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Vol.062 2020.05.08

筑波大学国際発達ケア:エンパワメント科学研究室教授・保健学博士
安梅勅江先生

<前編>

「エンパワメント」の力が
「みんなが夢を持てる世界」を実現する

研究室教授・保健学博士

安梅 勅江 (あんめ ときえ)

北海道生まれ。東京大学医学部保健学科卒業、東京大学医学系研究科大学院博士課程修了後、厚生省国立身体障害者リハビリテーション研究所へ入省。米国社会サービス研究所客員研究員、東京大学医学部講師、イリノイ大学客員研究員、浜松医科大学教授、筑波大学大学院人間総合科学研究科教授、ヨンショピング大学客員教授などを歴任し、現在に至る。著書に『子どもの未来をひらく エンパワメント科学』(日本評論社)など。

「誰もが夢を持てる世界を実現したい」と願い、国内外で精力的に活動されている安梅勅江先生。そのためには、一人ひとりが持っている力を最大限に引き出す「エンパワメント」が欠かせないと、「エンパワメント科学」を研究されています。「エンパワメント科学」とはどのようなもので、安梅先生はなぜこの研究の道に進まれたのでしょうか。さまざまな留学生と接する中で感じること、今の子どもを取り巻く環境などについてもうかがいました。

目次

「エンパワメント」=「湧活」は
その人の本来の力を湧き出させること

筑波大学国際発達ケア:エンパワメント科学研究室教授・保健学博士 安梅勅江先生

「エンパワメント」とは、「人びとに夢や希望を与え、勇気づけて、その人が本来持っているすばらしい力を湧き出させること」です。人が生まれてから亡くなるまで生涯にわたり、大切なキーワードといえます。これを漢字でも表したくて、中国、韓国、日本の研究者、実践者たちと考え、「湧活」と表現することにしました。

エンパワメントという言葉は、最近ずいぶん普及してきましたが、これを科学的に証明するのは結構大変なことなのです。私たちは、コホート研究という手法で証明しています。調査対象の方と長くお付き合いをして、その方々がどう変わってきているのかを、きちんと数字で明らかにしてエビデンス(根拠)とする手法です。

たとえば、「子どもをほめるといい」とは、誰もがわかっていることですが、どんなふうにいいのか。私たちは、「親御さんが子どもをしっかりほめて、“自分はできる”という自己効力感を高めると、その後の子どもの育ちにポジティブな影響がある」ということを、コホート研究により世界で初めて科学的に証明しました。

私たちが実施した地域のコホート研究では、赤ちゃんから100歳の高齢者まで5,000人を約30年追跡しています。多少からだが不自由になっても、地域に役割があるなど社会的なかかわりがあれば、長く生き生きと生活しつづけられることを証明しました。

こうした研究の生み出すエビデンスが、確かな情報に基づいて生活を豊かにし、政策を実りのあるものにします。世の中の仕組みをつくり変える近道となるのです。

公文式はエンパワメントする学習法

公文式は、子どもの自己効力感を育み、
エンパワメントする学習法

筑波大学国際発達ケア:エンパワメント科学研究室教授・保健学博士 安梅勅江先生

エンパワメントには、自分で自分を元気にする「自分エンパワメント」、仲間同士で支え合う「仲間エンパワメント」、そしてクラス全体や地域のお祭りなどのように皆で元気になる「組織・地域エンパワメント」の3つがあります。これらをうまく組み合わせることで、大きな力を発揮します。

公文式学習がされていることは、まさにそれに近くて、子ども自身の自己効力感を育み(「自分エンパワメント」)、指導者の自己効力感も育んでいます(「仲間エンパワメント」)。そこに加えて、地域の自己効力感を育むようなプロジェクトができるのではないかと期待しています。

KUMONでは高齢者のトレーニングもされていますよね。成人の場合は、ただトレーニングするよりも、社会貢献につながったり、きずなができたりするほうが、より楽しく効果的です。高齢者も子どもも含んだ地域エンパワメントのプログラムをつくると、とてもおもしろいと思います。地域の大人と交流することで、子どもたちには自己効力感だけでなく、問題解決能力やアクション能力など、これからの時代にますます求められる能力が育ちます。

実際、私たちが開発途上国で行うエンパワメントのプログラムは、子どもたちをきっかけにしたものが多いのです。子どもが出てくると、その親たちも出てくるし、地域の人たちを呼び出しやすい。地域のエンパワメントができるのです。

ただ私たちは、地域に行って現地リーダーを育てますが、ずっとそこにいるわけにはいきません。KUMONの場合は、その場に指導者がい続けるので、継続的に地域のエンパワメントができる仕掛けを持っています。その仕掛けを、いろいろな地域、とくに開発途上国で生かせたら、これまで以上に魅力的でかけがえのない存在、ハイクオリティの“KUMONブランド”になるのではないでしょうか。

絶対に味方になり自分の“安全基地”となってくれた両親

ポジティブシンキングで育てられた幼少期

筑波大学国際発達ケア:エンパワメント科学研究室教授・保健学博士 安梅勅江先生

私は子どもの頃、じっとすることが苦手で落ち着きのない子でした。興味があることはすべてキラキラして見え、うれしくて走り回ってしまうのです。ありがたかったのは、両親も先生方もそれをあるがまま認め、決してしからず、意味づけてくれたことです。

母は私に「生まれたときから運がいいのだから」と言い続けていました。最初は意味がわかりませんでしたが、私が失敗したときやつらいことがあったときにもそう言い、常にポジティブシンキングでした。そう言われ続けると、「まあ、そうか。これも運が良かったからかな」と思うようになりますよね。父からは「世界中を敵に回しても、勅江ちゃんの味方だからね」と言われ続けました。子ども時代に、そういう“安全基地”があったのは、ほんとうにありがたいことです。

幼稚園時代の先生は、「勅江ちゃんはおもしろいことを見つけてくるのが上手だからね」とほめてくれ、走り回っていてもダメとは決して言いませんでした。それでまた、おもしろいものを見つけて先生に見せる。そのときは止まっていられる。それを繰り返しているうちに、「じゃあ、これを絵にかいてごらん」と言われると、絵に描くようになり落ち着いてきます。

こんな自分の経験から、「ダメ」ではなく「キラキラした輝き」をどう生かすかも私のテーマとなっています。「その子なりのキラキラした輝きを伸ばす教育」を、もっともっと広げたいですね。安全基地、ポジティブシンキング、その子の良さを認めて伸ばす。これも、KUMONがされていることとも重なると思います。

私は小1のとき、伝記を読んで「キュリー夫人のようになりたい」と、研究者にあこがれ、物理や化学が勉強できそうな大学を選びました。結局、放射線よりも人間のほうがおもしろくなってきて、健康科学の研究に進むことになりました。

関連リンク 筑波大学国際発達ケア:エンパワメント科学研究室


筑波大学国際発達ケア:エンパワメント科学研究室教授・保健学博士 安梅勅江先生  

後編のインタビューから

-「エンパワメント」の道へ進むきっかけは「赤ちゃんのパワー」
-うまくいかない時は、「ものごとにはリズムがある」と考える
-保護者の皆さまへ3つのメッセージ

 

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