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Vol.025 2015.10.30

グランド ハイアット 東京 コンシェルジュ
阿部佳さん

<後編>

どんなときでも「楽しむ力」
持てばはきっと叶えられる

グランドハイアット東京コンシェルジュ

阿部 佳 (あべ けい)

東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、一般企業勤務を経て、1992年にヨコハマ グランド インターコンチネンタルホテルにコンシェルジュとして入社。1997年に世界の一流コンシェルジュたちの組織「レ・クレドール」国際正会員。2003年にグランド ハイアット 東京に入社して以来、チーフコンシェルジュとして活躍。著書に『わたしはコンシェルジュ』(講談社)、『お客様の“気持ち”を読みとく仕事コンシェルジュ』(秀和システム)。

お客さまの気持ちに寄り添って「本当の望み」を提供する「コンシェルジュ」。この職業がまだ一般的ではなかった20年以上前からホテルコンシェルジュとして活躍されている阿部佳さんは、世界の一流コンシェルジュたちの組織「レ・クレドール」で、日本人として現役唯一の名誉会員に認定されています。限られた時間の中で、見事にお客さまの真意をくみとることから、多くのファンをもつ阿部さん。その手腕の背後には、日々の生活の中で常に学ぼうとする意欲、何事も楽しもうという姿勢がありました。

目次

日々吸収できることはたくさんある
経験を積んでも学ぶチャンスを逃さない

コンシェルジュ 阿部佳さん

コンシェルジュに必要なのは社会経験です。単に人と接する経験だけでなく、広くさまざまな経験が活きる仕事です。なりたての頃は、そもそも知識や情報が足りませんから、やるべきことはたくさんあります。本を読む、出かける、自分で試す、人の話をよく聞く……そういうことを、とにかく繰り返す。日々の中でどれだけ経験値を増やしていくかということです。

たとえば、毎日の通勤の中でどれほど見逃している「経験」があるでしょうか。電車の中吊り広告だけでも、ものすごい情報量です。道中で起きていること、人の会話……そういうものに、いかに敏感になれるかで吸収できることは大きく変わってきます。若いときは身軽でしたから、ちょっと気になったことはすぐに見に行くこともできます。「わからないこと、知らないことがたくさんある」と自覚していたので、むしろ勉強しやすかったですね。

ところが慣れてくると、次第に「知らないこと」は減り、自分の知っている中でモノを考えてしまいがちになります。わたしはそれをせずに、「何か違うぞ」と思ったときに、その感覚を見過ごさず、誠実に向き合うことを心がけています。わかっていないことを「わかっていない」とちゃんと受け止め、学ぶチャンスを逃さない。これは、ある程度経験を積んでからの自己研鑽で大切なことではないでしょうか。

阿部さんが思う、お客さまからの一番難しい質問とは?

一人ひとり違うお客さまをパターン化せず
「いま目の前のこの人が何を求めているか」を感じとる

コンシェルジュ 阿部佳さん

私が勤務しているグランド ハイアット 東京は、7割が外国からのお客さまで、「そこには気球で行けるかな?」とか「娘の誕生日だから象を買ってほしいんだけど」とか、想像をはるかに超える、びっくりするようなリクエストをされるお客さまもいらっしゃいます。でも、わたしにとって一番難しい質問は、「おいしいレストランを紹介して」ということなんです。「おいしい」って何でしょう?それは同じ人でも日によって違います。「この人が喜ぶレストラン」を感じとり、選び出すことこそ、コンシェルジュの本当の仕事だと思います。 

それには、たくさんのレストランを知っていることが大事なのではなく、そのうちのいくつを「本当に」知っていて、なおかつ、どれをその人に紹介したらいいのかを見定められるかどうか。答えは相手が持っていますから、相手が何を求めているかを感じとらなくてはなりません。

昨日の食事や今回の訪日目的など、データはある程度ありますが、それだけに頼らず、その日の表情や全体の雰囲気、あとは会話の中でその答えを手繰り寄せていきます。わたしは情報量や手配力がコンシェルジュに最も求められることではないと思います。つまりは、この人が本当に喜ぶのはどんなときか、どれだけその人に興味をもつか、ということでしょう。それができれば、その後の「手配」はそう難しくありません。 

コンシェルジュの場合、まずは自分自身がある程度満たされていることが必要です。自分が「快」の状態でいられて、はじめて外に目が向くからです。その上で、「自分はプロである」というプロ意識をどこまで持ち続けられるか。プロであれば、昨日より上手にできるようになりたいと思うでしょう。そのためには、これも知りたい、あれも見ておきたいとなります。見落としていたら、そんな自分がすごく悔しい。その意識がつくれるかどうかが大切だと思います。

日本を「やさしい国」にしていきたい

人に関わろうとする「やさしい人」を増やして、
日本を「やさしい国」にしていきたい

コンシェルジュ 阿部佳さん

いろいろな転機がありましたが、わたしはどんなときも、あらゆることを楽しもうと努力してきたつもりです。それが今の自分につながったように思います。子どもの頃から両親には「逆境のときに、どういう態度をとるかが人の価値だ」と言われていたことも影響しているかもしれません。 

現在、コンシェルジュとしてホテルのカウンターに立つほかに、後進の育成などもしていますが、今後の夢としては「やさしい人」を増やして、日本をもっと「やさしい国」にしていきたいですね。それにはふたつの意味があります。

ひとつはホスピタリティ業界で働く人たちの質を高めることです。質というのは技術ではなく、本気で「ホスピタリティ」を考えること。「人に何かをして差し上げたときに相手が喜ぶことが、自分にとって単純にうれしい」――それが原点だと思います。観光立国を目指す日本ですが、そのためには大勢の外国の方が来ればいいのではなく、その人たちがまた日本に来たいと思ってくれること。それには本当のホスピタリティ精神をもって受け入れる態勢が整っていることが肝心です。

もうひとつは、子どもを含めた一般の方々が、もう少し「人に興味をもつ」「よその人に関わろうとする」ようになることです。家族同士でも、子どもがお母さんの荷物を持ってあげるとか、ほんの少しのやさしさがもっと必要ではないでしょうか?たとえばドアを先に開けてあげるとか、そういう小さなことからでいいのです。「人に何かをしてあげたら楽しいよ」――それを多くの人たちに伝え、やさしい人を増やしていきたい。そうすれば、日本はもっと「やさしい国」へと成長していけるのではないかと思っています。


コンシェルジュ 阿部佳さん 

前編のインタビューから

-自分で判断し、行動する大切さを教えてくれた両親
-初めて出会ったコンシェルジュは“不思議な人”だった
-阿部さんが天職・コンシェルジュになるまでの道のり

 
 

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