バングラデシュでのソーシャルビジネスのパートナーに選ばれたKUMON
笠原先生(以下、笠原):BRACのアベド総裁は、ご夫人の親族を通じてKUMONをかねてよりご存じで、その頃から公文式学習法に関心を持たれていたそうです。私がバングラデシュでアベド総裁とKUMONについて話題にしたところ、アベド総裁から、「日本の教育企業と組んだソーシャルビジネスをやりたい」という思いをきかせていただきました。BRACでは、経済的な理由から学校に行けない子どもたちを支援するBRACスクールを運営していたこともあるでしょう。
公文教育研究会 池上(以下、池上):アベド総裁は、なぜ日本の教育企業のなかで、私たち公文教育研究会をパートナーに選んだのでしょうか?
笠原:私はアベド総裁に、私が惹かれたKUMONの教育事業を支える考え方について、ふたつお伝えしたことがあります。まずは、自分で苦労して答えを見出した喜びを知っている子は大きく伸びる可能性がある、ということ。もうひとつ、学ぶ喜びを知り自分で勉強する習慣がついた子はもっと伸びる。このことをお伝えしたときに、アベド総裁の表情が変わったことを今でもおぼえています。
池上:アベド総裁は、私たちKUMONの本質を捉えていただいたのですね。私も何度かアベド総裁にお会いしましたが、BRACとKUMONのお互いの理念が共通していたことも、私たちの協働が大きく進んだポイントだと考えています。
BRACとKUMONの取り組みが世界に広がる可能性
笠原:貧困層の子どもたちを対象に運営しているBRACスクールは、教育を通じてバングラデシュの社会の発展と安定のために貢献してきました。そこにKUMONがBRACと組んで、「中高所得層向けの教室運営で利益を確保しながら、貧困層向けに運営されている無償のBRACスクールで持続的に公文式学習を提供していく」、これをワンセットにする。学校に行けない子どもたちの教育を、チャリティやボランティアではなく、ソーシャルビジネスという形で取り組んだこのスキームは画期的だと私は思っています。
池上:ありがとうございます。BRACと組んでバングラデシュで実現したこの取り組みはもっと広がる、広げなくてはいけないと思っています。
笠原:BRACは世界14ヵ国にオフィスを展開していて、アフリカ諸国でもステータスの高いNGOとして認められています。アフリカでもバングラデシュと同じように初等教育を受けられずに貧困が再生産されていく状況があります。それこそKUMONが各地でBRACと組んで、そうした社会課題を解決できる可能性があると思います。
池上:アベド総裁は、KUMONとの取り組みにはいつも最後までコミットされていました。トップの立場であるにもかかわらず、プロジェクトの細かいところまでご覧になっていて、会議のなかでの発言も鋭い。場の空気がピリッとしたことが印象的でした。それだけKUMONに信頼を寄せてくださっていることを実感しましたし、このプロジェクトがずっと続くように遺志を継いでいきたいものです。
今年1月には、新しいBRACの経営陣とKUMONのプロジェクトメンバーが面会し、このプロジェクトの重要性やプロジェクトにかける想いを共有しています。現代表のアシフ氏も、アベド総裁同様、このプロジェクトに大きな期待を寄せていただいていると聞いています。
アベド総裁の最期の言葉、“How’s Kumon?”
笠原:これはアベド総裁夫人がお話されたエピソードなのですが、亡くなられる直前の病床で、総裁は脳のご病気でなかなかお話ができなかったなか、一番最後に夫人が聞き取れた質問が、“How’s Kumon?”だったそうです。KUMONのことを最後の最後まで気にかけてくださっていたんですね。
池上:それは感激です。非常に嬉しいことです。それと同時に大きな責任も感じますね。
笠原:池上社長が学生たちに企業説明をされるとき、このBRACとKUMONのプロジェクトについて語ると学生たちの目の色が変わるそうですね。まさにそれはこのプロジェクトの本質を突いているように思うのですが、そのあたりはどのようにお考えでしょうか。
池上:このプロジェクトは、まずバングラデシュという国に対して貢献することができます。そして、BRACと協働するスキームを作り、その仕組みをバングラデシュだけじゃなくて他の国にも提供できる可能性もあります。さらに、持続可能な開発目標「SDGs」の4番目、「質の高い教育をみんなに」に貢献することでもあります。これは、我々の事業の本質でもあります。BRACと組んだことで、社会貢献を目に見える形にできたのはとても大きかったですね。
アベド総裁は私たちに、世紀を超えて続く組織のお話をされたことがあります。ヨーロッパにおいて17世紀から連綿と続いている組織は、500のうち33しかなく、その大部分は大学であるということでした。アベド総裁は、「社会において人材育成はなくてはならないものであることと、大学は自治組織だったから続いたのだと思う。KUMONも今後長く社会に求められ、続いていくだろう」とおっしゃっていただきました。アベド総裁は、教育を通じて社会貢献するような組織が世界にあり続けなければいけない、ということを訴えたかったのだろうと思います。
笠原:教育こそが貧困の再生産を止める大きな手段ですからね。私はSDGsの一番目に教育があっていいとすら思っているほどです。アベド総裁の遺志を継いだKUMONの今後に期待しています。
【笠原 清志(かさはら きよし)学長プロフィール】
跡見学園女子大学学長。慶應義塾大学社会学研究科博士課程単位取得修了(社会学博士)。1978年から1980年まで、ユーゴスラビアのベオグラード大学経済学部に留学、1986年4月から立教大学社会学部助教授に就任。その後同学部教授、経営学部教授、副総長を歴任した後、2018年より現職。著書に『自主管理制度の変遷と社会的統合』(時潮社)、『社会主義と個人 ―ユーゴとポーランドから』(集英社新書)ほか多数。
関連リンク 貧困層の子どもたちへ持続的な教育支援を目指して|KUMON now! トピックス 跡見学園女子大学 学長 笠原 清志先生|KUMON now! スペシャルインタビュー
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