新卒でのホテルへの就職は断念
異業種でキャリアを重ねた十数年
やがて就職活動の時期になり、コンシェルジュの存在を思い出しました。当時の日本にはその仕事がないのはわかっていましたが、ホテルで仕事をしている大学の先輩をたずねることにしました。そもそも私のコンシェルジュのイメージは、ヨーロッパで出会った年配の“おじいさんコンシェルジュ”の方々。この職業は若くしてなれるものではないと思っていました。ホテルでキャリアを積んで、そのうちできれば……と考えていたのです。
いくつかのホテルで内定をいただいたものの、ある先輩から「コンシェルジュを目指すならずっとホテル業界にいるよりも、他のことをして社会経験を積んだ方がよいのでは?」と諭されました。「わたしのような変わり種を採用しても、結局ホテルでは使いようがないのかな……」と、体よく断られたのだと思いました。
そこで、無理にホテル業界に入っても結局合わないだろうと気持ちを切り替え、当時としては珍しく仕事における男女差がなかったパルコへ就職することにしました。経営陣と接する機会が多い部署に配属され、多くのことを学びました。「いかに人を集めるか、何にひかれて人は動くのか」という視点も求められたので、大学時代の学びも活き、仕事はハードでもとにかく楽しかった。
その後、10年ほど教育関係の仕事に携わりました。そんなあるとき、通勤電車でヨコハマ グランド インターコンチネンタルホテルのオープン広告を偶然目にして、「ここはイギリス資本のホテルだからコンシェルジュがあるかも?」と、ふと思ったのです。そこで、「まだ何か求人はありますか?」と電話したところ、「空いているのはコンシェルジュくらいです」との返事。「わたしはそれがやりたいのです!」と話は続いたのですが、ホテルとしては当然オープン時にいてくれないと困るわけです。でも、結局わたしはそれまでにそのとき勤めていた仕事を辞めることができず、一旦は断念しました。
ただ、一度心が揺れたことで、仕事を変えてもいいのかなと思うようになり、仕事を後輩に引き継ぐ準備を始めました。するとしばらくして、幸運なことに、ヨコハマ グランド インターコンチネンタルホテルの方から、「コンシェルジュに欠員が出たので、来ませんか?」と電話がかかってきました。それで、とうとうコンシェルジュになることになったのです。
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