新聞社2社、ジャーナリストもフォーラムの取材に
今年、第3回を迎えた就労フォーラムは、すでに公文式を導入されている施設・企業に先進的な実践事例をお伝えし、同時に現場レベルでの詳細な情報交換と交流も目的としています。一方で、これから導入したいと考えている施設の参加もあり、23施設・企業の方々で会場は満杯状態。新聞社2社、ジャーナリストの方も取材のため来訪されていました。
当日は、前半が活動発表を中心とした全体での先進的な実践事例の共有会、後半は情報交換を主目的とした分科会というプログラムで進行されました。前半では、「就職するなら明朗アカデミー」(千葉県成田市)、「株式会社ドコモCS」(東京都豊島区)、「NPO法人オープンスクール ひかりの樹」(神奈川県横浜市)の3団体にご発表いただきました。順を追って、その発表内容のポイントをまとめてみました。
障がいのあるお客様と指導する職員とがともに成長する
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第1発表 就労移行支援施設 就職するなら明朗アカデミー(千葉県成田市)
発表者 小澤啓洋学長、教務担当指導員:髙田宏子さん
「人生に仕事がある喜びを提供し、仕事のある充実した人生を創造する就職支援を行う」「働くことによって社会に貢献する機会を提供する」「友や師と出会う場を提供する」という3つを実現するための方法のひとつとして公文式を導入されています。
障がいのあるお客様のAさんが公文式算数・数学により集中力を高め、「やればできる」という自信を身に付けた事例を紹介。お客様だけでなく職員の方たちの成長も促されたという報告でした。
「Aさんは公文式学習の目標を“集中力を高める”と決め、数学と国語に取り組むことにしました。Aさんと指導する職員が密に相談しながら、集中できる学習枚数と小刻みな復習をすることを一緒に決めました。加えて、職員がAさんの学習状況に応じての称賛や励ましというコミュニケーションを心がけたことで、Aさんは見事に集中力を高めることができました。そのAさんの変化を職員がともに喜ぶことで、私たち職員の観察力やコミュニケーション力も高まったと実感しています」(髙田さん)
意欲や態度が向上し、ご家族も公文式学習の効果を実感
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第2発表 株式会社ドコモCS 総務部ハーティ推進室(東京都豊島区)
発表者 岡本孝伸課長、海宝健城主査
障がいのある社員の「定着支援」を重視されています。これは「一日でも長く、会社(社会)の一員として能力を最大限に発揮しつつ活躍するための、学習を通じた支援」のことです。障がいのある社員の方々は入居ビル内の清掃を主な仕事とされています。公文式学習も清掃と同じく勤務時間中の仕事の一つとして全員が取り組んでいます。
日常会話でコミュニケーション能力が上がった社員の方がいたことも、公文式を導入するきっかけになったというお話があり、国語を学習することで、より体系立ててコミュニケーション力を高めていけるのではないかとの判断で導入しているのです。特徴的なのは「声出し学習」というプログラムが実践されていること。滑舌を良くするために、九九と古典の音読を最初に行うのです。それを終えてから個々の教材学習に入ります。
これらの学習を通じて、会社で働くBさんは人とのコミュニケーションをとろうという姿勢やルールを守ることを身につけられました。そして、人とのコミュニケーション自体も変化してきました。公文式学習が、意欲や態度の向上につながることを確認させていただいた発表であったと思います。また、障がいのある社員の方のご家族も、公文式学習の効果を感じていただいているというお話をうかがい、生活面への学習効果も期待できるのではないかと感じました。
仕事に就いたあとにこそ学ぶ力は必要
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第3発表 NPO法人オープンスクール ひかりの樹(神奈川県横浜市)
発表者 市川知行理事長
公文式学習により青年期にある自閉症の人たちが基礎学力を養い、コミュニケーション能力・集中力・作業力を伸ばしたという事例が紹介されました。
仕事をしながらスクールに通うCさんは、高校生のころに公文式をはじめています。割り算からスタートした算数は分数の四則混合算まで進み、国語は主語・述語の学習からはじめ、今では文章を読みとる内容まで進んでいます。特に指導の際に意識したのが「誤学習」を防ぐことだったそうです。
「社会で働きはじめた障がい者は、学習の機会がなくなり、学ぶ力も低下しがちです。コミュニケーション能力・集中力・作業力も低下してしまいます。公文式学習により、学ぶ力を高め、それらの力を伸ばしていくことが大事だと考えます。また、自己流に理解してしまい、間違った学び方をすることを防ぐことも重視しています。一枚一枚の教材のできぐあいを確かめながら、見通しを持って指導していくことが大切です」と市川理事長はお話になりました。
「日々の学習を積み重ねていくことで、未来が大きく拓けるという希望を感じました」
就労フォーラム後半の分科会では6つの小グループに分かれ、活発な情報交換・意見交換が行われました。互いの事例紹介をはじめ、現場レベルでの課題や悩みも出て、それらへの対処法や解決策を探るという実践的な話し合いとなりました。こういった話し合いが、各施設・企業での学習の質をさらに高め、就労実績や就労後の定着率向上へも貢献すると期待できます。
最後に、当日参加された施設の職員の方々の感想をご紹介します。
「私どもの就労移行支援施設を利用されていた方が、本日の発表事例で取り上げられました。こうして発表を聞いてみると、以前と今のAさんとでは、ずいぶん大きな変化をしていることに驚きました。たとえば、まっすぐに線を引けるようになっていたこと。見写し書きでは、以前は1文字ずつでしたが、今は、文単位で書きとれるようになっていました。また、メモをとれるようにもなっていました。人間関係については、相手との距離間をとれずトラブルになっていたこともありましたが、現在はビジネスマナーを身につけているように感じました」(社会福祉法人職員)
「就職するために学力や学ぶ力が必要だと前々から思っていましたが、就労してからも学び続ける姿勢は不可欠なのだと改めて実感することができました」(社会福祉法人職員)
社会的自立をめざす方々に学ぶ喜び、成長する喜びを。 就労支援施設等 導入目的は施設によって異なりますが、学力の向上と、態度面や生活面の変化は共通です。 詳細をみる |