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KUMONグループの活動  2020/09/01更新

Vol.369 特別企画 子育てのヒント‐「自立」のためにできること(2)  

子どもの自立「甘え」は欠かせない
「甘えさせる」「甘やかす」の見極めが大事

お話:子育てカウンセラー・心療内科医 明橋大二先生

子どもを育てる親の願いであり、公文式学習が目指すところのひとつが、子どもの「自立」。このシリーズでは、さまざまな現場で今、ご活躍されている識者の方にお話を伺い、子どもの「自立」を考えながら、今日から取り組める具体的なヒントを探ります。今回は、「子育てハッピーアドバイス」シリーズの著者で、心療内科医の明橋大二先生に伺いました。

明橋 大二(あけはし だいじ)

心療内科医・子育てカウンセラー。現在は、真生会富山病院心療内科部長をはじめ、児童相談所嘱託医、NPO法人子どもの権利支援センターぱれっと理事長を兼務。「子育てハッピーアドバイス」シリーズほか著書多数。

「自己肯定感」は大事だが、最近は新たな風潮を危惧

私は、心療内科医として診察室で診療をする一方、子育てカウンセラーとしても執筆、講演活動を続けています。また、児童相談所嘱託医、NPO法人理事長として、子どもの虐待防止に取り組んでいます。最近外来には「コロナ鬱」「コロナ不安」というような方も増えてきました。コロナは人を孤立させるというのが特徴です。人と会えず、分断されることでストレスが発散されにくくなり、イライラや不安を引き起こしているのです。

子育てカウンセラーとしては、約10年前から、子どもの「自己肯定感」が大事だと言い続けています。自分は大切な存在であり、生きている価値がある。そう思える自己肯定感を育てることは、子どもの心の成長の土台となります。しつけや学習は、その先の話です。

以前は、こういうアドバイスで納得し、自信を回復する保護者が多かったのですが、最近は、「子どもの自己肯定感を育てなさいと言われると逆に辛くなる」という声が聞かれるようになりました。これは、自分としては思ってもみなかった反応です。自己肯定感を持てるかどうかも親の育て方次第、親の責任、という風潮が親にとってプレッシャーとなっているのだと思います。

また、子どもの自己肯定感を育てることがなぜ苦しいのか。それは、親の自己肯定感が総じて低いということにもあると気づきました。しかしそれは決して親の責任ではない。偏差値偏向教育や、校内暴力で荒れる学校など、親世代が育ってきた時代を考えると無理もないことなのです。

親も誰かの力を頼っていいことを社会全体で共有しよう

時々SOSを適切に出せず、子どもを不幸にしてしまうような親の事件も起こります。ですから、今、一番大事なのは、親の支援だと考えています。自分を責めて蟻地獄にはまる前に、第三者の力を頼ってほしい。人の力を頼って、自分のケアをしていいんだよという意識を、社会全体で共有することが必要です。

飛行機に搭乗していて緊急時に下りてくる酸素マスクの着用の順番が、分かりやすい例えです。この酸素マスクをつける順番は、親が先か、子が先か、どちらだと思いますか? 機内の「安全のしおり」にも書かれていますが、正解は、親です。まずは、自分のケアをし、それから子どものケアをする。子どもに酸素マスクをつけているうちに自分が酸欠に陥ってしまえば、親の命も子どもの命も危険にさらされてしまうからです。

「子どもを放って自分を先に」などと親を批判するのは間違いです。このことは、子育てのすべてにあてはまると思ってください。親が心身ともに元気でいることが、子どもにとっても大事なのです。

パートナーや実家の親など、身近に自分をほめてくれる人を見つけることも大切です。案外、実家の親だと、「私たちの時代は一人で何人も育て上げたのに、あなたはなんでできないの」など、ダメ出しをされてしまうということもあるかもしれません。そういう場合は、SNSを活用したり、身近なママ友を頼ったりするといいと思います。もちろん、行政や学校、保育園の先生でもいい。たくさん、褒め言葉のシャワーを浴びて、自分で自分を認める練習をしてください。

子ども時代の「甘え」は自立に欠かせない要素

子どもの心は「依存」と「自立」を行ったり来たりして大きくなると言われています。
「依存」は言葉を変えると「甘え」、「自立」は「反抗」です。幼少期、子どもは親に完全に依存し安心感を充分にもらうと、だんだん心の中に自由になりたいという気持ちがでてきます。それが意欲です。そして自立の世界に向かう。自立の世界は自由でなんでも好きなようにできますが、そのうち不安という気持ちが出てきます。不安が強くなると親に甘えて依存する世界に戻る。そしてまた甘えて安心感をもらうとまた不自由を感じて自立の世界へ出て行く…という具合です。

実は子どもに「甘えさせる」ことは、とても大事です。「甘えさせないことが自立につながる」と思われがちですが、それは違います。自立のもととなるのは「意欲」。「意欲」は「安心感」から生まれ、「安心感」は「甘える」ことで生まれます。子ども時代の「甘え」は自立に欠かせない要素なのです。ですから10歳くらいまでは十分に甘えさせてください。ただその時、「甘えさせる」ことと「甘やかす」ことは違う、ということも知って頂きたいと思います。

「甘えさせる」は、子どもの「抱っこして」「話を聞いて」といった情緒的な要求に応えること。また、子どもがどうしてもできないことを手助けすることです。「甘やかす」は、金銭や欲しいものなど物質的な要求に無制限に応えること。また、子どもが自分でできることを大人がやってしまうことです。

この話をすると、どこまでが甘えさせることでどこからが甘やかしになるのか、という疑問が出てくるでしょう。しかし私は、そういう疑問が親御さんに出てくる時点で、その子育てはOKだと思っています。問題なのは、両極端、すべて突き放す関わり、あるいは逆に全て親が世話してしまう関わりです。逆に言うと、どこまで..と悩む親御さんはすでにどこかで線を引いて、ここまではOKだけどここからはダメとやっているということです。それでいいんです。両極端にならないように親が悩みながらラインを引いていくことが大事なのです。

もう一つ、大切なことは、子どもが自分でやろうとした時にそれをしっかりほめる、ということです。子どもですから失敗することもあります。その時に、厳しく叱られると、自信を失って、もう二度とやろうとしなくなるかもしれません。でも失敗しても、「やろうとしただけでもがんぱったよ。次はきっとできるよ!」と認めてもらうと、またチャレンジしようとする意欲につながります。それが、子どもの自立心を育てることになるのだと思います。

まとめ ~「自立」のためにできること~

・自己肯定感を育てることは、子どもの心の成長の土台となる。しつけや学習は、その先にある。
・子ども時代の「甘え」は自立に欠かせないが、「甘えさせる」ことと、「甘やかす」ことは違う。 「甘えさせる」は情緒的な要求に応えること、「甘やかす」は物質的な要求に無制限に応えること。
・子どもが自分でやろうとした時、たとえ失敗したとしても、「やろうとしたこと」をほめるのが大事。

関連リンク
心療内科医 明橋大二先生|KUMON now! スペシャルインタビュー

明橋大二OFFICIAL SITE

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