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Vol.424 2021.11.26

KUMONの取り組むSDGsを考える①前編

KUMONの理念を実現する先に
SDGs達成の未来がある

2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標が「SDGs(=Sustainable Development Goals)」。こちらの企画では、各界のオピニオンリーダーや実践者の方々をお招きしてKUMONのSDGsへ向けた取り組みへの理解を深め、世の中が求める「質の高い教育」を考えていきます。
今回は広島大学教育開発国際協力研究センター長で、SDGsの第4目標「教育」に関わる国際的調整組織である「SDG-Education 2030 Steering Committee (ステアリングコミッティ)」の共同議長を務めた吉田和浩教授をお招きして、KUMON社長室長の徳永と対談を実施。SDGsを理解する上で押さえておくべきポイントをお話しいただきました。

目次

吉田 和浩(よしだ かずひろ)

長野県生まれ。獨協大学外国語学部英語学科を卒業後、商社に就職。海外コンサルティング企業協会の研究員に転じ、英国のサセックス大学にて開発学修士を取得。その後世界銀行に入行し、アフリカ局人的資源エコノミストとしてアフリカ各国の教育プロジェクトを担当、人間開発ネットワーク副総裁室業務官、国際協力銀行開発セクター部社会開発班課長などを経て、2006年4月より広島大学教育開発国際協力研究センターに着任し、13年4月には同センター長に就任。SDGsの第4目標「教育」に関わる国際的調整組織であるSDG-Education 2030 Steering Committeeの共同議長を2020年までの2年間担当。

公文の理念に通じる、SDGsの第4目標「質の高い教育をみんなに」

社長室長 徳永(以下、徳永):吉田先生には以前もスペシャルインタビューで登場していただきましたが、現在のご活動について改めてお伺いできればと思います。

Kumon now!スペシャルインタビュー(2018年)

SDGs対談

吉田和浩先生(以下、吉田): 前回(2018年)にインタビューをお受けしたときには、すでにSDGsの第4目標「質の高い教育をみんなに」の素案を策定した委員会に参加しておりました。2013年頃からユネスコが事務局を務めるEFA(=Education for All:万人のための教育)推進委員会のアジア太平洋地域の代表として活動しておりまして、2015年にSDGsが採択されてからは、教育に関わる国際的調整組織であるSDG-Education 2030 Steering Committeeの共同議長を2019年から2年間担当していました。他には文科省と環境省が主催しているESD(持続可能な開発のための教育)円卓会議や、日本ユネスコ国内委員会などにも参加しています。さまざまな情報に接していますし、批判的な解釈もできるし、ということで重宝がっていただいているのかと思います。
また大学の研究者としては、アフリカ、アジアの教育において、政策と実践が連携できているか、政策的な意図と反して機能していないのはなぜか、政策につながるよい実践はどう行われているのか…多様な観点から研究を進めています。
そのかたわら、広島大学教育開発国際協力研究センターで国際会議を主催したり、JICAからの要請を受託して途上国の教育行政官を訓練プログラムに受け入れたりと…。
いずれにせよ全部に通じているのは、特にアフリカ、アジアの教育について研究し、問題や改善策を考え、学んだことを学校の先生から大臣クラスの人たちまで様々な立場の方と共有するということでしょうか。
本日はテーマがSDGsですので、KUMONがどのような発信をされているか現状をお伺いできればと思います。

徳永:先生がおっしゃっているSDGsの4番目のゴール、「質の高い教育をみんなに」に関していえば、KUMONはSDGsという言葉ができるずっと前、創立当初から意識して取り組んでいました。
KUMONの事業としての発祥は、創始者である公文公が、自学自習でひとりでも多くの子どもに学習を届けたいと1955年に大阪に開いた教室です。1958年に大阪数学研究会(前身)を創立し、その4年後には、「海外にも公文式を広げるんだ!」と大きな夢を事業計画に描いていたんですね。
実際1974年にアメリカ・ニューヨークで算数・数学教室を開いたのが海外展開の1歩目で、1989年にはニューズウィーク誌に、その翌年にはタイム誌に記事が掲載されたことで問い合わせを受けるようになり、そこから海外展開が活発になりました。1970年代にはすでにブラジルや台湾、ドイツで教室が開設し、現在は50を超える国と地域で展開しています。
吉田先生が注力されているアフリカ、アジアの教育については、私たちも南アフリカやケニア、バングラデシュなどで展開しています。バングラデシュにおいては、KUMON単独ではなく、JICAの支援、JETROなどの協力を受けて、NGO組織のBRACと協働し、教室を開設しています。また、収益の一部をつかって、貧困層の子どもたちにも公文式学習を届けていくスキームについて、まだ道半ばではありますが、取り組んでおります。

SDGsに関わることも、知らずに実行している

公文の理念に通じる、SDGsの第4目標「質の高い教育をみんなに」

吉田:すでに気になるキーワードが数々出てきましたが、BRACと協力というのは着眼点が素晴らしいですね。

SDGs対談

徳永:先ごろ、創始者が掲げていた理念に立ち返る機会があったのですが、その言葉というのが「われわれは 個々の人間に与えられている可能性を発見し その能力を最大限に伸ばすことにより 健全にして有能な人材の育成をはかり 地球社会に貢献する」なんです。
実は私も入社当時は、社会人になって「地球社会に貢献」という言葉を口にすることには戸惑いがあって、気恥ずかしかった記憶があります。しかし、それが創始者の想いであり、ここに向かって活動しているんだと改めて振り返るようになりました。近ごろはSDGsと発するたびに、一人ひとりが創始者の想いと照らし合わせながら、どこに向かって活動しているのか、私たちに何ができるのか模索している最中です。

吉田:このところ業務としてSDGsに携わる方々も増えておりますが、「わが社がやっていることは実は前からSDGs的なことなんだ」と気づかれるところがかなり多いのではないかと思うんです。
SDGsは便宜上、世界の開発や発展という枠組みの形を取っていますが、一番の問題は我々の日々の営みをどうするのかということなんですね。
日本が自然や、人と人同士、また他国も含めてどのように関わって生活してきたか、日本が大切にしているものが、SDGsが求めているものと親和性が高いとか共鳴するものもたくさんあるのです。自分たちが誇りを持っているけど当然のものと見なしていたことを、SDGsを機に見直し、発信してみるのもいいと思います。
そこで立ち止まってみると、SDGs的文脈で語られる“インクルージョン” (多様な人々が互いに個性を認め、一体感を持って働いている状態)を理解した上でやっていたのか?あるいは、長年培ってきたなかで、もうその恩恵にあやかっているから何がいいのか特に気にしたことがないのか、もしくは、なぜ実現できていたのか理解できているか、など様々なことがわかると思います。
私たちの教育の領域でも、何がいいのか特別気にしたことはないですが、外国から見ると日本型の授業研究がいいと言われるような部分があります。たとえば「どうして日本は先生と先生の間に信頼関係ができているんですか?」と聞かれても、「以前からそういうものなんです」としか答えられないわけですよ。

徳永:確かに、そういうところは往々にしてありますね。

外から眺め、自らを吟味する

教育は社会の鏡。SDGsという時代的な文脈において、外から見てみることは重要

SDGs対談

吉田:なぜそれが機能しているのか、良い特徴を言語化するのは海外の方は得意だろうし、彼らに説明してあげられたら、単純に真似することもできるだろうと思います。
しかし、教育は社会の鏡ですから、社会の特徴は教育にも反映されるものです。日本でうまく機能しているモデルがそのままよその国でもうまくいくかというと、必ずしもそうではないんですね。だとしたら、うまくいっていた理由が何で、今もそれが正常に機能しているのかと検証するべきタイミングなわけです。
今、SDGsという時代的な文脈において、直さなきゃいけない、守らなきゃいけないところをもう一回整理するというか、外から見てみることは重要だと思います。うまくいっていると安心しているうちに一転して、社会の綻びとともに機能不全に陥っているケースだってあるわけです。2030年に達成する目標として2015年に採択され、今2021年ですからSDGs時代に入って早や7年が経過しています。

徳永:もはや、半分近く終わろうとしているわけですね。

吉田:まさに今こそ中間レビューをするべきタイミングで、日本は何をしてきてきたのかを考えなければいけないと思いますね。日本の中でやってきたことを吟味するのは、一見、自分たちの畑を耕すような行為ですが、やってきたことに意義や意味があるのであれば、その結果を外に発信できると思います。
それは教育を通じた世界への貢献にも国際協力にも十分なり得ますし、日本らしい立ち位置でもあると思います。持っている人が持っていない人を助ける「援助」とはまた異なる、日本独自のSDGs的な良さですよね。

徳永:おっしゃっていただいた通り、私たちKUMONもSDGsをきっかけに、自分たちが大切にしてきたことや実践してきたことを吟味していく必要があると思います。自分たちの畑を耕しながら、直さないといけないところや、その一方でよい部分も見えてくる。見出すことができた意義や意味、強みについては、教育を通じた世界への貢献のためにも、自信をもって発信していかなければいけませんね。

後編を読む

関連リンク 広島大学 教育開発国際協力研究センター 広島大学 教育開発国際協力研究センター長 吉田和浩先生|KUMON now!スペシャルインタビュー

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