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Vol.451 2022.08.23

KUMONの取り組むSDGsを考える③前編

公文式学習のコツコツ頑張る力
持続可能な地球を作る

2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標が「SDGs(=Sustainable Development Goals)」。こちらの企画では、各界のオピニオンリーダーや実践者の方々をお招きして、公文教育研究会のSDGs委員会・アンバサダーメンバーの社員との対話を通じ、教育を通じて社会の課題解決へのグローバルな貢献を目指すKUMONの取り組みへの理解を深めていきます。
今回は、世界中に友だちを作り、社会課題を自分のこととして捉える「自分ごと化プロジェクト」代表の鈴木健斗さんをお招きして、プロジェクトの活動や学習経験について伺いながら、SDGsの「自分ごと化」について考えました。

目次

鈴木 健斗(すずき けんと)

広島県出身。公文式学習経験者。中高一貫校在学中だった高校2年時に、世界各国から選抜された高校生を受入れる国際的な民間教育機関「ユナイテッド・ワールド・カレッジ」ドイツ校に留学。その後は米国ブラウン大学に進学し、2022年に卒業。同大大学院に進学予定。世界中に友だちを作り、社会課題を自分のこととして捉える「自分ごと化プロジェクト」代表としても活動中。

公文教育研究会 会談参加メンバー(敬称略)
静岡事務局 安藤
埼玉事務局 中元
総務部 大西

中高一貫校を高2で自主退学してドイツに留学
留学経験をきっかけに「自分ごと化」について深く考える

―― まずは鈴木さんの活動について教えていただけますか?
鈴木健斗さん(以下、鈴木):私は現在、一般社団法人「自分ごと化プロジェクト」の代表をしています。また同時に、2022年5月にアメリカのブラウン大学を卒業し、この9月に同大学の公衆衛生大学院に進学する予定です。自分ごと化プロジェクトは2020年11月に発足したもので、その名のとおり、とにかくどういったことでも自分のこととして捉えられるようにする、を目指す団体です。同時に「世界中に友だちを」をスローガンに、友だちづくりを通して世界中の出来事や人々について“自分ごと化”がはかれるような活動を行っております。

鈴木 健斗さん

この団体を立ち上げたきっかけは私自身の経歴にあります。私は広島で生まれたあと、福岡に10年住んでいました。その後広島に戻り、中高一貫校に進学しましたが、高校2年生の夏休みに、通っていた中高一貫校を自主退学して、そこから2年間、ユナイテッド・ワールド・カレッジという国際的な団体が管轄しているドイツの学校に留学しました。世界100ヵ国以上から生徒が選抜で集まっていて、自分も日本の代表として行きました。

2016年当時は、ドイツの中でもとくに難民問題がホットな話題として取り上げられていました。でも、私がその時どのように捉えたかというと、恥ずかしながら「大変な人もいるんだな」程度にしか思っていませんでした。そんななか実際に、アフガニスタンやシリアなど、色々な国からドイツに難民としてきている同級生と2年間生活を共にします。そうした環境を通じて、難民問題が自然と“自分ごと化”する経験ができました。

こうした経験を再現できないかと、2年ほど前、コロナ禍で悶々としていた時に思いつきました。現在はオンラインではありますが、まずは実体験として、そういった環境を日本中の若者に届けようという思いで「自分ごと化プロジェクト」を始めました。

―― 具体的にはどのような活動をされているのですか?

鈴木:プロジェクトでは、基本的にはふたつやっていることがあります。ひとつ目が通常セッション、もうひとつが学校セッションと呼んでいるものです。通常セッションはオンラインで、2ヵ月に1回、相手国を変えながら、1ヵ月目に3回、2ヵ月目に3回を1クールとしています。

前半3回は、自分ごと化できる基盤を作るフェーズで、「日常生活をどう送っているの?」「何時に学校に行くの?」「お弁当あるいは給食を食べるの?」そういったことも含めて、伝統文化や日常生活の話をします。ひとつでも自身の振り返りにつなげて自分ごと化できるベースを作っていきます。

2ヵ月目の3回に関しては、もっと踏み込んだ、具体的な社会課題を取り上げて、それについて話をします。このようなことを2020年11月からやっています。相手国は、たとえば2022年の6月と7月はウクライナです。今後も続けていきたいと思っています。

学校セッションの方も基本的に同じですが、ご依頼をいただいた日本の学校と海外の学校をつなぐ、完全なオーダーメイドのプログラムです。依頼元の学校のご希望に沿った内容かつ期間で提供をします。それに関しても自分ごと化をベースに置いて行います。

プロジェクトで大切にしていること

プロジェクトで大切にしている
「誰一人取り残さない」こと

埼玉事務局 中元:「自分ごと化プロジェクト」ではどのようなことを意識して活動されているのでしょうか。

鈴木:自分ごと化プロジェクトの活動において一番大事にしているのは「誰一人取り残さない」ことです。グローバルな対話と言われると、基本的にまず英語が話せないといけない、また意識高い系などと言われている人たちが入るところ、というイメージがあります。

そういった印象を払拭したいという思いがあったので、通常セッションにせよ学校セッションにせよ、参加者の皆さんには「一番大事にしているのは、何でもいいから自分ごと化をすることです。英語で話すことは目的ではなく、あくまで手段です。目的は自分ごと化ですから、それを忘れないでください。」と伝えています。自分を含めて、日本語と英語を自由に話せるオーガナイザーを集めているので、英語ができなくてもその場を引け目に感じることができるだけないようにしています。

最初は英語も喋れず、努力してもやっぱり引け目に感じてしまい、消極的になっている方がいました。でも毎回来てくれるうちに、英語が話せないことを引け目に感じなくなり、カタコトの英語でも話してみよう、と会話に一生懸命参加してくれています。そうした個人の心の変化があることも発見です。

静岡事務局 安藤:ご経験の中で、日本の学生たちと、海外の学生たちの傾向や考え方の違いを感じることはありますか? 鈴木さんの視点から、日本の学生たちはここがすごいけど、ここがちょっと課題かなとか、感じられたことを教えていただきたいです。

鈴木 健斗さん

鈴木:日本の学生たちは準備をすることにはすごく長けていると思います。例えばセッションで3グループにわかれて10人でプレゼンを作ってくださいね、となった時、一言一句間違えないように英語で文章を書いて読むことには長けています。

逆に核心を突くような質問をしたときには、「うーん……」っていう反応をする。それは別にいい悪いじゃなく、そういった訓練を受けてないだけなんです。それはお国柄といいますか、何を重要視しているのかという話になってくると思います。

例えば今一緒にお仕事させていただているフィリピンの高校は、西洋的なカリキュラムを取り入れている学校なので、少人数ディスカッションやクリティカルシンキングを重要視していて、そういうところがすごく上手い、などがありますね。

安藤:自分自身の経験でも、クリティカルに物事を考えたり、確かにそういうトレーニングは少なかった印象があります。

鈴木:そうですね。難しいなと思うのは、日本も学校によってはグローバル化がどんどん進んでいて、トレーニングを自主的に受けているような子や、そういうことに慣れている海外帰国生がたくさんいる学校では、同じクラスの中でも相当差が出てしまうことだと思います。

でも、このプロジェクトを2年ぐらいやってきてわかったのは、そういった手を挙げない子、その場では話さないような子も、内に秘めた思いはたくさんあるということです。たっぷり時間をとってあげて、時間がかかってもいい、英語が流暢じゃなくてもいいんだよ、という姿勢を我々が示し続けてあげることによって、ちょっとずつ安心して、話すことができる。

一貫してその姿勢を貫き続ければ、個人個人の中でも変化が見られていくのかな、と思っています。一人ひとりの可能性を引き出しながら能力を上げていくことを重要視しているつもりです。

公文式学習のきっかけ・活動の転機

超低体重児で生まれたことが
公文式学習のきっかけであり、自身の活動の転機にも

―― 鈴木さんが現在の活動に至るまでのご経歴をおきかせください。

私自身が、798gと超低体重児で生まれたこともあり、母親も含め、家族も大変な思いをして育ちました。それを中学3年生の時に初めて親から聞かされて、すごく衝撃を受けたのを覚えています。

当然、それまでにはそのことを実感した記憶も引け目に思ったこともなかったのですが、その事実に衝撃で心が動きました。これをきっかけに、どういった形でもいいので、NICU(=新生児集中治療室)をとりまくコミュニティ、医療従事者の方々や当事者とその家族の方々に何かを還元したいな、と思ったんです。

ユナイテッド・ワールド・カレッジでドイツに行って、世界各国の文化や社会問題に触れる中で、日本ではまだそこまでメジャーではないですが、公衆衛生学と文化人類学にすごく惹かれました。このふたつを専門的に学べる大学に行くことを目標にして、好奇心を満たす柔軟なカリキュラムを提供しているアメリカのブラウン大学に進学しました。

―― 鈴木さんは公文式学習のご経験者と伺っています。

鈴木:公文を始めたのは0歳の時からだったようです。もう引退していますが、離れて住む母方の祖母が当時、公文の指導者で、祖母は公文が大好きでした。今でも口を開けば公文の話をするくらいなのですが(笑)、祖母は私が小さく生まれたからといって引け目に感じることだけはさせたくない、むしろ他の子より先取り的なことをさせよう、と考えたそうです。

公文をやって身についたこととして一番大きく実感があるのは、コツコツ何かに取り組むことができる力ですかね。そして計画を立てる力だと思います。親のサポートもありましたが、毎日どんなに少なくてもいいので公文の教材をすることを小さい頃からやっていたので、毎日何か勉強をすることは、あまり苦になりませんでした。

鈴木 健斗さん

中学受験のときもそうでしたが、現在のように研究職になるとより一層コツコツ取り組むことばかりなので、毎日成果が出なくてもいかにがむしゃらに研究を頑張り続けるか、が一番重要になってきます。そうした面にも生きているのかなと思います。

もうひとつ、教室の環境という点で印象に残っているのが、同い年の同級生でも自分より先の教材をやっている子もいれば、自分より手前の教材をやっている子もいる中で、どの教材をやっているから偉いとかは一切ないような印象があったことです。

それはおそらく私の通った教室の先生方が、分け隔てなく接してくれて、自分のペースでコツコツ頑張ることを最優先してくださったからだと思います。ユナイテッド・ワールド・カレッジや今の大学でもそうですけれど、世界中には本当にいろんな人たちがいて、その中で自分を失わない力はすごく大事だと思うんです。

後編を読む

関連リンク自分ごと化プロジェクト鈴木健斗の今でしょ!マインドフルネスUWC JAPAN トップページ


鈴木 健斗さん  

後編のインタビューから

-社会課題に向き合うために重要な「自分ごと化」
-大切なのはコツコツ頑張ることができる力
-夢は一人ひとりが自らの生きがいを持てる社会を作ること

後編を読む

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