KUMONトピックス
Feature Report - 進化し続ける活動
カテゴリーを表示

KUMONグループの活動  2018/09/18更新

Vol.273

KUMON60周年スペシャルコンテンツ(3)
井上達彦先生  

経営学の専門家・井上達彦先生が語る
模倣できない公文式「究極の学びの場」

KUMONは2018年、創立60周年を迎えました。KUMONを知る識者の方々に、それぞれのご専門の観点からKUMONについてうかがっていくスペシャルコンテンツ。第3弾となる今回は、早稲田大学商学学術院教授・井上達彦先生です。KUMONが持つ優位性について、経営学の観点から紐解いていただきました。

KUMONを研究する中で「あり得ない!」場面に何度も遭遇した

井上達彦先生

Q.井上先生がKUMONにご注目されたきっかけについて教えていただけますか。

私は自身の研究として、「模倣」と「イノベーション」の関係性を解き明かそうと、企業の事例研究を続けてきました。KUMONに関心を持ったのは、ライバル他社から真似できないような、独自の仕組みを築いておられるからです。

そもそも、教育サービス業はグローバル化が難しいと言われています。その原因のひとつに、サービス業自体に標準化がなかなか進まない難しさがあるという点が挙げられます。もうひとつは、教育は文化や社会制度に根付いているために海外展開が難しいという点です。しかし、KUMONは50の国と地域で学ばれています。それがなぜなのか、不思議で仕方がありませんでした。もともとKUMONがユニークだということは聞いていたので、一体その秘密は何かということで、事例研究の一社として興味を持ちました。

KUMONが模倣できない秘密は、「ソリューション」と「コミュニティ」に隠されている

Q.なぜ、KUMONは模倣できそうで模倣できない仕組みになっているのでしょうか?

KUMONの方々にはいろいろな現場に案内いただきましたが、教室見学や指導者の学びの場など、私にとっては「あり得ない!」と感じるような場面にいくつも遭遇しました。特に、フランチャイズの教室の指導者同士が熱心に話し合って、自分たちのメソッドを切磋琢磨しているという点には驚きました。ライバル他社がなかなか模倣できないKUMONの独自の仕組みを簡単に説明すると、「標準化された教材を軸に、自学自習とちょうどの学習を実現するために指導者と事務局がネットワークを作っている」と言えると思います。

かつて、外部の方がKUMONを模倣しようと、教材をコピーしたり、同じような教材を作るなど、試みた例があったとうかがいました。ところがどこもうまくできない。単純に考えると、教材自体は真似して同じようなものを作れるのかもしれません。しかし、KUMONの強みは教材だけではないのです。経営学では「ソリューション」と言うのですが、教材を誰に、どのタイミングで、どういう風に渡すかというこの「教材の渡し方」にノウハウが隠されているのです。指導者は、学習者がKUMONで学び始めたばかりの頃にはやや簡単な教材を渡して勢いをもたせたり、徐々にちょっと背伸びをするような難易度の教材を渡したりと、一人ひとりの「ちょうど」がどこにあるかを見極めているといいます。また、その子の教材を解く様子や家庭の状況、その日の気分やモチベーションなど……指導者はそれらも勘案して、その日の教材を渡しているともうかがいました。しかし、「これがどうしてどの教室でも実現できるのだろう?」というのは不思議で仕方ありませんでした。

研究を進めていくと、それを実現しているのは、小集団ゼミ活動や自主研究会という学びの場にあることがわかりました。指導者が同じ教材で、同じ目的を持って、子どもたちのために、お互いのノウハウや悩み、そのための解決策や意見を言い合って切磋琢磨している。そういうコミュニティがあるから、「ちょうどの学習」を各教室で実現できることがわかりました。このようなことは、なかなか他にはできないというか、世界中を探してもないと思います。

井上達彦先生

Q.KUMONが持つ可能性について先生のお考えをきかせていただけますか?
KUMONには、教室でなければ与えられない価値があると思っています。教室だからこそ、その場でその脈絡で子どもをほめることができる。それに対して子どもが喜ぶというこの瞬間ですね。公文式の教材、教室、指導者という3つがそろうからこそ、それが可能になるのだと思います。これから教育のICT化で、人々の学びはどんどん進化していくでしょう。KUMONには標準化されたスモールステップの教材がある。そして、それを決して教える形ではなく自分で気づかせる形で、「ちょうど」のタイミングで渡す。これを磨いていく中で、ICTではできない部分をKUMONは開拓していかれるのではないかと感じています。

Q.KUMONに関わる全ての方々に向けて、先生からメッセージをいただけますか?
日本の教育を良くしていただきたいですね。児童期という多感な時期に、のびのびと、そして自信を持って自学自習していくという習慣をつける。本当に基礎の部分が、その後の一生を大きく左右するという実感を持っています。そういう意味で、世界の学びをよりよくするということにぜひ今後も取り組んでいただきたいと思います。

関連リンク
早稲田大学商学学術院教授 井上達彦先生|KUMON now! スペシャルインタビュー
KUMON60周年スペシャルコンテンツ(1)片平秀貴さん|KUMON now! トピックス
KUMON60周年スペシャルコンテンツ(2)田島信元先生|KUMON now! トピックス KUMON60周年スペシャルコンテンツ(4)伊藤健先生|KUMON now!トピックス KUMON60周年スペシャルコンテンツ(5)千葉杲弘先生|KUMON now!トピックス KUMON60周年スペシャルコンテンツ(6)多賀幹子さん|KUMON now!トピックス

関連記事

KUMONグループの活動  2018/11/13更新

Vol.281 KUMON60周年スペシャルコンテンツ(5)
千葉杲弘先生

ユネスコで要職を歴任した千葉杲弘先生が語る 世界の未来と呼応するKUMONの活動

KUMONグループの活動  2018/12/11更新

Vol.285 KUMON60周年スペシャルコンテンツ(6) 多賀幹子さん

ジャーナリスト多賀幹子さんが語る 指導者の情熱こそKUMONの神髄

KUMONグループの活動  2018/10/09更新

Vol.276 KUMON60周年スペシャルコンテンツ(4) 伊藤健先生

社会的投資の専門家、伊藤健先生が語る KUMONは「イノベーション」を作り出す企業

KUMONグループの活動  2018/07/31更新

Vol.267 KUMON60周年スペシャルコンテンツ(1)
片平秀貴さん

ブランド研究の専門家、片平秀貴氏に聞く! 世界に通用するブランドの共通点とは?

KUMONグループの活動  2018/08/21更新

Vol.270 KUMON60周年スペシャルコンテンツ(2) 田島信元先生

発達心理学者・田島信元先生が語る 公文式学習は「自己効力感」の積み重ね

バックナンバー

KUMONグループの活動  2023/05/23更新

Vol.483 自治体が取り組む脳の健康教室

支え合うコミュニティづくりに 「脳の健康教室」を活かす ~「活脳のマチ 天理」を目指して~

KUMONグループの活動  2023/05/19更新

Vol.482 理科の目で社会科見学

未来を創る子どもたちへ カーボンニュートラルな社会の在り方を考える質の高い学習機会を

KUMONグループの活動  2023/04/25更新

Vol.481 学校でのKUMON-東京女子学院中学校

公文式学習で チャレンジする姿勢や粘り強さを 身につけてほしい  

KUMONグループの活動  2023/04/14更新

Vol.480 くもん出版のウェブサイトがリニューアル!

すべての人に 「できた!」の喜びを

KUMONグループの活動  2023/04/11更新

Vol.479 KUMONレポート-アブダビ学校導入編(動画紹介)

子どもたちの成長と未来のために アブダビでの学校導入の実践

KUMONトピックス カテゴリー別インデックス
記事アクセスランキング
おすすめ記事 Recommended Articles
OB・OGインタビュー
Catch the Dream 夢をかなえる力
NEW
Vol.094 後編
メンタルトレーナー
加藤史子さん
夢に大小はなく、いくつあってもいい 自分の「心の取り扱い方」を知って 夢を叶えていこう
Vol.094 前編
メンタルトレーナー
加藤史子さん
夢に大小はなく、いくつあってもいい 自分の「心の取り扱い方」を知って 夢を叶えていこう
Vol.093
弁護士・ニューヨーク州弁護士
松本慶さん
少しずつでも前進すれば大丈夫 「一日一歩」の精神で歩いていこう
Vol.092
丸紅インドネシア代表
笠井 信司さん
経験に無駄は何ひとつとしてなく 将来に必ず生きる “Discipline”を身につけよう
スペシャルインタビュー
Academic Milestones 学びを究める力
NEW
Vol.074 後編
名古屋大学 国際開発研究科 教授
山田 肖子さん
教育の意義を体現する公文式 AI時代の今こそ 人間と教育の役割の再定義を
Vol.074 前編
名古屋大学 国際開発研究科 教授
山田 肖子さん
教育の意義を体現する公文式 AI時代の今こそ 人間と教育の役割の再定義を
Vol.073
特別対談 棋士 藤井 聡太さん
終わりのない将棋の極みへ 可能性のある限り 一歩ずつ上を目指していきたい
Vol.072
名古屋大学博物館 機能形態学者
藤原 慎一先生
さまざまな知識が ひも付いたときが研究の醍醐味 そのために学びをどんどん拡げよう
KUMON now! フェイスブックページ
KUMON now!に「いいね」して、子育てに役立つ情報を受け取ろう!