターで暮らす子ども、外国籍の子どもなど、様々な背景をもつ子どもたちがいます。彼らは学習を通じて学習習慣や自信を身につけ、学習以外の生活面にもよい変化があらわれました。伴走してくれる大人のもとで、安心して学びに向き合う中で、自己肯定感が育まれています。さらに指導担当のボランティアスタッフの自己効力感が高まり定着にもつながるなど、こども食堂の皆さまの手ごたえを聞くことができました。
学習支援による“人”の変化は周囲にも良い影響をもたらしています。居場所を構成する子ども、スタッフ、保護者全ての人にとってより良い居場所になるとともに、こども食堂同士の横のつながりがもたらす安心感や切磋琢磨の風土は各施設の活動の後押しになっています。
2024年度は対象地域を全国に広げ、現在は札幌・埼玉・東京で学習支援を実施しています。DTWBとともに、子どもたちに寄り添い、助成先団体の皆さまから学び、学習支援導入の影響をふり返りながら本取り組みのスキーム等の改善を図っています。
本取り組みをより大きな社会的インパクトにつなげていくために何ができるかを議論するべく、2024年12月、DTWB社員と公文教育研究会社員による交流セッションを実施しました。
社員交流セッションの様子
交流セッションはDTWB財団に所属するデロイトトーマツグループ社員20名とKUMON社員30名が参加しました。ゲストとして認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ、一般財団法人SIIF(社会変革推進財団)の代表者らが参加。「食」と「学」に関する課題を出し合った後、「食×学び」の取り組みの拡大や発展をテーマにグループディスカッションを行い、今後に向けた提言を発表しました。

加藤有也 事業部長/インパクト・オフィサー
はじめにSIIFとDTWBによる「子どもの未来に関する現状」の共有がなされました。
SIIFの加藤事業部長/インパクト・オフィサーからは、社会課題の分析方法や、自社の戦略を検討する際のアプローチについて、SIIFでの経験や実例をもとにお話しいただきました。

そして、KUMONからはこども食堂や少年院への公文式導入での事例とともに、公文式学習で「学び続ける気持ちと、そのための方法を身につける」ことができることを共有しました。
その後、参加者は11グループに分かれ、「食と学びに関する機会格差」と題して、「食と学び」をキーワードに要素分解し、KJ法にて課題解決を目指すアクションプランを再構築するワークショップを行いました。

参加者たちは、「食」「学び」における機会格差およびそれに付随する課題を列挙し、発散的に議論を行いました。それらのつながりを模造紙上で表し関係を整理していき、課題に関する視野を広げました。

2つめのワークショップでは、「子どもの課題に対するネクストアクション」と題して、DTWB・KUMON・NPOが一丸となり、困難を抱える子どもがより良く生きるために実施してきた活動【食べる×学べる=Live Wellプロジェクト】の価値をより大きくする方法や、今の仕組みでは足りない部分を補完し、新しい価値をつくる方法を検討しました。

各グループの発表の中には、起業を想定し(株)3SHOKUというネーミングまで考えたものもありました。「働けない親の子がいるかもしれない、だから就職支援を。“食”のビジネスで“職”を提供したい。ビジネスを行う上ではお金の計算も必要になる。子どもも学ぶ、親もビジネスを学ぶ、親と子が学べる場にしたい。“色”は色々な人がいていいし、いろいろな勉強をして、自分の方向性、自分の色を見つけていけるようにと、“職”“食”“色”の3 SHOKUです」と会場を沸かせました。
本セッション終了後、参加者からは「“子どものためを思って○○したい”という共通のベクトルのもと、立場は違えど本気で語り合い、解を出そうと本気で動けた」「複雑な課題だからこそ、複数の人が介し、対峙していくことが、大きな可能性を生み出す重要なアクションだと実感した」「子どもをとりまく格差・課題を整理するタスクを通して、様々な格差・課題が密接につながり合っていること、そして、その中で突破口になるような対策(オセロの多くの駒を黒から白にする一枚の駒)がどこにありそうかと探ることの重要性を感じた」「何かしらアクションを起こしていく、小さいながらも動いていくことで変わることもあるのだろうということもデロイトトーマツの皆様が大切にされており、その点も感銘を受けました」などの感想が聞けました。
セッションのアウトプットを受けて今後目指すこと

渋谷雅人 理事
今回の交流セッションでは、各グループから、拡大のための持続的な人・ファンドの獲得や、就労・就学、スポーツ、高齢者など新たな切り口との掛け合わせなど様々な具体策が挙がりました。
また、「こども食堂を自分ごと化して考えたこの時間自体がこども食堂の応援のひとつの形、とても意義のある時間」とむすびえの渋谷理事からも価値づけいただきました。

公文教育研究会 常務取締役の井上から「教室の向こう側には教室に通えない子どもたちがいる。今日のこの場は、明日に向かう一歩。そういう時間を持てたことは素晴らしいこと。明日に向けての一歩を踏み出す勇気をもつこと、それが社会を変えていくことになる」とメッセージがありました。
SIIFの加藤インパクト・オフィサーからは「参加者の皆さまは非常に熱意が高く、真剣に耳を傾けてくださったように思いました。会場全体が“未来を担う子どもたちのために”という共通の思いに包まれているように感じられたことが印象的でした。次世代への願いを共有できる素敵なチームと出会えたことは、私自身にとっても大きな喜びであり、これからの活動へのさらなるモチベーションとなりました」と感想をいただきました。
そして、DTWB吉川代表理事からも「今日出たアイディアは必ずひとつでも形にします。奨学助成プログラムの取り組みは始まって3年ですが、10年20年30年…50年と続けていかないといけないと思っています」と、本プロジェクトの発展への機運も高まりました。
25年度助成事業の公募開始のお知らせ
第3回 子どもを未来につなげる奨学助成プログラムの公募を開始|デロイト トーマツ ウェルビーイング財団|デロイト トーマツ グループ|Deloitte