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Vol.379 2020.11.17

特別企画 子育てのヒント‐「自立」のためにできること(3)

子どものことをたくさんほめられる
気持ちのゆとりを心がけよう

お話:教育評論家 親野智可等先生

子どもを育てる親の願いであり、公文式学習が目指すところのひとつが、子どもの「自立」。このシリーズでは、さまざまな現場で今、ご活躍されている識者の方にお話を伺い、子どもの「自立」を考えながら、今日から取り組める具体的なヒントを探ります。今回は、教育評論家として書籍のベストセラーも多数、新聞・雑誌等マスメディアでのコメントのほか、TwitterやYouTubeでの情報発信にも精力的に取り組まれている親野智可等先生に聞きました。

目次

    親野 智可等(おやの ちから)

    公立小学校の教員として23年間勤務した経験をもとに教育評論家へと転身。2003年より配信するメールマガジン「親力で決まる子供の将来」は、子育て中の保護者の支持を集め、まぐまぐメルマガ大賞の教育・研究部門では5年連続の第一位となる。TwitterとYouTube「親力チャンネル」とブログ「親力講座」で毎日発信中。詳細は「親力」で検索。

    動画やSNSも活用しながら今どきの親に寄り添い情報発信

    私は23年間の小学校の教師経験をもとに、教育評論家として、ブログ「親力講座」やメールマガジン「親力で決まる子供の将来」を通じて、子育てやしつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案してきました。

    新型コロナウイルスの影響で対面での講演会ができなくなってしまったため、最近は、YouTubeに「親力チャンネル」を開設し、子育て中の保護者の皆さんに向けた情報発信に力を入れています。60歳を過ぎてからのチャレンジですから、一念発起でしたが、SNSは自由にやれるのがいいですね。自分も楽しんでいますし、活字離れが顕著な若い保護者の方にも喜んでいただき、手応えを感じています。

    短い文字数で深いことは言えませんが、リマインダー機能のつもりでツイッターも積極的に使っています。「子どもを伸ばすにはほめるのが一番」「親はしっかりやって当たり前と思われている。だから誰からもほめられない。せめて、自分で自分をほめよう」など、親御さんも分かっているけど毎日の生活の中で実践することが難しいことを、毎日繰り返してつぶやくようにしています。

    親は否定的に叱らず、ゆったりと構えることが大事

    コロナの問題が長引くに連れて、親子が家で一緒に過ごす時間は増える一方です。今まで気づかなかった家族の嫌な面も目についてしまうのでしょう。とくに、親は子どものだらしない姿やできないことが気になり、否定的な言葉を投げかけてしまいがちです。「ゴロゴロばかりしていてはダメ」「やりっぱなしは良くないでしょう」など。

    しかし、否定的な言葉でたくさん叱られると、子どもには親に大切にされていないという感情が芽生え、自己肯定感が下がります。そうすると親子関係が悪化し、さらにまた、子どもの自己肯定感が悪くなる。この悪循環に陥ってしまいます。

    休校措置による学力低下を心配する親御さんも多いでしょう。気持ちは分かります。しかし、不安でイライラすると、それは必ず子どもに伝わります。親が大きくゆったりと構えることが大事です。気持ちにゆとりを持って、子どもを否定的に叱るのは避けたいですね。

    特別企画 子育てのヒント

    多くの親御さんが、子育ての最終的な目標を、「自学自習」と「自立」と考えていると思います。では、「自立」とは何でしょう? 講演会などでこう質問すると、「朝、自分で起きられる」や、「親に言われなくても自分で勉強を始める」などと答える親御さんがほとんどです。もちろんこれらは、自立への大切な第一歩。しかし、それができる=自立ではないと私は考えています。

    小さいうちからきちんとした生活習慣を身につけることは大事です。例えば、朝、子どもがなかなか自分で起きられない場合は、目覚まし時計を何個もセットするとか、食後の歯磨きを忘れてしまいがちなら、食卓に歯ブラシを置いておくとか、親がいろいろ工夫をしてみましょう。

    一方で、生まれ持った性格や性質というのは、子どもによってさまざまで、どうしても整理整頓が苦手な子や、テキパキと動けない子もいます。そういう場合、親が「子どものうちに直そう」と思いすぎると、毎日叱ってばかりという状態になってしまいます。そうなると、子どもの自己肯定感が損なわれて、自己否定感を持ってしまう可能性が高まります。また、親子関係が悪くなる可能性も高まります。

    そうならないためには、どうしたらいいでしょうか? 先ほど言ったような工夫をしても難しい場合は、親が手伝って親子で一緒にやるようにしましょう。場合によっては、親がやってあげるということでも大丈夫です。

    「親が手伝ったりやってあげたりしていると、子どもはいつまでも自分でできるようにならない」と考える人もいると思いますが、最新の児童心理学ではそういう説は否定されています。親が手伝ってくれると、子どもは親の愛情を感じてうれしくなりますし、ますますパパ・ママのことが大好きになります。やり方も覚えますし、大好きなパパ・ママにできるところを見せたいという気持ちも育ちます。こういう気持ちが子どもを成長させるのです。

    逆に、親が手助けもせずに叱ってばかりいると、子どもは親の愛情を疑うようになります。また、子どもの自己肯定感が下がって、「どうせ自分にはできない」と思い込むようになってしまいます。それで、ますます苦手意識を持ってしまい、よけいできなくなるという悪循環に陥ります。

    自分でやりたいことを見つけた子どもは「後伸び」する

    私が考える本当の「自立」とは、子どもが自らやりたいことを見つけて、自分からどんどん行動する力を身につけることです。「自己実現力」や、「主体的な生き方」と言い換えてもいいでしょう。人に言われたことはできるが、自分で何がやりたいか分からない子どもが増えていると感じます。長年の教師経験から、自分でやりたいことを見つけてそれを大切にしている子どもは、「後伸び」すると感じています。

    ではどうすれば、こうした力を身に付けられるのでしょう。キーワードは、「非認知能力」です。非認知能力とは、目標に向かって頑張る力、他の人とうまく関わる力、感情をコントロールする力などです。児童心理学の研究によると、これらは自由な遊びを通じて育まれると考えられています。例えば泥団子を作る時、どうすればかっこいい泥団子を作れるか、子どもは頭をフル回転させて考えます。うまくいかなければ、友だちや先生にきいてみる。そしてまた考える。こうした経験が非認知能力を育て、それは大人になってからの幸せや経済的な安定につながるというのが、近年、世界の子育てのトレンドとなっています。

    いろいろ話しましたが、どんな時代でも、子育ての基本は変わらないと信じています。より良い親子関係を築くこと。それに尽きます。そのために、親御さんも、自分のストレス管理を心がけてください。仕事が忙しくてイライラしてしまうなら、思い切って仕事の量を減らす。専業主婦で子どもと密着しすぎてしまうなら、外部の力を借りて自分の時間を持つようにする。そういった工夫の積み重ねで、自分のストレスを減らすことで、子どもに否定的な言葉をかける回数も減ると思います。

    そして、お子さんのことをたくさんほめてあげてください。ほめられると、子どもの自己肯定感が高まり、親に大切にされているという実感を持つことができます。それで、お母さん・お父さんがますます大好きになる。心が満たされるのです。

    まとめ ~「自立」のためにできること~

    「自立」のためにできること
    ・「自立」とは、子どもが自らやりたいことを見つけて、自分からどんどん行動する力を身につけること。
    ・親は、工夫の積み重ねで自身のストレスを減らし、気持ちにゆとりを持つことを心がけ、子どもを否定的に 叱ることは避けよう。
    ・より良い親子関係を築き、たくさんほめて、子どもの自己肯定感を高めよう。

    関連リンク 親野智可等HP

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