世界で通用するブランドには「芯」がある
Q.片平先生が取り組まれているブランド研究とはどのような研究ですか?
僕が考えているブランドというのは、「ビジネスとして、社会的な規模で笑顔の循環を作る」ということです。よく“ビジネスは利益が大事”という話がありますが、私は、利益というのは笑顔の循環を回す燃料だと思っています。燃料がきっちり確保できないと事業は回りませんから、そういう意味では利益も売り上げもシェアも大切。ただ、それが最終目的になってしまうと、今度は逆に気持ちの方が回らなくなることがありますよね。私が取り組んでいるブランド研究というのは、そのようなことです。
Q.先生が企業を見るときに注目するのはどのようなところですか?
やっぱり、人間ですね。一人の人間は膨大な情報量と熱量を持っています。それが組織を通して皆、同じ方向を向いているか、そんなところを見ますね。
Q.世界で通用しているブランドに共通する点はありますか?
「芯がある」ということでしょうか。自分たちが本当に大事にしていることが何かを皆が明確に意識しています。それは言葉だけでは表せないもので、頭でも心でもなくお腹の奥底で感じられるもの。そこから沸いてくる夢を着実にカタチにして関係者に笑顔を届けています。歴史のある企業はこの笑顔の循環が長く回っているということですから、その分芯が深いということなのかなと思っています。
KUMONの芯は何か?というと、公文公さん(公文式の創始者)の大事にしていた世界観なのではないでしょうか。そこに忠実に向き合いながら、実は公文公さんの時代では気がつかなかったような、その先に行くエネルギーを皆さんが作り出しているのではないか。そんな気がしますね。それがKUMONというブランドの強みだと思います。
KUMON60周年に寄せて
Q.KUMONは今年創立60周年を迎えます。ブランドにとっての60年とはどのような意味がありますか?
60年というのはまだまだひよこですよ、ブランドとしてはね。ただ、この60年の間にKUMONにもいろいろなことが起きたわけですよね。それを乗り越えるエネルギーが何かというと、先ほど申し上げた「芯」。本音で皆がそれを信じているので、それが大変な状況を乗り越えるエネルギーになっている。
もう一つ、60年というのが大事なのは、人生30年と言われるようなところから、世代が入れ替わるタイミングだということです。創始者と一緒に働いたことがある人が、真意を受け継いでいるのは当たり前ですよね、一緒に働いているわけですから。そうではない、その次の世代が、創業世代の真意を受け継いでいるかどうかのテストが60年だと思います。 やはり、孫までいって初めて一回りという感じがありますね。
Q.KUMONが世界に広く受け入れられている、その理由はどうお考えでしょうか?
人間が人間を磨く、自分を磨くっていう力。これは普遍です。KUMONは組織としてそれに特化して、それを社会に対して主張して、そういう場を提供した。この芯の深さっていうのは、実はインドネシアに行っても通じるし、アフリカに行っても通じるし、ニューヨークでもロンドンでも通じる。
KUMONグループが展開している一つひとつの事業自体は、一見全く違うように見えます。よく世間でいう多角化、違う事業に参入するというふうに解釈されることが多いようですけれど、多分、僕はKUMONにとっては自然なことなのだと思いますね。人間が自分を磨く力を作る、そういう力を磨く場を提供する。こういう風に考えると、高齢者向けの学習療法も、書写も同じなのだと思います。書写事業は、それを通して字が上手くなることが最終ゴールなのではなくて、よりよい自分になるという、そういう場を提供しているのではないかな。
先ほど申し上げた通り、利潤は笑顔の循環を回す燃料ですからとても大事なのですが、やはり本質的に大事なのは笑顔の循環そのものです。ありがとうって言ってもらえることとか、敬愛できる人たちと思ってもらえるとか。そういうものが戻ってくるっていうのは、これはもう本当にプライスレス、お金で買えない価値だと思います。お金も大事だけど、そういうのが戻ってくるから回る。だから、もっともっと私たちは何かできるんじゃないかと思うし、そのエネルギーが湧いてきますよね。相手にとってよりよいものをどうやって提供していくか、そのための努力をし続けること。それがKUMONの場合、現場で自然と行われていると感じます。KUMONの先生方の話を聞くと、やっぱり公文公さんが根っこにいるなっていうのがひしひしと伝わってきます。
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